ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

200.自分以外が楽し気な街

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 どうなるかと思ったが、ほぼほぼいつも通りに朝日が差し始める時間に、迷宮から戻ってくることが出来た。
 昨日もしたように荷物を分配し、メリルと一緒に蜜をつづがなく運び終えてから、住んでいる教会の近くまで一緒に戻ってくる。
「それでは、また」
「うん。お疲れ」
 と、別れの挨拶をしてから、メリルは少し間を置いて。
「……明日は、何もないといいですね」
「そう願いたいね」
 元の狩り場に戻ったことで、また別の発見があったが、それはあくまでも不幸中の幸い。そもそも不幸がない方がいいに決まっているのだ。
 迷宮内でのありとあらゆるトラブルは、何の得にもならない。
 ひたすら損をした気分になるだけだ。
 こういう苦労があるからこそ得られるものがある、というような考え方をあんまり信じていないが、少しぐらい信じた方が精神衛生はいいのかもしれない。
 そんなことを考えつつ、俺は市場で適当に食事を済ませて馬小屋に戻り、一旦眠りについた。



 ――そうして夕方。いつもより少し早めに起きた俺は、バーバリアンの方へと向かった。 
 用があるのは、ミルノのいるギルド。
 これも休みの日にしようかと思っていたが、ちょっと聞いておきたい事が出来たからので早めに行く。とりあえず一度ぐらい行っておきたいというのもある。
 細かい場所はわからないが、バーバリアンに行けば教えてくれる人がいるだろう。
 もっとも、あの辺りで話せるアテはそこぐらいしかない。
 下層の街にはない噴水のある通りを抜けて、ひとまずバーバリアンのある通りに出てきたが……。
「流石にめげそうな気分にはなってくるな」
 いつも蜜を卸しにくる朝方ではなく、今は人で賑わう夕暮れ時。
 行き交う人々は俺の迷宮用装備一式よりも、遥かに高そうな服を来て歩いているし、俺はその中で明らかに浮いている。
 周囲の目線に対しては、割と鈍感な方なんだろうなと思っていたが、流石にここまで自分が異物だと認識させられると堪えるものがある。
 無事にバーバリアンまで行けるのか不安になってきた。
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