私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK

文字の大きさ
4 / 36

4話

しおりを挟む
「国を出る、だと……? 本気で言っているのか、リシア」

 お父様は私の言葉を理解すると、厳しい目をこちらへ向けて問うた。
 娘の口からそのような言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。
 だけど私は本気だ。

「もちろんです、お父様。爵位を剥奪され、居場所を失った私達がこの国に留まる理由はないでしょう」

「だ、だからと言って国を出ると言うのはあまりに無謀ではないか? 我々はこの国で生まれ、育ったのだ。今更他の国に生きていくなど……」

 お父様の主張もよく分かる。
 もし私が逆の立場だったとしても、いきなりそんなことを言われたら戸惑うだろう。
 しかし私はこれから先に王国が辿る末路を知っている。
 だからこそ私は己の主張を曲げる気はない。

「……お父様。よく聞いてください。当代の要の巫女として忠告します」

「な、なんだ……?」

「この国は間も無く滅びを迎えます。数百年前、初代の時代に襲い掛かった大地震の手によって」

 それを聞いたお父様の顔色が変わる。
 その表情には僅かな疑問や不信感が浮かぶが、それ以上に驚きを示していた。

「もう一度、言ってくれないかリシア。私の耳がおかしくなっていなければ、この国がこれから大地震で滅ぶと聞こえたのだが」

「はい。その通りです」

「……何故そんなことを知っているんだ? そして、何故今までその事を隠していたんだ?」

「分かりません。ただ、私にはこの国が滅びを迎える未来が見えました。一度だけではなく、幾度も。これは決してただの妄想ではないと確信できるほどに」

 ちょっとだけ嘘を吐いた。
 私はもうこの国が避けようのない滅びの運命を抱えていることを最初から知っている。
 それを私の力で強引に押さえつけ、先延ばしし続けてたのだから。

「もし私がこの事実を公表したところで要の巫女、そしてランドロールの名が衰えている今では誰にも信じて貰えないでしょう。むしろ民の不安を煽ったと言う罪に問われていたかもしれません。ですから今まで黙っていました。申し訳ありません」

 全く気持ちの篭っていない、型式だけの謝罪をする。
 事実として、我がランドロール一族の発言に対する信用はほとんどない。
 そして分かっているならそれを防ぐのが義務だろうと言われるのが落ちた。
 私が頭を上げると、お父様はとても困った様子で頭を抱えていた。
 
「……それを防ぐ術はあるのか?」

「……ありません。少なくとも、私の力では不可能でしょう」

 これも嘘だ。
 本当はこの国を護り続ける力を、私は有している。
 しかしそれを言って仕舞えばきっとお父様は、この国のことを護るように言ってくるだろう。
 でも、私はそれが嫌だった。嫌になってしまった。

「……そう、か。もしお前にそれを防ぐ力があれば、我がランドロール家の復権もあり得ない話でもなかったが……いや、すまない。お前が悪いわけではなかったな」

 このまま私が国を見捨てて旅立てば、きっと多くの人が命を落とすだろう。
 死んだ後は地獄に落ちるかもしれない。
 でも、これから見捨てる人たち以上の数の人間を、前世の私は救ってきた。
 だから今度は、自分とその周りだけを救っても許されるのではないだろうか。

「ひとまずお前の言いたい事はよく分かった。それを踏まえた上でこれからどうするか考えようと思う」

「分かりました」

 ……もしこのままお父様が、ランドロールの名にかけて国を護って名誉回復を試みようなどと言ってきたら、その時は私一人でもこの国を出よう。
 もうこの国のために尽くしたいとは思わないし、こんなところで死にたくもない。

 それに私たちがどれだけ活躍したところで、彼らが私達のことを認めることは無いだろう。
 そもそもこの国の王族貴族は腐っている。
 一度口にした発言を取り下げて謝罪が出来るような人はほとんどいないだろう。

 でも、出来ることなら家族くらいは救える道を選べるといいな。
 
 
しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました

ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、 ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。 理由はただ一つ―― 「平民出身の聖女と婚約するため」。 だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。 シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。 ただ静かに席を立っただけ。 それだけで―― 王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、 王国最大の商会は資金提供を打ち切り、 王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。 一方シャウラは、何もしていない。 復讐もしない。断罪もしない。 平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。 そして王国は、 “王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、 聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。 誰かを裁くことなく、 誰かを蹴落とすことなく、 ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。 これは、 婚約破棄から始まる―― 静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。 「私は何もしていませんわ」 それが、最強の勝利だった。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?

水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」 ここは裁判所。 今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。 さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう? 私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。 本当に裁かれるべき人達? 試してお待ちください…。

処理中です...