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短編
ステップ②※アルト視点
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ジェシカにたくさんキスをして、僕が所有者であることを刻み付ける。
「いっぱい私を見て。一杯アルトのモノにして。全部アルトにあげるから」
「ああ、ジェシカ……」
そして、彼女に夢中にさせられて。
結局、この日は一時間もレッスンをしていないことに気づく。
あれ? もしかしてジェシカ……。
行為を終えた彼女が、涼し気な表情で着替えている。
わざわざ着替えとタオル、それに避妊具まで持ち込んでいたジェシカに疑問を抱く。
「ねえ、もしかしてダンスをサボる為に僕とセックスしてた? なんか、やたら夢中にさせてきたよね。いつも以上に煽って引き延ばしてたし……」
「えへへ。バレた?」
イタズラっぽく笑うジェシカ。
僕は遊ばれていたのだと理解して、自分でも情けなくなるくらい、落ち込んだ。
「そうか。遊ばれてたのか。必死だったのは僕だけだったんだな」
「え!? ごめ……泣いてる!? ホントにごめん!」
「いいよ。君で気持ちよくなれたし、僕は満足……」
「嘘だよね!? あの、私的にはアルトとエッチしたかったのが一番の理由で、レッスンサボるってのは二の次で……!」
「頭のいい君は優しく慰めてくれるよね。僕のテクニックじゃ満足できなかった? 本当のことを言うとさ。こういうの不慣れで。本当は君以外、抱きたくなんてなかったから、経験も浅いんだ。だから、最初の夜もやり方が分からなくてね。恰好つけてたけど、君が隣にいることに胸がいっぱいで、手が出せなかった」
「違うって……。ねえ聞いてよ。何回もイッてたのは本当だし、途中、私が笑ってたのはアルトを馬鹿にしてたからじゃなくて、アルトが触れるだけでドロドロに溶かされちゃう自分がおかしかったからなの。本当に誤解しないで。どういえば伝わる? アルトのこと好きだよ?」
心が傷ついて……。
今は少し、距離を置かせて欲しい。
「やだ! こんな空気のまま行かないで……やだぁ」
ジェシカが泣き始めてしまった……。
動揺しつつ、彼女を抱いて頭を撫でる。
「……ごめん、どこにも行かないから」
「どうして皆、私を嘘つきみたいに見るんだよ! そりゃ性格はクソだけど、いつだって本気で愛してるのに! 疑わないでよ! 私の好きをもう疑わないでよぉ」
僕の涙が、ジェシカの心の傷を引っかいてしまったらしい。
子猫みたいに丸くなったジェシカの背中を撫でて、泣きじゃくる彼女の頬にキスを落とす。
ずっと、お互いに色々、触れずにここまで来てしまった。
僕は関係を持って彼女を屋敷に縛りつけることに夢中で、ジェシカは嫌われないよう、僕に踏み込んでこなかった。
色々、ステップを省いてしまってたな。
あらためて、まっすぐにジェシカの目を見る。
動揺と、嫌われる恐怖が読み取れる。
こんな風に彼女を傷つけてしまう自分を情けなく思う。
それでも、手放すことなんて出来そうにない……。
「僕は、君が思う以上に君に夢中だし、本当は女性経験とかあまりない。そういう空気を出してただけでさ。初めから、君だけなんだよ」
まさか今日まで作ってた仮面を脱ぎ捨てる羽目になるなんて思わなかった。
「私はね、本当に性格がクソだけど、人に愛されたいとは思ってるの。でも、頑張っても愛してもらえなかったら、絶望して生きていくしかなくなるじゃん。だから、頑張るのが怖かったの。アルトはね、私に初めて安心をくれた人。しつこいくらい私を愛して、繋ぎとめてくれたのが、アルトなの。嬉しかったし、何より安心させてくれたから、ずっと傍に居させて欲しいの」
ギュって、強く抱く。
痛いくらい、抱きしめて。
ジェシカに僕を刻む。
