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第三章 死霊都市レムレース

3-16 報告

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 その日の夜、レヴィンは両親とリリスと共に、アリシアの家を訪ねた。
 貴族になった事の報告である。今日はアントニーも非番で家にいるのだ。
 昔ながらの付き合いで家族のような存在であるからこそ、しっかり報告しておこうという判断である。

 部屋に通されると、レヴィンはさっそく貴族になった事を報告する。

「……と言う訳で、貴族になる事になりました。貴族になってもよろしくお願いします」

 説明を最後まで聞き終わると、アントニーが口を開いた。

「いやぁ、まさか、グレンとこのレヴィンが貴族になっちまうなんてなぁ」

「レヴィンは昔から賢かったからね。あたしは驚いちゃいないよ」

 ベネッタは意外でも何でもないといった様子だ。

「貴族になれたのは『南斗旅団』の討伐のお陰もあるよ。これはアリシアの力も大きい」

 急に自分の事に触れられて慌てて謙遜するアリシア。

「あたしは後方で援護してただけだよ~」

「何言ってんだ。そう言う職業クラスなんだから当然だろ? あの敵の人数の中、よく大した怪我もなく勝てたと思うよ」

「アリシアも頑張ったんだな。俺なんて、報道された時の朝刊を取ってあるぞ!」

 アントニーが親馬鹿っぷりを見せつける。

「何言ってんだ。うちも保存してあるに決まってんだろ!」

 対抗するグレン。
 すると、フィルも大きな声で宣言する。

「レヴィン兄ちゃんも姉ちゃんもすごいよ! 僕も早く冒険者になりたい!」

「早く冒険者になって、東の海の果てまで行くんだもんな!」

 レヴィンは何度も聞いているフィルの夢を口にする。
 そして乱暴に彼の頭をわしゃわしゃ撫でる。
 フィルの夢を応援している一同である。

「それにしてもどうすんだ? 領土をもらったってことはそこへ移住するのか?」

「何もないところに一から街を造るからね。リリスも生まれたばかりだし、そうもいかないよ」

 レヴィンはそう否定する。

「俺としても着いて行ってやりたいんだが……」

 グレンが苦い表情をして言葉を濁した。

「王国で開拓民を募集してくれてるし、マッカーシー卿も人員を出してくれるって話だし大丈夫だよ」

「しかし、ある街で人が増えると他の街で人が減る訳だからなぁ……労働力を奪われるんだから、他の貴族の協力は得られにくいんじゃないか?」

 アントニーは人が本当に集まるか心配なようだ。

「そこは色々な街で粘り強く募集するしかないね。あと、僕は西からの難民や、他国の人も招き入れたいと思っている」

「なッ!? 難民もか?」

 驚いた声を上げるグレン。

「難民のせいで王都の治安が悪くなっているし、シ・ナーガ帝國の人って傲慢だって聞くよ? 大丈夫なのかい?」

 ベネッタも心配そうにレヴィンを諭しにかかる。
 王都の治安が乱れているのは聞いていたが、難民たちの性質までは知らなかったレヴィンである。

「そうなんだ……色々調べないといけないね」

「それに場所も場所だけになぁ。魔の森の近くなんだから、軍備にも力を入れなきゃならんだろうしな」

 アントニーが戦力の保持についても言及する。
 「よかったら俺が警備してやるぜ?」と現役警備隊らしい事を言っている。

「そっか。戦力と言えば、冒険者ギルドにも支部を置いてもらわなきゃいけないね。今度、ギルドマスターのランゴバルトさんに相談してみよう」

「ああ、誘拐事件の時、知り合ったんだったな」

 グレンも面識があったはずだ。

「レヴィン兄ちゃんッ! 名前は? ねぇ街の名前はどうするの?」

 フィルが興味津々で質問してくる。

「そうだよッ! レヴィン! 格好良い名前にしなきゃだよッ!」

「一応、考えてはあるよ」

「おッ、是非聞かせてもらおうか」

 家族そろってノリノリである。

「古代史で習った言葉だよ。ナミディア……理想郷と言う意味だ」

 レヴィンはキメ顔でそう言った。
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