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10話
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王城のとある一室、
陛下から招待を受け、私はまもなく到着するお見合い相手を待っている。
ユーリスとの婚約破棄からおよそ1週間程度しか経っていないけれど、こういった話を後に後にと伸ばすのは良くないと思ったから早速お見合いを受け入れた。
「ふふ、緊張する? シェリル」
「そりゃあね。だって王族の方とのお見合いだなんて、初めての経験だから――」
「あら、でも私とは仲良くなれたじゃない。きっとこれから来る王子とだって仲良くなれるわよ」
「リディア……まあそれはそうだけどさ」
今この部屋にはもう一人、王城に入ってからここまで案内をしてくれた人がいる。
私の2個下で、同じ魔導研究所に所属する秀才王女――リディア第二王女殿下その人だ。
彼女も私と同じく飛び級で学院を卒業し、専用の工房が与えられるほどの実力を持つ。
そんなリディアと私は簡単に言えば親友兼ライバルと言った関係なのだけれど、私が生活面の魔導具を研究しているのに対して彼女は主に戦闘用――武器や兵器などに転用できる魔導技術を研究している。
ちなみに彼女自身の魔法による戦闘力も非常に高く、並みの兵士なら100人に囲まれても余裕で完勝できるくらいだ。
最初はもちろん私だってちゃんと敬称を付け、自分とは身分の違う存在として扱っていたのだけれど、彼女がそれを強く拒絶し、半ば命令に近い形で気軽に接するよう言われたので、私も吹っ切って今のような関係に落ち着いている。
「大丈夫よ。あなたはあなたが思っている以上に魅力的な女の子。きっと上手く行くわ」
「で、でも、私ってやっぱりちょっと暗いし、その、婚約破棄だってされちゃったし、自信があまり持てないというか……」
「なによそんな弱気になっちゃって。貴女らしくないわ。婚約破棄だって相手に見る目がなかっただけじゃない。貴女と言う婚約者がいながらバカ姉にあっさり騙されちゃって。まったく情けない」
「はは……」
あんなのとは、もちろんナディア王女の事だろう。
リディアは姉のことがあまり好きではないからか、私の前でその話をすることがほとんどなかった。
しかしこうして私がそのナディア王女の被害にあってからと言うものの、最初は姉の代わりにと謝罪をしてくれた上、その後は姉をこき下ろすのに何の躊躇いもなくなっていた。
「ほーら、もう少しで来るわよ。私は席を外すから、シャキッとしといてね」
「わ、分かってるよ……」
そう言ってナディア王女は何故か含みのある笑顔で退室していった。
ああ、緊張するなぁ。大丈夫かなぁ。
心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。
いったいどんな王子様が来るのだろうか。
膨らむ想像に少し胸を躍らせながら待った。
そして――
「し、失礼しますっ! はじめまして!」
扉が開けられたとき、そこに立っていたのは若干声を裏返らせ、私以上に緊張した面持ちの恐らく年下の王子(?)が立っていた。
陛下から招待を受け、私はまもなく到着するお見合い相手を待っている。
ユーリスとの婚約破棄からおよそ1週間程度しか経っていないけれど、こういった話を後に後にと伸ばすのは良くないと思ったから早速お見合いを受け入れた。
「ふふ、緊張する? シェリル」
「そりゃあね。だって王族の方とのお見合いだなんて、初めての経験だから――」
「あら、でも私とは仲良くなれたじゃない。きっとこれから来る王子とだって仲良くなれるわよ」
「リディア……まあそれはそうだけどさ」
今この部屋にはもう一人、王城に入ってからここまで案内をしてくれた人がいる。
私の2個下で、同じ魔導研究所に所属する秀才王女――リディア第二王女殿下その人だ。
彼女も私と同じく飛び級で学院を卒業し、専用の工房が与えられるほどの実力を持つ。
そんなリディアと私は簡単に言えば親友兼ライバルと言った関係なのだけれど、私が生活面の魔導具を研究しているのに対して彼女は主に戦闘用――武器や兵器などに転用できる魔導技術を研究している。
ちなみに彼女自身の魔法による戦闘力も非常に高く、並みの兵士なら100人に囲まれても余裕で完勝できるくらいだ。
最初はもちろん私だってちゃんと敬称を付け、自分とは身分の違う存在として扱っていたのだけれど、彼女がそれを強く拒絶し、半ば命令に近い形で気軽に接するよう言われたので、私も吹っ切って今のような関係に落ち着いている。
「大丈夫よ。あなたはあなたが思っている以上に魅力的な女の子。きっと上手く行くわ」
「で、でも、私ってやっぱりちょっと暗いし、その、婚約破棄だってされちゃったし、自信があまり持てないというか……」
「なによそんな弱気になっちゃって。貴女らしくないわ。婚約破棄だって相手に見る目がなかっただけじゃない。貴女と言う婚約者がいながらバカ姉にあっさり騙されちゃって。まったく情けない」
「はは……」
あんなのとは、もちろんナディア王女の事だろう。
リディアは姉のことがあまり好きではないからか、私の前でその話をすることがほとんどなかった。
しかしこうして私がそのナディア王女の被害にあってからと言うものの、最初は姉の代わりにと謝罪をしてくれた上、その後は姉をこき下ろすのに何の躊躇いもなくなっていた。
「ほーら、もう少しで来るわよ。私は席を外すから、シャキッとしといてね」
「わ、分かってるよ……」
そう言ってナディア王女は何故か含みのある笑顔で退室していった。
ああ、緊張するなぁ。大丈夫かなぁ。
心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。
いったいどんな王子様が来るのだろうか。
膨らむ想像に少し胸を躍らせながら待った。
そして――
「し、失礼しますっ! はじめまして!」
扉が開けられたとき、そこに立っていたのは若干声を裏返らせ、私以上に緊張した面持ちの恐らく年下の王子(?)が立っていた。
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