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【25話】

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 建国祭まであと5日。
 王都は活気づいて来ている。
 勿論後宮も活気づいている。
 何せ年に何度も無い婚活の場でもあるもので。
 当日どの衣装を着ようかと張り切る女性たちを見るのも良いものだ。
 恋に酔いしれる女性は美しいとサイヒは思っているので中々に気分は良い。

「楽しそうだなサイヒ」

 ルークがジトリとした目でサイヒを見る。
 サイヒが後宮の女官たちがはしゃいでいる様子を楽し気に見ているのがお気にさわったらしい。

「恋する女性は魅力的ではないか?」

「私は特にそう思わない」

 頬を膨らますルークにサイヒがクスクスと笑う。

「むくれるな。1番可愛いのはお前だよルーク」

「サイヒ、其方は可愛いと言っていれば私の機嫌が良くなると思っていないか?」

「ふむ、本音なのだがルークが嫌なら止めるぞ?」

「い、嫌ではない……」

「そうか、それは良かった。私も自分の気持ちに嘘はつきたくないからな。可愛いと思ったら可愛いと言うのが私の主義だ。そして私はルークを可愛いと思っているので、可愛いと言えないのは辛いからな」

「も、もうそれ以上はいい……」

 ルークの顔が耳まで真っ赤になる。
 ついつい緩みそうになる顔を我慢するだけでルークはいっぱいいっぱいだ。
 そんな付き合いたてのな恋人同士のような光景を、微笑ましくホストであるマロン、従者のクオン、そして使用人たちが見ている。

「今日もルーク様は初々しいですわね。一向にお兄様の言動に慣れずに振り回されている様が可愛いですわ。そう思いませんかコーン様?」

「私はマロン妃の方が可愛いと思いますが……」ボソリ

「何か言いましたかコーン様?」

「い、いえ。今日もマロン妃の淹れて下さるお茶は美味しいですね」

「ふふふ、そう言って頂けるのが一番のご褒美です」

 ニコニコ微笑むマロンをクオンは優し気な目で見つめる。

(愛らしく優しく家庭的で料理も上手く、天使ですか?マロン妃は後宮に舞い降りた天使ですか!?確かにサイヒは見目麗しいが男でしょうに、何故に殿下は男に走ることになったのか…私なら絶対にマロン妃を選ぶ。
まぁ人の恋路に口を出すのは余計な世話だろうが、殿下は後継者をどうするつもりなのか?サイヒとの間には子は作れないぞ、男同士なのだから……)

 クオンの胸中も中々に荒ぶっている。
 すでにクオンの中ではマロンがルークの妻であると言うことは胸の片隅に追いやられている。
 仕方も無いだろう。
 とうのルークが同性相手に夢中で顔を赤くしているのだから。
 言動も乙女である。
 正直、後宮はサイヒとの逢引きの場でしかない。
 どやってコレを誰かの夫と思えようか?

 今日もとんでも上司のせいで心穏やかに居られない不幸なクオンであった。
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