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18章 魔国の下見
譲れない事
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他に行う者もいないからと、この場ではオユキが進行役を担う。アベルにしても、一応できないでもないのだが、やはり不得手が見て取れることもあり、任せる事が出来る相手がいないというのが実情ではあるのだが。
「さて、動かせない、それが難しい事柄としては、次なる使命、使命なのでしょうか。ともかく、そのような物があるわけです。」
女性のみが参加して行う祭り。かつての世界では、政敵を貶める為だろうと言われる逸話と共に残っている、それ。そのような物を行う事が一つ。
「流石に、男性が町中を走り回って女性を打擲する、そういった部分は省略されるかと思いますが。」
「まて、オユキ。なんだその訳の分からない催しは。」
「来歴までは覚えていませんが、女性が屋敷でお茶会の延長として葡萄酒を備えて行う者と、その逸話から派生してマートルの枝を持った下着姿の男性が町中を走り回って、出会う女性を打ち据える祭りでしたか。」
「どんな奇祭なのだ、それは。」
関係性として近い事もあり、その役割を押し付けられると考えたからだろう。アベルから悲鳴に近い声も上がる。
「オユキ様。神々は徒に他者を傷つける振る舞いは望みません。」
「ナザレア様がそう仰せであるのならば、そうなのでしょう。であれば、そちらは省略されるとして、女性だけで行う葡萄酒を主体として様々な植物、歌と踊りを楽しむ会ですね。本来であれば冬に行う筈ではありますが。」
「ええ。私の言われている事の一つ。」
そして、カリンが始まりの町に残ると言った理由でもあるのだろう。
「どういう祭りになるか、それについては正直予想の範囲を超えません。ですので、今は。」
「まぁ、オユキの口にした訳の分からぬものが実現しないというのであれば。」
オユキとしては、それにしても来歴があるものなのですよと、そうとりなすにとどめるしかない。
「さて、他に動かせず、日程の定まらぬものは、魔国の両陛下、若しくは王妃様の行幸がいつになるのか。」
「それに関してではあるが、確か、両陛下それぞれに華と恋の女神から功績が送られていたはずだ。」
「私たちの相手を任せるべき後継がいないのだとしたら、揃って国を開けるというのは。」
「そうか、お前たちは聞いていないか。後継はいる。まだ若いがな。」
ただ、アベルのその言葉には、オユキが首をかしげる。王太子妃は、確かにアベルに比べて若い事には違いないが、相応に歳を重ねた相手だ。その兄弟が社交、外交の場に出られないというのもなかなか考えにくいと。
「王太子妃様は長女で、魔国の王太子は実際には次男だ。今は長男扱いだが。」
「成程。」
アベルの言葉は、オユキにしてみれば頭痛の種以上の何物でもない。
「そういった流れがあるのであれば、カナリアさんが席を同じくしたこともあるでしょう。そうですね、配慮が必要になるかどうか。いえ、先代アルゼオ公爵経由でとするしかないでしょう。カナリアさんも、くれぐれも、私たちに直接という話はお受けしないように。例え相手が失われ立場を振りかざしたとしても。」
「ええと、よくわかりはしませんが、分かりました。そのような支持であるならば、マリーア公爵から言われている事でもありますので。」
「杞憂というには、まぁ、起こりうる事態の一つです。その相手が思いのほか高位である、精々その程度です。相手がいかに立場を振りかざそうとも、廃嫡されている、若しくは別の家を与えられているのであれば、公爵は同格ですからそれを盾としてください。」
「相変わらず、聡い事だな。」
「と、言いますか、その情報源が私としては気になりますが。」
