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86 再建へのシナリオ
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王国の始末を一任させてもらえる代わりに、魔王様からお題が出されました。
それは「王国を潰すな」ということ。
王国は人間領では大国に位置する存在です。歴史は無駄に古く、領土は無駄に広く、住民も多く、下手に潰すと難民が大発生して、周辺が大迷惑。かといって誰もあんな面倒な土地を引き取りたくはない。もちろん、魔族もごめんです。魔王様を殺すのに刃物はいりません、あの土地の管理を任せるだけでポックリ過労死です。
維持、管理、調査、開発、復興……問題山積な、そんな場所を軟着陸させることが、私に課せられた使命です。
「王様の復権は論外、王子は去勢すれば再利用が可能か? お姫様は……とりあえずヘンな病気をうつされていないか、検査が先ですね。あー、騎士団長さまが玉座に着いてくれたら簡単なのにー」
第七部隊の兵舎にて、王国の今後について、あーでもない、こーでもないと悩む私。
ここはフェンリルたちの溜り場なので、近頃ではすっかり犬カフェ状態です。
モフモフを目当てに近所の子供たちが遊びに来ています。とくに機密性のないウチの兵舎は、基本的によいこは出入り自由なのです。クラスメイトたちも、たまに遊びに来ているようです。お好きですよね、女子ってこういうの。
私はリースさんやアルティナの姉御に抱きつくのが好きなところから、たぶん爬虫類系の方が好みなのかもしれません。もっとも蛇神さまやドラゴンを、爬虫類に分類していいのかはわかりませんが……、今度ブルタス先生に訊いてみましょう。
おっと、思考が横道に逸れてしまいました。
一応、参考までにクラスメイトらにも、適当に声をかけてみたのですが、かえってきたのは予想通りの答え。ずばり「民主主義と議会制」の導入です。いやはや、これだから平和ボケした国のお子様は……、あんな衆愚政治、こんな物騒な世界で適応なんかしてみなさい、一年後には国が地図から消えていますよ。壁の向こうにはモンスターがゾロゾロな世界で、のんびり多数決なんて取っていたら、あっという間に全滅です。あれは平和で豊かな時代だからこそ成り立つものであって、生と死の距離がわりと接近しているギリギリの時代では、とてもとても……、そんなわけで当然のごとく却下です。
良識派が自ら立つ気がない以上は、事実上の二択、となれば私としては愛想笑いの一つも満足に出来ない王子なんて論外、打算で行動できるビッチ姫の一択になるのです。
素養は悪くないと思うのですが、いかんせん彼女の側によき師がいなかったのが悔やまれます。いっそのことお婆ちゃん女王さまのところに、ホームステイでもさせましょうか。
でもそんなことをしたら、きっと王子派が黙っていませんし、やはり殺るしかないのでしょうか?