「アルト。きついよ」
「大切にする。愛してる」
「だからね。痛いって言ってるだろ」
ジェシカは純粋な頭突きを僕の顎に刻んでくれた。
「いっ……」
「もう、このくらいで抱きしめてくれれば十分だから」
そう言ってギューってしてくるジェシカが可愛いすぎる。
「頭突きされても笑ってるとか、変態だよ」
「手加減してもらったからね」
「もう。アルトは馬鹿だよ」
「そう怒らないで。これから、失敗しながらステップアップしていこう? ダンスも、これから歩く二人の道のりも」
「私が一緒に失敗したいって思えるのは、アルトだけなんだから。そこのところ、よろしくね」
ジェシカが望む強さで彼女を抱きしめる。
「さっきの強いのも、思い伝わったから。ありがと」
ジェシカからキスをくれる。
照れくさそうに笑うジェシカが可愛くて。
たぶん、今月の夜会には間に合いそうもないなと思った。
彼女と二人でいて、ダンスだけに専念するなんて難しいよ。
目下の悩みは、ジェシカが可愛すぎること。
実は義理の娘に甘そうな父の顔を思い出して、僕は嘆息した。
「いっぱい私を見て。一杯アルトのモノにして。全部アルトにあげるから」
「ああ、ジェシカ……」
そして、彼女に夢中にさせられて。
結局、この日は一時間もレッスンをしていないことに気づく。
あれ? もしかしてジェシカ……。
行為を終えた彼女が、涼し気な表情で着替えている。
わざわざ着替えとタオル、それに避妊具まで持ち込んでいたジェシカに疑問を抱く。
「ねえ、もしかしてダンスをサボる為に僕とセックスしてた? なんか、やたら夢中にさせてきたよね。いつも以上に煽って引き延ばしてたし……」
「えへへ。バレた?」
イタズラっぽく笑うジェシカ。
僕は遊ばれていたのだと理解して、自分でも情けなくなるくらい、落ち込んだ。
「そうか。遊ばれてたのか。必死だったのは僕だけだったんだな」
「え!? ごめ……泣いてる!? ホントにごめん!」
「いいよ。君で気持ちよくなれたし、僕は満足……」
「嘘だよね!? あの、私的にはアルトとエッチしたかったのが一番の理由で、レッスンサボるってのは二の次で……!」
「頭のいい君は優しく慰めてくれるよね。僕のテクニックじゃ満足できなかった? 本当のことを言うとさ。こういうの不慣れで。本当は君以外、抱きたくなんてなかったから、経験も浅いんだ。だから、最初の夜もやり方が分からなくてね。恰好つけてたけど、君が隣にいることに胸がいっぱいで、手が出せなかった」
「違うって……。ねえ聞いてよ。何回もイッてたのは本当だし、途中、私が笑ってたのはアルトを馬鹿にしてたからじゃなくて、アルトが触れるだけでドロドロに溶かされちゃう自分がおかしかったからなの。本当に誤解しないで。どういえば伝わる? アルトのこと好きだよ?」
心が傷ついて……。
今は少し、距離を置かせて欲しい。
「やだ! こんな空気のまま行かないで……やだぁ」
ジェシカが泣き始めてしまった……。
動揺しつつ、彼女を抱いて頭を撫でる。
「……ごめん、どこにも行かないから」
「どうして皆、私を嘘つきみたいに見るんだよ! そりゃ性格はクソだけど、いつだって本気で愛してるのに! 疑わないでよ! 私の好きをもう疑わないでよぉ」
僕の涙が、ジェシカの心の傷を引っかいてしまったらしい。
子猫みたいに丸くなったジェシカの背中を撫でて、泣きじゃくる彼女の頬にキスを落とす。
ずっと、お互いに色々、触れずにここまで来てしまった。
僕は関係を持って彼女を屋敷に縛りつけることに夢中で、ジェシカは嫌われないよう、僕に踏み込んでこなかった。
色々、ステップを省いてしまってたな。
あらためて、まっすぐにジェシカの目を見る。
動揺と、嫌われる恐怖が読み取れる。
こんな風に彼女を傷つけてしまう自分を情けなく思う。
それでも、手放すことなんて出来そうにない……。