アベルが当然のように口にした言葉、それは早々他国が、こうして物の行き来も情報の行き来も難しい環境で起こってよいものではない。こちらの王家が失敗したのか、失敗させたいものたちの策が上手く働いたのか。そもそも、そのような事も考えられぬものが多かったのか。
「ともかくこちらで暮らしているでしょうし、いくらか動機として思い当たり所もあります。どれが正解だとしても陸でも無い事態にしかなりません。対応できる方に任せる、無視をする、その辺りが妥当でしょう。」
そちらは、恐らく予想の範疇であれば、早々につっかけて来そうではある。
「予測の内、一つが正解であるなら魔術師ギルドに所属していそうなものですか。」
「そう言えば、噂を聞いたような。」
「となると、いよいよその程度の相手ですね。さて、後は、やはり外交的な部分ですね。かかわった以上は締結の折には同席とまでは言いませんが。」
「流石に顔は出してくれ。いや、自由に動き回る巫女でもある。神も降ろせる。正式に依頼が来るか。」
「そちらについては、両陛下ないし王家間でまずは腹案が詰められるでしょうから、それを待つとして。」
そこからさらに日程をいくらか考える。ダンジョンから得られる糧、それに対して感謝を捧げる祭りは、既にお試しとしての初回が終わるころ。
「戻れば、少しする頃には豊饒祭があるのでしたか。」
「そう言えば、そんな時期か。となると。」
そして、一同の視線が五穀豊穣を司る物に連なる相手に向かう。
「私たちの物は、私たちでやるわよ。」
「こちらでも、王都でも。任せる相手を選ぶ必要があると、そのような話でしたが。」
「声は通して置いたもの、向こうから来るわよ。」
「先に話だけはしておいてくれ。オユキ達の屋敷であれば、融通は利くがここはそうじゃない。」
「面倒な物ね。まぁ、近くまでくれば、向こうも吠えるでしょうから、その時に話をするわ。」
アイリスの予定、こちらで祖霊を祀る役を与える相手の話はいよいよ直近の物ではある。今後の予定に関係がない物ではあるのだが。
「その、部族も違うようですが、祀り方の作法などは。」
「ああ、その事。」
トモエとしても興味がある話題であるため、そちらについつい補則を求めてしまう。
「勿論祭祀としての事は難しいけれど、日々の事なら子供でも知ってるわよ。難しい事でもないもの。掃除と、供物と。その程度よ。どうしても肉を捧げる事が多いから、きちんとしなければならないのよね。」
「神前に生肉ですか。確かに、屋外で放置していいものではありませんが。」
「それも、自分たちで狩りに出て、その制限があるのよね。こちらであれば、流石に子供は無理かしら。まぁ、近縁種、恩恵を受ける種族も手伝うでしょうし。」
「それぞれに祀るべき祖が居られると思いますが。」
「祭祀の場を作れるものがいないんだもの。降臨祭みたいに特別な日であれば、そちらを優先するでしょうけれど、日々の感謝は与えてくれる祖に向ける物よ。」
いよいよ脱線が進み始めたため、オユキがそろそろと話を止める。あまり時間を使われてしまうと、なんだかんだで疲労がたまっているオユキが眠気に負けるというのが最たる理由だ。
「一先ず、確定している大きな出来事については、後もう一つ、月と安息へと向かう日取りでしょうか。」
「それなんだが、万一魔国の陛下が望まれれば。」
「ないとは言えませんが、それこそ門が出来てから、それでよいのではとも考えています。」
「どちらに傾いている。」
アベルから改めてせっつかれたため、オユキから己の考えとして。
「外交の話、内密の話をするのに王都では耳目も多いでしょう。互いに他の忙しなさも抱えるでしょう。何より、人員の差というあまりに明確な物が生まれる訳です。」
「一応、今回神国から随伴している者達が居るし、既に移動した物もいるが。」
「あくまで、前段階の交渉ですから。と、言いますか基本は挨拶だけでしょう。」
どうにも、その辺りは予想ばかりで、実情が分かる物ではない。それこそ、明日以降内々に魔国側から伝えられる事も出てくるだろう。
