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【14話】

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「ところでマーチに願いがあるのだが」

 食後の紅茶と甘味を楽しんでいる最中、フェブ様が仰りました。
 甘味は卵を食べれない私の為にチョコレートを用意して下さいました。
 とても有難いです。
 とても目端が利く方ですねフェブ様。

「はい、何でしょうか」

 私は口の中のチョコレートを溶かし切って飲み込んでから返事をしました。
 食べながら喋るのはお行儀が悪いですからね。

「私の付き人になって貰えないかな?」

「付き人、ですか?」

 意外なお願いでした。
 まぁ私は特に当てのある旅をしている訳で無いので問題は無いのですが。
 何故私なのでしょう?

「何で、と言った顔だね。実は私は敵が多くてね、王宮に戻ったところで又呪いをかけられると思うんだ。でもマーチが居てくれたら呪いは怖くない。むしろ誰なのかあぶり出しも出来るだろう。付き人と言っても護衛の様なものだね。私の身の回りの世話はしてくれなくても良いから、駄目かな?」

 そんな捨てられた子犬みたいな目しないで下さい。 
 断るに断れないじゃないですか…。
 まぁ断る要素は無いんですが。
 と言うか今”王宮”と言いましたね。
 王宮に住まう位の高い方。
 もう完全に自分が王族であることを隠す気無いですねフェブ様…。

「私で宜しければ」

「有難うマーチ!君は礼儀作法もきちんとしているから王宮に居ても問題が起こることも無いだろうし、本当に適材適所なんだ。助かるよ。これから、宜しくねマーチ」

 ニコリとフェブ様が微笑みます。
 笑顔が眩しいです。
 美形の笑顔…凄いです……。
 そして物理的にも眩しいです。
 主に溢れ出す金色のオーラで。

 こんな素敵な方に仕えれるなんて逆に幸運なんではないでしょうか?
 それにこのタイミングで呪いのかかったフェブ様に出会う。
 導かれた気もします。

「ところでフェブ様は何処の国出身なのですか?」

「ソルエンデュ帝国だよ」

 大陸1の大帝国じゃないですか!?
 どうやら思った以上に厄介な目に合うかもしれません。
 何せ大陸を統治していると言っても問題ないくらいの大帝国です。
 私が居た”ルナセイラ王国”なんて足元にも及びません。
 
 これは相当気を引き締めていかなければ駄目ですね。

「力の限り、フェブ様を御守りする事を誓います」

「有難うマーチ」

 眩しい。
 これから先この笑顔が毎日付いてくるんですね。
 慣れる日は来るのでしょうか?

 そうして私は大帝国の皇子と共に、陰謀渦巻く王宮入りが決まったのでした。
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