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そして全能神は愉快犯となった

【101話】

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「お~いチビ達、クッキー食べるか?」

「あ、ルーシュ様お久し振りです」

「お久し振りねん、マロンちゃん」

 王宮の子供部屋でマロンが双子をあやして居たらルーシュがやって来た。
 そう言えば今日はアンドュアイスとルーシュがやって来ると聞いていた。
 珍しくアンドュアイスが休みを取れたらしい。

 ブラコンのアンドュアイスは当然ルークに会いたい。
 マザコンも拗らせてるアンドュアイスは保護者(なんか違う)のサイヒにも会いたい。
 だが婚約者であるルーシュを蔑ろにするなどあってはならない。

 そうしてアンドゥアイスが出した結果は、ルーシュと天界に遊びに行くだった。

 ちなみにルークとサイヒは仕事が終わらないと自分の時間を作れないので、アンドュアイスはそのサポートに行っている。
 これで何時もの3倍の速さで仕事が終わるだろう。
 アンドゥアイスも仕事が出来る男なのだ。
 アニマルセラピーも出来るし死角のない男だ。

 なので仕事の手伝いが出来ないルーシュは先に双子の元へと向かった訳だ。

「久しぶりですルーシュ様」

 ドラジュが満面の笑みでルーシュを迎えた。
 手には白いグリフォンの縫いぐるみを抱いている。
 オグリがモデルの縫いぐるみだ。
 前回訪問した時にアンドゥアイスがプレゼントしたモノだ。
 可愛さが万倍だ。
 まだまだ生後3ヵ月。
 少々精神年齢が普通の子供より高い気がするが、やっぱり子供は子供である。
 無邪気な笑顔プライスレス。

「お久し振りですルーシュ殿」

 奥の本棚の方から出て来たのはカマラ。
 手にはルーシュの知らない文字で書かれた太い本。
 ちなみに神話時代の医学書である。
 サイヒが知り合いになった女性に【復元】で作って貰ったらしい。
 相変わらず知らない間に知りあいをこさえる誑しである。

 それにしてもルーシュが読めない古代語の辞書…。

 確実に精神年齢でルーシュはカマラに負けていると膝から崩れ落ちたくなった。
 何か弟に比べて精神年齢が高過ぎではないだろうか兄の方。
 サイヒに似たのが悪い気がする。

「マロンちゃん、チビ達にクッキーあげて良い?」

「何処の物でしょう?」

「フレイムアーチャ―名物”シスターハナクッキー”」

「神殿の物でしたら添加物も入っていないし安心ですね。お茶にしましょうか、カマラ様、ドラジュ様」

「やったぁ、クッキーだ」

 ふにゃり、とドラジュが笑う。
 とても可愛い。
 マロンもルーシュも膝から崩れ落ちそうになった。

「”シスターハナクッキー”と言うと母様のせいで名産物になったと言うあの?」

「うん、今フレイムアーチャの1番の名物なんだわ。そして忘れたい過去さらっと思い出させないでねカマラちゃん」

「母様とルーシュ殿の熱い友情の話だと聞いていますが?」

「子供に誇張した話しない様にサイヒに言っておいてねマロンちゃん!」

「まぁ誇張だ何て!お兄様とルーシュ様の友情で国を救った素晴らしいお話では無いですか!!特に傷ついて膝をついて戦意を失ったお兄様をルーシュ様が鼓舞する場面は胸熱ですわ!!」

「ボクはルーシュ様とお母様の合体技出すところが好きぃ」

「私はルーシュ殿が神官たちに何が正義なのかを問う場面が好きだな」

「ちょっと待って!何か記憶にあるのと話が嚙み合わない!?」

 揶揄っている訳では無く皆本気で言っている。
 いったい何が何処でどうなったらそんな話になるのか?
 
 まずサイヒが膝をつく場面が想像できない。
 しかも戦意を失うって絶対あり得ない。
 ルーシュが鼓舞しなくてもサイヒは何時も元気である。

 そして合体技を出した覚えがない。
 と言うよりルーシュは合体技なんぞ編み出した覚えもない。

 神官たちに正義を問う?
 ルーシュはそんな正義の味方の様な事をした記憶が皆無だ。
 何時から自分はヒーローになったのだと頭が痛くなった。

「マロンさん、私は今日はオレンジティーで」

「ボクはミルクー」

 兄弟で飲み物にも差があり過ぎる。
 もう紅茶を嗜むのか兄・カマラ…。

「カフェインは禁止されているのでハーブティーの類しか飲みませんよ?」

「うん、人の心読むの止めよーねカマラちゃん」

「いえ、読心術は使ってないのでご安心ください。そんなモノ使ったら母様に折檻と言う名の”神術鍛錬1時間フルコース”をくらいますから」

「幼児になにさせてんのアイツ!?」

「まぁそう興奮せずにクッキーでも食べましょう」

「その切り替えの早さ、本当サイヒのミニチュア版だわカマラちゃん」

 テーブルの上には既に冷えた飲み物とクッキーが皿に置かれている。
 ミルクにオレンジティーに、何故かチャイ。

「何でチャイ?」

「お兄様が最近のルーシュ様はコレに嵌ってると聞きまして」

「何で私の最新の情報が回ってるかな、なにこれ怖い!」

「チャイじゃない方が良かったでしょうか?」

「うぅん、大好き!喜んで貰うよー!ただサイヒがちょっぴり怖いだけ。アイツの情報網どうなってるの?」

「お兄様は全能神ですから」

 ニッコリと笑ったマロンい言われる。

 駄目だ。
 ”全能神”がパワーワード過ぎる。
 そしてマロンは生粋の”サイヒ厨”だ。

 ルーシュは思考を放棄する事を選んだ。

「クッキーおいしいねぇ」

 ニコニコ笑うドラジュだけがルーシュの心の潤いだ。
 
 この後、サイヒ達が仕事を終わらす迄、ルーシュはドラジュを膝にのせてクッキーを食べさせるだけと言う、幸せなお仕事をするのだった。
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