「神国に対して、まぁ、そうですね。アベルさんもそうです。先代アルゼオ公爵も。今回用意された使者よりも明らかに王家に近い存在がいる訳です。下手に交渉を始めてしまえば。」
「まぁ、こっちに話が回って来るな。で、実際の話を知らない俺たちとしては苦言を呈する必要が出ても困るか。」
「はい。恐らく、神国の陛下も門を前提として、互いにまずは顔を合わせた上で、そして、実際に魔国を見てきた者達から聞き取りを行って、そう考えているでしょう。」
結局、隣国とはいえ、これまでその実情を知っているものなど、アルゼオ公爵家以外にいなかったのだ。それも、過日のアルゼオ公爵の口ぶりを考えれば、送り出し、より細かく情報を集めるようになったのはそれこそここ数十年といった所であろう。つまり、外交をしようにも、両国で何かの約定を結ぶにしても、互いに互いの事などよくわかっていないのだ。
「基本として、魔石と食料。知識と魔道具。その辺りとなるでしょうが、王太子妃様の事もあります。いえ、話が逸れましたね。少なくとも、私は月と安息への道行きに、交渉を担当されると言いますか、前段階として互いの要求を付き合わせ、友好を深める方々が同行されると考えています。」
「いよいよ、護衛の計画も綿密にしなきゃならん。そうなるとそっちは流石に豊饒祭の後だな。」
さて、指折り数えてというほどでもないが、大きなものは一先ずその程度。
「細かいものとしては、それらに付随して、領都と王都に向かうくらいでしょうか。一応国事ではありますから、報告はいるでしょうし。」
「それは、どうだろうな。慣例では、それこそ使者を立ててになるが。」
「確かに、当主本人が逐一移動は難しかったでしょうが、門もありますし。」
アベルの頭には、まだ組み込まれていない予定として、それがある。
「ナザレアさんは、どうしましょうか。」
「今度ばかりは、長期、一年はお側に。ただ、増員は考えていただければと。家を整えて、オユキ様やトモエ様の身の回りまでとなると、流石に手が足りません。」
「それこそ、見覚えのある方が有難くはありますが。」
「タルヤあたりは、喜んで来そうなものだが。そう言えば、カナリアたちとの事は。」
「それはいよいよ公爵様の差配に任せる事になります。と言いますか、ここまで話したうえで言うようなものではないのですが。」
そして、一通りの大仕事が出ただろうというところでオユキがため息とともに話を締めくくる。
「私の予想は、事こういった物は外れるほうが多いのですよね。」
さて、オユキの呟きを笑って見る者と唸り声をあげる者。綺麗に分かれたものだ。
「さて、動かせない、それが難しい事柄としては、次なる使命、使命なのでしょうか。ともかく、そのような物があるわけです。」
女性のみが参加して行う祭り。かつての世界では、政敵を貶める為だろうと言われる逸話と共に残っている、それ。そのような物を行う事が一つ。
「流石に、男性が町中を走り回って女性を打擲する、そういった部分は省略されるかと思いますが。」
「まて、オユキ。なんだその訳の分からない催しは。」
「来歴までは覚えていませんが、女性が屋敷でお茶会の延長として葡萄酒を備えて行う者と、その逸話から派生してマートルの枝を持った下着姿の男性が町中を走り回って、出会う女性を打ち据える祭りでしたか。」
「どんな奇祭なのだ、それは。」
関係性として近い事もあり、その役割を押し付けられると考えたからだろう。アベルから悲鳴に近い声も上がる。
「オユキ様。神々は徒に他者を傷つける振る舞いは望みません。」
「ナザレア様がそう仰せであるのならば、そうなのでしょう。であれば、そちらは省略されるとして、女性だけで行う葡萄酒を主体として様々な植物、歌と踊りを楽しむ会ですね。本来であれば冬に行う筈ではありますが。」
「ええ。私の言われている事の一つ。」
