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第7話 運命の出会い 【キャラ紹介/メイヴェル】
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こんなに、綺麗な人がいるのだ――
目が合うと、シルクは運命かと思う、衝撃に近い感銘を受けた。
一生のうちに、出会えたことさえ奇跡のように思えた。
これほどまで、印象的な瞳を知らない。
明るい翠の瞳が、強く美しい魂を宿し、そこに在った。
確かな光を感じさせる瞳に、相反する、寂しげな翳りさえ宿って、強く、惹かれた。
たとえば、サリやシェーンもそうなのかもしれない。ただ、物心つく前から近くにいて、感銘を受ける前に知ってしまっただけなのかも、しれないけれど。
――違う。
綺麗なだけではなくて、彼女ただ一人のための、瞳に見えてしまった。
これまで、彼女でなければならない、彼女ただ一人を必要としてくれるような誰かに、シルクは多分、出会ったことがなかった。
もしも、この世界のどこかに、そんなただ一人がいたとしたら――?
世界が生命を得たように輝き始める。
シルクにとって、メイヴェルはそれくらいの光彩を放つ存在だった。
エヴァディザードとは、義理の兄弟なのかと思うくらい似ていない。
砂の国の民らしく、浅黒い肌のエヴァディザードに対し、メイヴェルの肌はサリやアルディナンに近い色で、髪も優しい風合いのアッシュ・ブロンドなのだ。
メイヴェルの翠の瞳と見詰め合うと、シルクはただ一つを願い、歩み寄っていた。
許されるなら、もっと、少しでいいから傍に――
「――お加減はいかがですか? 私はカムラ帝国の第二皇女、シルク・ライゼルファンと申します」
暗殺されかけた直後のことで、険しさのあったメイヴェルの表情が、ふいに、変化を見せた。
待ち望んだ相手に見えたような、穏やかで優しい微笑みが零れた。
「あなたのことは覚えている。私はメイヴェル・ディーン・ディナイ」
メイヴェルを見忘れるなんてことがあるとは思えないのに、シルクには、メイヴェルの記憶がなかった。
いつ、会った――?
見詰め続けるシルクの髪の一筋に、メイヴェルが指を絡めた。
長い指が、慈しむようにシルクの白金の髪に触れ、優しいキスを落として、指で梳くようにして流した。
湖のように静かで、心地好い居場所を与える、微笑み。
シルクは感極まって、涙を落とした。
「……すまない」
涙を落とすシルクの様子に、触れたせいだと思ったのだろう。メイヴェルが手を引こうとした。
とっさに引き止めて、シルクは触れた手の体温に驚いて、その手を離した。
親族以外の異性の手に触れたこと、意識して触れたこと、なかったと、気付いた。
「あなたは母親似だな。母君は、お元気か?」
「あ……はい、無駄に元気です」
「無駄ということはないよ」
お元気ならよかったと、寂しそうに笑って、メイヴェルが視線を移した。
「エヴァ、すまなかったな。どうなった?」
「兄上ご自身の他に、大事ありません。サリ王子が、直々に、解毒して下さったところです」
うなずいて、メイヴェルがサリに謝辞を述べた。
メイヴェルにもエヴァディザードにも、シグルド側の不手際を追求する気配は無い。
追求がなくて不満げにしたシェーンに、サリが、「心配しなくても、私に何かあれば君がシグルドの次期国王だ、お手柔らかにね、シェーン」などと言ったりして、シェーンがさも、「こんなへたれた国を押しつけないでくれ」とばかり、秀麗な額に手を押し当てたりした。
それでも、いざ、何かあったら、シェーンはシグルドを見捨てたりしないはずだとシルクは思う。
「試合を手配して来よう」
サリが席を立った。
「私達も行こうか。おいで、シルク。用は済んだだろう?」
