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その後

国母が乱心してきている事案について3 ※ユラ視点

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 見られた…。
 ついに見られてしまった。
 普段は自室に隠してある、その本を遂に見られたしまった!

「リコちゃん、その本まだ読んでないよね?」

 いや、まだ手に取ったところかもしれない。
 一縷の望みをけて尋ねる。

「はわわわわ」

 うん、可愛いわリコちゃん。
 ほっぺ真っ赤ね。
 これ、確実に中見られたわよね…。

 『リリィプリンセス』

 ユラが定期購入している雑誌である。
 月一発売だ。
 愛らしい女の子2人が手を取り合っている表紙である。
 一見したらただの少女漫画に見える。
 だが中を見ると友情を超えた少女たちのブロマンスが描かれている。

「ユラさんコレ、何処で売ってますか?」

 リコちゃんの目がキラキラだわ…。
 完全に堕落した者の目をしているわ。
 そうよく見る目。
 毎朝鏡に映る自分と同じ目をしてる……。
 ちなみにミヤハルちゃんも同じ目をしてるわよ!

「どの作品が良かった…?」

「この『ふるべゆらゆら』さんの漫画が好きです!キュンキュンします!!」

 ごめんなさい魔王。
 思わず心の中で魔王君に謝ってしまったわ。
 何でリビングで読みながら寝落ちしちゃったのかしら私。
 こういう本を読むときは普段なら自室に籠るのに。
 久しぶりにミヤハルちゃんと飲み会をしたのが悪かったわね…。
 だってお酒好きだしぃ…。
 まさかスコッチ程度で酔いどれると思わなかったのよねぇ。
 年取ってすっかりお酒に弱くなったわ。

 それにしても、まさか私の作品が最後の一押しになるなんて、ね。

「どのキャラが好きだった?」

「このスレンダーの長い黒髪のお姉さんです!」

 ミヤハルちゃんから聞いてたけど本当に魔王君の女体化に惚れ込んでるのね…。
 そのキャラのモデル魔王君だから。

「その本の事魔王君に内緒にしてね…」

「何でですか?」

「う~ん私が魔王君に怒られるから?」

「ユラさんが起こられちゃうんですか?じゃぁ黙っておきます!」

 うん、何も疑わない。
 バ可愛いわ…。
 男ってこう言う純粋無垢な女の子が好きなのよね。
 私みたいな喪女じゃなく…。
 あ、自分で言ってて泣けてきた。

「ユラさん、泣いてます?」

「目にゴミが入ったの」

「大変です!見してください!」

 優しいわねリコちゃん。
 綺麗な顔が近づいて私の目をジッと見つめる。

 ガラッ

 リビングの扉が空く。

「あ、ごめん、邪魔したわ。ゆっくり楽しんでってなぁ」

「ミヤハルちゃん!違うの!勘違いしないでぇぇぇっ!!」

「ミヤハルさん何勘違いしたのですか?」

「勘違いなのかコレからを暗示してるのか…」

「???」

「うん、良いの。リコちゃんはそのまま無垢なままでいて、もう手遅れなところあるけど…」

 とりあえず本だけは取り上げよう。
 そう心に決めて私はさめざめと流れる涙をリコちゃんに拭いてもらうのだった。
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