そして、カリンが始まりの町に残ると言った理由でもあるのだろう。
「どういう祭りになるか、それについては正直予想の範囲を超えません。ですので、今は。」
「まぁ、オユキの口にした訳の分からぬものが実現しないというのであれば。」
オユキとしては、それにしても来歴があるものなのですよと、そうとりなすにとどめるしかない。
「さて、他に動かせず、日程の定まらぬものは、魔国の両陛下、若しくは王妃様の行幸がいつになるのか。」
「それに関してではあるが、確か、両陛下それぞれに華と恋の女神から功績が送られていたはずだ。」
「私たちの相手を任せるべき後継がいないのだとしたら、揃って国を開けるというのは。」
「そうか、お前たちは聞いていないか。後継はいる。まだ若いがな。」
ただ、アベルのその言葉には、オユキが首をかしげる。王太子妃は、確かにアベルに比べて若い事には違いないが、相応に歳を重ねた相手だ。その兄弟が社交、外交の場に出られないというのもなかなか考えにくいと。
「王太子妃様は長女で、魔国の王太子は実際には次男だ。今は長男扱いだが。」
「成程。」
アベルの言葉は、オユキにしてみれば頭痛の種以上の何物でもない。
「そういった流れがあるのであれば、カナリアさんが席を同じくしたこともあるでしょう。そうですね、配慮が必要になるかどうか。いえ、先代アルゼオ公爵経由でとするしかないでしょう。カナリアさんも、くれぐれも、私たちに直接という話はお受けしないように。例え相手が失われ立場を振りかざしたとしても。」
「ええと、よくわかりはしませんが、分かりました。そのような支持であるならば、マリーア公爵から言われている事でもありますので。」
「杞憂というには、まぁ、起こりうる事態の一つです。その相手が思いのほか高位である、精々その程度です。相手がいかに立場を振りかざそうとも、廃嫡されている、若しくは別の家を与えられているのであれば、公爵は同格ですからそれを盾としてください。」
「相変わらず、聡い事だな。」
「と、言いますか、その情報源が私としては気になりますが。」
アベルが当然のように口にした言葉、それは早々他国が、こうして物の行き来も情報の行き来も難しい環境で起こってよいものではない。こちらの王家が失敗したのか、失敗させたいものたちの策が上手く働いたのか。そもそも、そのような事も考えられぬものが多かったのか。
「ともかくこちらで暮らしているでしょうし、いくらか動機として思い当たり所もあります。どれが正解だとしても陸でも無い事態にしかなりません。対応できる方に任せる、無視をする、その辺りが妥当でしょう。」
そちらは、恐らく予想の範疇であれば、早々につっかけて来そうではある。
「予測の内、一つが正解であるなら魔術師ギルドに所属していそうなものですか。」
「そう言えば、噂を聞いたような。」
「となると、いよいよその程度の相手ですね。さて、後は、やはり外交的な部分ですね。かかわった以上は締結の折には同席とまでは言いませんが。」
「流石に顔は出してくれ。いや、自由に動き回る巫女でもある。神も降ろせる。正式に依頼が来るか。」
「そちらについては、両陛下ないし王家間でまずは腹案が詰められるでしょうから、それを待つとして。」
そこからさらに日程をいくらか考える。ダンジョンから得られる糧、それに対して感謝を捧げる祭りは、既にお試しとしての初回が終わるころ。
「戻れば、少しする頃には豊饒祭があるのでしたか。」
「そう言えば、そんな時期か。となると。」
そして、一同の視線が五穀豊穣を司る物に連なる相手に向かう。
「私たちの物は、私たちでやるわよ。」
「こちらでも、王都でも。任せる相手を選ぶ必要があると、そのような話でしたが。」
「声は通して置いたもの、向こうから来るわよ。」
「先に話だけはしておいてくれ。オユキ達の屋敷であれば、融通は利くがここはそうじゃない。」
「面倒な物ね。まぁ、近くまでくれば、向こうも吠えるでしょうから、その時に話をするわ。」