差し伸べられたシェーンの手に、シルクは途惑った。
もう少し、ここにいられる方法はないかなと、探した。メイヴェルと話したい。
病み上がりだし、出て行くのが筋なのだけれど。
迷って、つい、シェーンに手を引かれたまま、メイヴェルを見詰めた。
「――滞在中はどちらに?」
視線に気付いたメイヴェルが、微笑んで彼女に尋ねた。
鼓動が跳ねた。
シルクはにわかに緊張して、胸の前できゅっとこぶしを握った。
「あの、こちらに……!」
「よかったら、あなたと話したい。暇を見て、ここにおいで」
「……! ほ、ほんとに!? 今夜でもいい?」
失笑したメイヴェルが、穏やかな笑顔でうなずいた。
「――やったぁ!」
シルクが躍り上がって喜ぶと、シェーンが深々と嘆息した。
メイヴェルに名乗った際、シルクが皇女としての礼をきちんと取ったことにも、シェーンはぎょっとしたのだ。
===========
◆ 占いの館 ◆
===========
☆ メイヴェル(19歳) … シルクのはとこで、砂の国カイム・サンドの族長。先代剣聖の後継者。
【フルネーム】 メイヴェル・ディーン・ディナイ
☆ 気になる異性
特にいません。
☆ 信頼する人
1. ラナエ【A】 … ????
2. エン【C】 … 霊術の師範。
3. エヴァ【C】 … 弟。
4. マクアナイ【C】 … メイヴェルを後見してくれている砂の国の従者。
=====
☆ シルク
☆ 気になる異性
1.メイヴェル【S】≪↑UP≫
☆ 信頼する人
1.クリストファ【S】
2.ティリス【B】
3.アルディナン【C】
=====
シェーン「( ゜ω゜):;*.':;ブッ!」
シルク「エ━━━∑(-`Д´-;)━━━!?」
シェーン「すごいなコレ。運命の出会いだと思ったのはシルクだけらしい。ま、よくあることだよ。泣きたい時には、いつでも私の胸を貸してあげるよ?(゜ノ∀`゜)゜。ゲラゲラ」
目が合うと、シルクは運命かと思う、衝撃に近い感銘を受けた。
一生のうちに、出会えたことさえ奇跡のように思えた。
これほどまで、印象的な瞳を知らない。
明るい翠の瞳が、強く美しい魂を宿し、そこに在った。
確かな光を感じさせる瞳に、相反する、寂しげな翳りさえ宿って、強く、惹かれた。
たとえば、サリやシェーンもそうなのかもしれない。ただ、物心つく前から近くにいて、感銘を受ける前に知ってしまっただけなのかも、しれないけれど。
――違う。
綺麗なだけではなくて、彼女ただ一人のための、瞳に見えてしまった。
これまで、彼女でなければならない、彼女ただ一人を必要としてくれるような誰かに、シルクは多分、出会ったことがなかった。
もしも、この世界のどこかに、そんなただ一人がいたとしたら――?
世界が生命を得たように輝き始める。
シルクにとって、メイヴェルはそれくらいの光彩を放つ存在だった。
エヴァディザードとは、義理の兄弟なのかと思うくらい似ていない。
砂の国の民らしく、浅黒い肌のエヴァディザードに対し、メイヴェルの肌はサリやアルディナンに近い色で、髪も優しい風合いのアッシュ・ブロンドなのだ。
メイヴェルの翠の瞳と見詰め合うと、シルクはただ一つを願い、歩み寄っていた。
許されるなら、もっと、少しでいいから傍に――
「――お加減はいかがですか? 私はカムラ帝国の第二皇女、シルク・ライゼルファンと申します」
暗殺されかけた直後のことで、険しさのあったメイヴェルの表情が、ふいに、変化を見せた。
待ち望んだ相手に見えたような、穏やかで優しい微笑みが零れた。
「あなたのことは覚えている。私はメイヴェル・ディーン・ディナイ」
メイヴェルを見忘れるなんてことがあるとは思えないのに、シルクには、メイヴェルの記憶がなかった。
いつ、会った――?
