運命──捨てられて養子にした子供は俺の運命の番だった

RINFAM

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「じゃあ、行ってくる」
「ああ。気を付けてな」
 オメガとしての性に分化し、俺の番となったラルカティアは、1ヶ月ほど休んだあと復学した。
 学校へは俺から事情を話していたし、休学中の授業はオンラインで受けていたから、学力的には復学するのになんら問題はないはずだ。
 ただ、前にも話した通り、世間一般的にオメガ性の立場は低くて弱い。その立場は社会的弱者と言い切っても良いほどだ。ゆえに校内での性差別が、オメガとなったラルカに向けられるのではないか。それだけが唯一、不安要素として残されていた。
「良いか…ラルカ、何かあったらすぐ、俺に連絡しろ。嫌なことは我慢するな」
「うん……」
 ラルカの通うスクールにはアルファやベータの他に、数はそれほど多くないがオメガも通っている。これは、初就学当時、ラルカの性がまだ未分化であったがため、もしもの場合を考えて俺がそういうスクールを選んでいたからだ。
 それと、もうひとつ。俺は小さなラルカに、性差別をするような人間に育って欲しくなかった。だからあえて、すべての性種と触れ合う機会のあるスクールへ通わせようと思ったのだ。

 まさかラルカ自身が、オメガになるとは思っても居なかったが。

 もちろん中退するという手段も残されていたが、ラルカはそれを良しとはしなかった。意外に頑固なのだ。ラルカティアという子供は。だからこそ俺は彼が心配でならなかった。学校内でどのような差別に晒されても、無理して我慢し続けるのではないか、と。
 だから復学を許す条件として、学校であったことはなんでも包み隠さず話す、ということを約束させたのだが、ラルカは俺のそんな心配を過保護だと笑ってくれた。
「俺は大丈夫だよ…」
「そうか……?なら、良いんだが…」
 久しぶりに見たラルカの笑顔。けれどそれはやはり、以前のような純粋な輝きの失われた、まだ無理をしているような気配を感じさせるものだった。

 ああ、やはりこの子はまだ心の傷が癒えていない。
 俺に気遣わせぬよう、笑って見せてくれている。
 その心に深く刻まれた傷を思うと、俺は胸がキリキリと痛んだ。

 ラルカを学校へ送って行った後、俺は久しぶりに職場へ顔を出したが、どうやら俺が番を娶ったことが知れ渡っていたようで、行く先々で話題にされたり冷やかされたりてしまった。
「んだよ、お前…番なんぞ興味ねえって顔してたくせに」
「はあ……お前までなんだ。うるせえぞ、リュース」
 同じ職場で働くリュース・テリードは、俺の幼年期からの学友で幼馴染だ。
 金髪碧眼、真面目な顔をしていればイケメン男でアルファ性。普段はおちゃらけているが、根は真面目で友情に厚い良い奴だ。
 そんな彼は数年前、オメガの女を番として娶り、すでに男女2児の父親となっていた。
「だから言ったろ。早く番娶って子供作れって」
「お前んとこは良いよな…家庭円満で…」
「おう。嫁さん可愛いし子供も可愛いし俺めっちゃ幸せよ!?」
 リュースは俺と同じでアルファ性の人間には珍しく、オメガ性の人間をまったく差別していない。だからオメガ性の嫁を、周りが見ても呆れるほど、物凄く大切にしていた。彼のような人間がもっと増えてくれれば、この世界は誰にとっても住みやすくなるだろうに、と、常々思う。

 そう、小さなラルカにとっても。

「つか、クルト…なんかあったかよ?…ひでえ面だぜ」
 顔に出していたつもりはなかったが、長年の付き合いの彼には解ってしまうらしい。リュースは俺に気遣う様子を見せると、『そろそろ昼だし飯行こうぜ』と軽い調子で言い、まだ書類を抱えていた俺を職場から半ば強引に連れ出した。

「そうか……ラルカティアがお前の…」
「そんなつもりはなかった。俺は、ラルカを…」

 興味本位で聞いてくる他の人間には話せないことも、親友であるリュースには話すことが出来る。
 俺は、昼食に誘って来たリュースと共に、サンドイッチの美味い職場近くの店へ入ると、そこでこの1ヵ月余りの出来事とラルカのことをすべて話した。

 ラルカが分化してオメガになったこと。
 突然の変化に怯えるラルカを、半ば強引に番としてしまったこと。
 俺の犯した愚かな過ちの、その何もかもすべてを。

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