ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

172.楽し気な女-7

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「冒険者って自分の仕事に生き甲斐とか、プライドのようなようなものを持っている人だと思っていたので」
「そういう人もいるとは思うけど、俺には縁がないかな」
「どういう理由で冒険者になったんですか?」
「ただの消去法だよ。他に食える選択肢がなかっただけで、特別な思い入れがあるわけじゃない。他にもっと楽な選択肢があれば、そっちにしたよ」
 こういう話をすると、落胆したり失望したりする人がたまにいるが、彼女は特にそういう感じはない。というか、会って間もないがあまり感情的になる姿がイメージ出来ない。
「なるほど。こだわりがないのは話やすくていいですね」
 なんだか含みのある言い方だ。
「ただ、毎日貴方の仕事を楽しみにしている身としては、それなりにこだわりを持っていただきたいとは思っていますが」
「他に何かあるならともかく、今のほぼ唯一の収入源だし、そうそうやめないよ。今のペースで何もなければ、だけどさ」
「そう聞いて安心しました。こちらとしても、それなりに労力をさいて話を通して来ているので」
「話?」
「夜甲虫の蜜の販売ルートについての話です。あなたがダグラスさんに相談していた話ですね」
 ミルノからようやく本題めいた話が出たことで、彼女が俺に接触してきた目的は見えたが、
「ダグラス……?」
「バーバリアンの店長さんですよ」
「ああ……」
「ご存じなかったんですか?」
 俺は頷く。あんまりそういうタイミングがなかったというのもあるが、そもそも名前を聞く習慣が希薄だ。
「うん」
 今後呼ぶことがあるかは不明だが、知っている方がやっぱり便利だろうという気はする。まあ、それはともかく、
「その話が出てくるってことは、店長が相談したその辺の事情に詳しい人って、やっぱ君だったのか」
 蜜をもっと広く売りたいと思っていることは店長にしか話していないし、案件としてもマニアックな部類だと思うので広まりようもない。ダグラス店長の約束をすっぽかしたという話もあったし、そうに違いないだろう。
「ええ、まあ」
 ミルノもすぐに肯定する。
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