見詰め続けるシルクの髪の一筋に、メイヴェルが指を絡めた。
長い指が、慈しむようにシルクの白金の髪に触れ、優しいキスを落として、指で梳くようにして流した。
湖のように静かで、心地好い居場所を与える、微笑み。
シルクは感極まって、涙を落とした。
「……すまない」
涙を落とすシルクの様子に、触れたせいだと思ったのだろう。メイヴェルが手を引こうとした。
とっさに引き止めて、シルクは触れた手の体温に驚いて、その手を離した。
親族以外の異性の手に触れたこと、意識して触れたこと、なかったと、気付いた。
「あなたは母親似だな。母君は、お元気か?」
「あ……はい、無駄に元気です」
「無駄ということはないよ」
お元気ならよかったと、寂しそうに笑って、メイヴェルが視線を移した。
「エヴァ、すまなかったな。どうなった?」
「兄上ご自身の他に、大事ありません。サリ王子が、直々に、解毒して下さったところです」
うなずいて、メイヴェルがサリに謝辞を述べた。
メイヴェルにもエヴァディザードにも、シグルド側の不手際を追求する気配は無い。
追求がなくて不満げにしたシェーンに、サリが、「心配しなくても、私に何かあれば君がシグルドの次期国王だ、お手柔らかにね、シェーン」などと言ったりして、シェーンがさも、「こんなへたれた国を押しつけないでくれ」とばかり、秀麗な額に手を押し当てたりした。
それでも、いざ、何かあったら、シェーンはシグルドを見捨てたりしないはずだとシルクは思う。
「試合を手配して来よう」
サリが席を立った。
「私達も行こうか。おいで、シルク。用は済んだだろう?」
差し伸べられたシェーンの手に、シルクは途惑った。
もう少し、ここにいられる方法はないかなと、探した。メイヴェルと話したい。
病み上がりだし、出て行くのが筋なのだけれど。
迷って、つい、シェーンに手を引かれたまま、メイヴェルを見詰めた。
「――滞在中はどちらに?」
視線に気付いたメイヴェルが、微笑んで彼女に尋ねた。
鼓動が跳ねた。
シルクはにわかに緊張して、胸の前できゅっとこぶしを握った。
「あの、こちらに……!」
「よかったら、あなたと話したい。暇を見て、ここにおいで」
「……! ほ、ほんとに!? 今夜でもいい?」
失笑したメイヴェルが、穏やかな笑顔でうなずいた。
「――やったぁ!」
シルクが躍り上がって喜ぶと、シェーンが深々と嘆息した。
メイヴェルに名乗った際、シルクが皇女としての礼をきちんと取ったことにも、シェーンはぎょっとしたのだ。
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◆ 占いの館 ◆
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☆ メイヴェル(19歳) … シルクのはとこで、砂の国カイム・サンドの族長。先代剣聖の後継者。
【フルネーム】 メイヴェル・ディーン・ディナイ
☆ 気になる異性
特にいません。
☆ 信頼する人
1. ラナエ【A】 … ????
2. エン【C】 … 霊術の師範。
3. エヴァ【C】 … 弟。
4. マクアナイ【C】 … メイヴェルを後見してくれている砂の国の従者。
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☆ シルク
☆ 気になる異性
1.メイヴェル【S】≪↑UP≫
☆ 信頼する人
1.クリストファ【S】
2.ティリス【B】
3.アルディナン【C】
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シェーン「( ゜ω゜):;*.':;ブッ!」
シルク「エ━━━∑(-`Д´-;)━━━!?」
シェーン「すごいなコレ。運命の出会いだと思ったのはシルクだけらしい。ま、よくあることだよ。泣きたい時には、いつでも私の胸を貸してあげるよ?(゜ノ∀`゜)゜。ゲラゲラ」
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