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オマケは御使い様になりました

【男装の女王と女医と温泉】

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 入浴は食事前に入る事となった。
 さらっ、とスティルグマ女王が深海と入る宣言をしたため、レオドーアの視線が痛い。
 視線だけで人を殺せるなら深海は5回は死んでいるだろう。
 他の男性使用人・兵士・騎士たちの視線も痛い。
 針の筵と言う奴だ。

 反対に女はキャッキャと楽しそうにしている。
 
 美少年と妙齢の美女の混浴。
 何とも想像を掻き立てられるものであるらしい。

 カグウからもお許しを得て、深海はスティルグマ女王とノーライフと3人で、女王専用の浴場へと行く事となった。

 :::

「は~豪華ですね…」

 女王の浴場はローマ風だ。
 壁に掘られたライオンの口から源泉が流れ出る。
 何となく深海はマー〇イオンを思い出した。

 トプン、と手を湯の中に入れる。
 じんわりと温もる心地良い温度だ。
 おそらく42℃前後。

「この湯は温度調整はしているのですか?」

「いや、温度調節はしていないぞ」

「と言う事は高温泉ですね」

「「高温泉?」」

「温泉は湧出口(源泉)での泉温によって次の4つに分類されます。
 冷鉱泉 25℃未満
 低温泉 25~34℃未満
 温 泉 34~42℃未満
 高温泉 42℃以上
入浴でもっとも気持ちの良いと言われる風呂の水温は42℃と言われているため、温泉地の大浴場はほとんど42℃前後に設定されています。
そこで、「冷鉱泉」「低温泉」「温泉」は加熱しなければならない場合がほとんどです。
「高温泉」がもっとも温泉らしく感じられるはずです。
また、源泉の温度が高いほど、効能成分が濃い(成分が多い)傾向にあります。
お湯が熱いとお茶が濃くりやすかったり、砂糖がとけやすかったりするのと似た原理です。
では、「高温泉」だけが優れているのかというと、熱すぎると肌への刺激が強すぎたり、適温に冷ますのに時間をかけなければならなかったり、加水する必要もあります」

「ほう、そのような定義があったのか。知らずに入っていたな」

「それは勿体ないです。温泉は療養にも良いですし、プレゼンさえ上手くいけば旅行地としてますますスティルグマは発展しますよ!」

「それは興味深いね。温もりながら色々聞いても良いかな?」

「長い蘊蓄になるので良ければ」

「是非頼もう」

 湯を体にかけて汚れを落として、広い浴槽に入る。
 3人入ってもまだまだ余裕のある大きな浴槽である。

「温泉は各種の塩類が溶けている液体で、「浸透圧」というものを持っています。
人間の身体を作っている細胞液と等しい浸透圧を持つ液体を等張液と言いますが、これは8.8gの食塩を1リットルの水に溶かした食塩水に相当します。
この等張液を基準にして温泉を比べると次の3つに分類されます。
 低張泉 等張液より浸透圧の低いもの(8g/kg未満)
 等張泉 等張液と同じ浸透圧を持つもの(8~10g/kg未満)
 高張泉 等張液より高い浸透圧を持つもの(10g/kg以上)
浸透圧は、2つの濃度が違った溶液を「仕切り」で分けた場合、濃度を一定にしようと、濃度の薄い溶液から濃い溶液に水分が移ろうとする力です。
薄い溶液の水分が、濃い溶液の方に流れるのです。
一方、「仕切り」が水分だけでなく、溶解物質も通す場合は、濃い溶液の溶解物が、薄い溶液の方に移ろうとします。
肌は、温泉の効能成分を浸透させることができるので、理論上は、「高張泉」の方が、成分を体に吸収しやすいことになります。
「低張泉」は、サラサラしたやさしい湯という傾向があり、理論上は、温泉の水分が体に吸収されやすいということになります。
低張泉の温泉で長湯すると皮膚がふやけやすいですが、梅干しのように水分が無くなってシワシワになるのではなく、その反対に皮膚の 表面からいくらか水が浸透して、皮膚のごく表面の部分だけ伸びる一方、その下の部分は、変化がないのでしわができてしまうのです。
つまり体に水分を与えているのです。
「高張泉」は、理論上、温泉成分が肌に浸透しやすい特長を持っています」

