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一緒に

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 かくして、私たちの初仕事は終わりを告げた。
 まさかの聖女候補生が穢れに落ちたことは前代未聞であり、かなりの騒ぎになったらしい。私は聖女としての仕事に励んだので、そのあたりはまったく知らないんだけど。

 ともあれ、シルニアは完全に浄化された。

 その憎しみを解くかのように。
 後日判明したけれど、シルニアはジョセフを殺害して家から逃げていた。何があったのか、当事者がもういないから分からないけれど、およそジョセフがシルニアを見捨てようとして言い争いになったんだろう。

 救いようのない顛末だ。

 もう少し、お互いに思いやる心があれば、違った結果になっただろうに。
 私は戒めとして胸に刻み込むことにした。
 私は、リンクさんと生きていくからだ。


 ――そして、三年後。


 長く厳しかった聖女の最後の公務を終え、私はあてがわれた自室に戻っていた。
 王都に滞在する時の専用室だ。
 荷物をまとめて、一週間以内に退去しないといけない。
 といっても、お手伝いさんがほぼやってくれているので、明日にでも私は出ていける。問題は住居をどこに構えるか、だ。

 もちろん実家に帰るのが一番楽なんだけど。

 考えていると、こんこんとノックされた。
 入ってきたのは、リンクだ。

「今大丈夫かな、ミル」
「はい。大丈夫だよ」

 この三年間、リンクも激闘を潜り抜けてたくましくなった。
 もっと頼りがいがある人になったのだ。
 そして見事三年間の護衛をやり遂げた功績でもって、正式な侯爵の跡取りとなる。もうすぐ引き継ぎを受けるそうだ。

「よかった。今日しかタイミングがないと思ってたから」
「どうしたの?」
「うん」

 私が聞くと、リンクは気恥ずかしそうに頬を撫でながら、私の前にひざまずいた。

「その。ミル。改めて誓わせてほしい」
「リンク?」
「僕は必ず君を幸せにする。幸せにし続ける。だから、一生を添い遂げてくれないかな」
「…………っ!」

 それは紛れもない愛の告白だった。
 いつの間にか、リンクの手にはバラがあって、私に差し出されている。
 彼らしくないキザなやり方だけど、そうだけど――。
 うれしい。
 私は胸がいっぱいになって、頷いた。

「はい。これからも、よろしくね」
「うん。よろしく」

 バラを受け取ると、私はリンクにぎゅう、と抱きしめられた。
 うん。
 幸せだ。
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みんなの感想(10件)

penpen
2021.11.03 penpen

(*´ω`*ノノ󾭠パチパチ󾭠

しろいるか
2021.11.03 しろいるか

感想ありがとうございます。
幸せになりました……!

解除
2021.11.02 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

しろいるか
2021.11.02 しろいるか

感想ありがとうございます。
ハッピーエンドしか書かないので今後もご安心ください。

解除
とまとさん
2021.10.31 とまとさん

ミルさん、リンクさん
  ✿*゚・.。.:
( ⊙ω⊙)( ´'ω'` ) \
 | <∞> @@*@@~
 |U..V |⊃⊂  \
@| : |/∞  ∞\
..U..U 〜〜〜〜〜〜
しあわせ に な~れ ♡

♡*゚゚・*+。
  |   °*。
。∩ ∧ ∧  *
+ (・ω・๑) *+゚
* 。 ヽ  つ*゚*
  " ・+。*・゚ ⊃ +゚
  ☆ ∪  。*゚
   " ・ + 。 * ・゚

しろいるか
2021.10.31 しろいるか

ステキなAAありがとうございます。
幸せになっていく二人です。

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