「代理政府でも立てて、修行の後にお姫さまに王位を継いでもらうのは?」
差し入れに試作品のカレーパンを持ってきてくれた宮原さんのご意見、しかしそれも甘い。いえ、カレーパンはしっかり辛いですよ。いい感じのウマ辛さです。これでもまだまだ未完成って、貴女と料理長はどこまで行くつもりなのでしょう。
おっと、それよりもあのビッチ姫です。
彼女がそんな約束を、心の底から信じ切れるわけがありません。たとえ誰が間に入ったところで無駄でしょう。良くも悪くも彼女は生粋の王族、騙し合いが当たり前の環境にて、純粋培養された疑心のスーパーエリート。そんな旨い話を信じるわけがないのです。誠心誠意を示せばいい? そんなあやふやなモノをいくら前面に押し出したところで、鼻で笑われてお終いです。ですが……。
「なるほど、逆に考えれば『ちゃんと目に見える証』さえ与えてやれば、信じるとも言えますか」
宮原さんの意見を参考にして、私は今後の方針を決めました。
せっかくですので自分の親善大使という立場を、せいぜい利用してやることにしましょう。
それは「王国を潰すな」ということ。
王国は人間領では大国に位置する存在です。歴史は無駄に古く、領土は無駄に広く、住民も多く、下手に潰すと難民が大発生して、周辺が大迷惑。かといって誰もあんな面倒な土地を引き取りたくはない。もちろん、魔族もごめんです。魔王様を殺すのに刃物はいりません、あの土地の管理を任せるだけでポックリ過労死です。
維持、管理、調査、開発、復興……問題山積な、そんな場所を軟着陸させることが、私に課せられた使命です。
「王様の復権は論外、王子は去勢すれば再利用が可能か? お姫様は……とりあえずヘンな病気をうつされていないか、検査が先ですね。あー、騎士団長さまが玉座に着いてくれたら簡単なのにー」
第七部隊の兵舎にて、王国の今後について、あーでもない、こーでもないと悩む私。
ここはフェンリルたちの溜り場なので、近頃ではすっかり犬カフェ状態です。
モフモフを目当てに近所の子供たちが遊びに来ています。とくに機密性のないウチの兵舎は、基本的によいこは出入り自由なのです。クラスメイトたちも、たまに遊びに来ているようです。お好きですよね、女子ってこういうの。
私はリースさんやアルティナの姉御に抱きつくのが好きなところから、たぶん爬虫類系の方が好みなのかもしれません。もっとも蛇神さまやドラゴンを、爬虫類に分類していいのかはわかりませんが……、今度ブルタス先生に訊いてみましょう。
おっと、思考が横道に逸れてしまいました。
一応、参考までにクラスメイトらにも、適当に声をかけてみたのですが、かえってきたのは予想通りの答え。ずばり「民主主義と議会制」の導入です。いやはや、これだから平和ボケした国のお子様は……、あんな衆愚政治、こんな物騒な世界で適応なんかしてみなさい、一年後には国が地図から消えていますよ。壁の向こうにはモンスターがゾロゾロな世界で、のんびり多数決なんて取っていたら、あっという間に全滅です。あれは平和で豊かな時代だからこそ成り立つものであって、生と死の距離がわりと接近しているギリギリの時代では、とてもとても……、そんなわけで当然のごとく却下です。
良識派が自ら立つ気がない以上は、事実上の二択、となれば私としては愛想笑いの一つも満足に出来ない王子なんて論外、打算で行動できるビッチ姫の一択になるのです。
素養は悪くないと思うのですが、いかんせん彼女の側によき師がいなかったのが悔やまれます。いっそのことお婆ちゃん女王さまのところに、ホームステイでもさせましょうか。
でもそんなことをしたら、きっと王子派が黙っていませんし、やはり殺るしかないのでしょうか?
「代理政府でも立てて、修行の後にお姫さまに王位を継いでもらうのは?」
差し入れに試作品のカレーパンを持ってきてくれた宮原さんのご意見、しかしそれも甘い。いえ、カレーパンはしっかり辛いですよ。いい感じのウマ辛さです。これでもまだまだ未完成って、貴女と料理長はどこまで行くつもりなのでしょう。
おっと、それよりもあのビッチ姫です。
彼女がそんな約束を、心の底から信じ切れるわけがありません。たとえ誰が間に入ったところで無駄でしょう。良くも悪くも彼女は生粋の王族、騙し合いが当たり前の環境にて、純粋培養された疑心のスーパーエリート。そんな旨い話を信じるわけがないのです。誠心誠意を示せばいい? そんなあやふやなモノをいくら前面に押し出したところで、鼻で笑われてお終いです。ですが……。
「なるほど、逆に考えれば『ちゃんと目に見える証』さえ与えてやれば、信じるとも言えますか」
宮原さんの意見を参考にして、私は今後の方針を決めました。
せっかくですので自分の親善大使という立場を、せいぜい利用してやることにしましょう。
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