「中々奥が深いな温泉…」

「もう止めましょうか?」

「僕は興味津々だから続きを是非」

「それでは、温泉は水素イオン濃度によるph値で下記のように分類されます。
一般的に、酸性泉は皮膚病に効き、アルカリ性泉は美肌効果があります。
 強酸性泉    pH2未満
 酸性泉     pH2~3未満
 弱酸性泉    pH3~6未満
 中性泉     pH6~7.5未満
 弱アルカリ性泉 pH7.5~8.5未満
 アルカリ性泉  pH8.5以上
酸性度が高いと殺菌効果があり、皮膚病に効きやすいです。
中性泉は、肌に優しいです。
アルカリ度が高いと、肌の角質をとる日は美肌効果があります。
お2人の肌の質を見るとかなり綺麗なので、この温泉は美肌に聞くアルカリ性泉でしょうね」

「成程、それで済む場所によって人の肌質が違う訳だ。美肌の者の地域にはアルカリ性泉、皮膚病が無い地域には酸性泉が湧いていると言う事だな」

「オフコース、理解が早くて助かります」

「その特性を売り込めば確かに旅行客が増えそうだね」

「泉源における水温が摂氏25度以上。(摂氏25度未満のものは、冷泉または鉱泉と呼ぶ事がある)
水温にかかわらず、以下の成分のうち、いずれか1つ以上のものを含む物。(含有量は1kg中)
溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1000mg以上
遊離炭酸(CO2) 250mg以上
リチウムイオン(Li+) 1mg以上
ストロンチウムイオン(Sr2+) 10mg以上
バリウムイオン(Ba2+) 5mg以上
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+) 10mg以上
第一マンガンイオン(Mn2+) 10mg以上
水素イオン(H+) 1mg以上
臭素イオン(Br-) 5mg以上
沃素イオン(I-) 1mg以上
フッ素イオン(F-) 2mg以上
ヒ酸水素イオン(HAsO42-) 1.3mg以上
メタ亜ひ酸(HAsO2) 1mg以上
総硫黄(S)[HS-,S2O32-,H2Sに対応するもの] 1mg以上
メタホウ酸(HBO2) 5mg以上
メタけい酸(H2SiO3) 50mg以上
重炭酸ソーダ(NaHCO3) 340mg以上
ラドン(Rn) 20×10-10Ci以上
ラジウム塩(Raとして) 1億分の1mg以上
つまり、源泉温度が25℃以上あるか、それより冷たくとも19の特定成分が1つでも規定値に達していれば、「温泉」と名のれるのです」

「ふわ~奥が深いね温泉」

「後で文に起こして貰っても良いだろうか?是非この知識をうまく使って旅人を呼び込みたい」

「ではカグウ様に了解を取って貰っても良いですか?止めないと思いますが俺カグウ様の小姓なので…あんまり勝手に動けないんですよ」

「了解した。ふふ、お前を呼んで正解だった」

「じゃ、体も温まったしそろそろ出ようか?あんまり長湯すると逆上せてご飯が食べれなくなっちゃう」

「それは困ります!ご飯、楽しみにしておりますから!!」

「存分に堪能しろ。馳走を用意させている」

「楽しみにしてますね」

 夕食の内容を想像して深海はワクワクとする。
 発展した異世界の異国の料理に興味があるのだ。

「先に上がっておれ、私たちは後ですぐに上がる」

「了解しました」

 スティルグマ女王の言葉通り深海は先に上がる。
 深海が先に上がりスティルグマ女王とノーライフは視線を互いの胸に向けた。

「フカミの方が大きかったな…」

「成長期だからまだ大きくなるかもね…」

 はぁ、と良い年をしてちっぱいな美女2人は溜息をつくのだった。
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