「僕は、君が思う以上に君に夢中だし、本当は女性経験とかあまりない。そういう空気を出してただけでさ。初めから、君だけなんだよ」
まさか今日まで作ってた仮面を脱ぎ捨てる羽目になるなんて思わなかった。
「私はね、本当に性格がクソだけど、人に愛されたいとは思ってるの。でも、頑張っても愛してもらえなかったら、絶望して生きていくしかなくなるじゃん。だから、頑張るのが怖かったの。アルトはね、私に初めて安心をくれた人。しつこいくらい私を愛して、繋ぎとめてくれたのが、アルトなの。嬉しかったし、何より安心させてくれたから、ずっと傍に居させて欲しいの」
ギュって、強く抱く。
痛いくらい、抱きしめて。
ジェシカに僕を刻む。
「アルト。きついよ」
「大切にする。愛してる」
「だからね。痛いって言ってるだろ」
ジェシカは純粋な頭突きを僕の顎に刻んでくれた。
「いっ……」
「もう、このくらいで抱きしめてくれれば十分だから」
そう言ってギューってしてくるジェシカが可愛いすぎる。
「頭突きされても笑ってるとか、変態だよ」
「手加減してもらったからね」
「もう。アルトは馬鹿だよ」
「そう怒らないで。これから、失敗しながらステップアップしていこう? ダンスも、これから歩く二人の道のりも」
「私が一緒に失敗したいって思えるのは、アルトだけなんだから。そこのところ、よろしくね」
ジェシカが望む強さで彼女を抱きしめる。
「さっきの強いのも、思い伝わったから。ありがと」
ジェシカからキスをくれる。
照れくさそうに笑うジェシカが可愛くて。
たぶん、今月の夜会には間に合いそうもないなと思った。
彼女と二人でいて、ダンスだけに専念するなんて難しいよ。
目下の悩みは、ジェシカが可愛すぎること。
実は義理の娘に甘そうな父の顔を思い出して、僕は嘆息した。
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みんなの感想(7件)
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面白かったです♪
素敵な作品をありがとうございました~
感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてよかったです!
一言声をかけてもらえるだけで書いて良かったなって思えます。感謝ー。
「愚昧」というお話の中でジェシカの頭を思い切り叩くとありますがティーナの間違いでしょうか?
間違いでした(;´∀`)
教えていただいて感謝です。
我ながらミスが多くて恥ずかしいです。
「ざまぁ」のすっきり系が好きで 読み始めましたが 最初はアルトの素直じゃない態度や ジェシカの卑屈すぎないかなという態度に 好感も持てずにいました。でも中盤から ティーナの本心や、かかわる人たちの人間らしい 勝手すぎるとうに見えてもしまう部分もあるけど、人としてありえる情の描写や、最後に両親が親として大切な事に気づいた下りを読み アルトやジェシカも含め 登場人物が好きになりました。戦争に関してもそうですが 作者さんは この短いストーリーの中に 人の心理描写をちりばめていると思います。という事で面白かったので お気に入りにさせて頂きました。^^
感想ありがとうございます。登場人物が考えるままに考えて、動いてもらおうと心がけているので、作者の思いというか、そういうものを汲みとっていただけたのが本当に嬉しいです。
どの登場人物もそれぞれに好きなものや嫌いなもの、譲りたくないものとかがあって、「ざまぁ」で言えばこのキャラはこういう風に退場させた方がいいんだろうなぁ、と思いつつ、ジェシカがそれを許さない場面があったので、ままならないなぁと思っていたのですけど。
面白いと言っていただけて嬉しかったです。ありがとうございます。励みにして今後も頑張ってみます。