アイリスの予定、こちらで祖霊を祀る役を与える相手の話はいよいよ直近の物ではある。今後の予定に関係がない物ではあるのだが。
「その、部族も違うようですが、祀り方の作法などは。」
「ああ、その事。」
トモエとしても興味がある話題であるため、そちらについつい補則を求めてしまう。
「勿論祭祀としての事は難しいけれど、日々の事なら子供でも知ってるわよ。難しい事でもないもの。掃除と、供物と。その程度よ。どうしても肉を捧げる事が多いから、きちんとしなければならないのよね。」
「神前に生肉ですか。確かに、屋外で放置していいものではありませんが。」
「それも、自分たちで狩りに出て、その制限があるのよね。こちらであれば、流石に子供は無理かしら。まぁ、近縁種、恩恵を受ける種族も手伝うでしょうし。」
「それぞれに祀るべき祖が居られると思いますが。」
「祭祀の場を作れるものがいないんだもの。降臨祭みたいに特別な日であれば、そちらを優先するでしょうけれど、日々の感謝は与えてくれる祖に向ける物よ。」
いよいよ脱線が進み始めたため、オユキがそろそろと話を止める。あまり時間を使われてしまうと、なんだかんだで疲労がたまっているオユキが眠気に負けるというのが最たる理由だ。
「一先ず、確定している大きな出来事については、後もう一つ、月と安息へと向かう日取りでしょうか。」
「それなんだが、万一魔国の陛下が望まれれば。」
「ないとは言えませんが、それこそ門が出来てから、それでよいのではとも考えています。」
「どちらに傾いている。」
アベルから改めてせっつかれたため、オユキから己の考えとして。
「外交の話、内密の話をするのに王都では耳目も多いでしょう。互いに他の忙しなさも抱えるでしょう。何より、人員の差というあまりに明確な物が生まれる訳です。」
「一応、今回神国から随伴している者達が居るし、既に移動した物もいるが。」
「あくまで、前段階の交渉ですから。と、言いますか基本は挨拶だけでしょう。」
どうにも、その辺りは予想ばかりで、実情が分かる物ではない。それこそ、明日以降内々に魔国側から伝えられる事も出てくるだろう。
「神国に対して、まぁ、そうですね。アベルさんもそうです。先代アルゼオ公爵も。今回用意された使者よりも明らかに王家に近い存在がいる訳です。下手に交渉を始めてしまえば。」
「まぁ、こっちに話が回って来るな。で、実際の話を知らない俺たちとしては苦言を呈する必要が出ても困るか。」
「はい。恐らく、神国の陛下も門を前提として、互いにまずは顔を合わせた上で、そして、実際に魔国を見てきた者達から聞き取りを行って、そう考えているでしょう。」
結局、隣国とはいえ、これまでその実情を知っているものなど、アルゼオ公爵家以外にいなかったのだ。それも、過日のアルゼオ公爵の口ぶりを考えれば、送り出し、より細かく情報を集めるようになったのはそれこそここ数十年といった所であろう。つまり、外交をしようにも、両国で何かの約定を結ぶにしても、互いに互いの事などよくわかっていないのだ。
「基本として、魔石と食料。知識と魔道具。その辺りとなるでしょうが、王太子妃様の事もあります。いえ、話が逸れましたね。少なくとも、私は月と安息への道行きに、交渉を担当されると言いますか、前段階として互いの要求を付き合わせ、友好を深める方々が同行されると考えています。」
「いよいよ、護衛の計画も綿密にしなきゃならん。そうなるとそっちは流石に豊饒祭の後だな。」
さて、指折り数えてというほどでもないが、大きなものは一先ずその程度。
「細かいものとしては、それらに付随して、領都と王都に向かうくらいでしょうか。一応国事ではありますから、報告はいるでしょうし。」
「それは、どうだろうな。慣例では、それこそ使者を立ててになるが。」
「確かに、当主本人が逐一移動は難しかったでしょうが、門もありますし。」
アベルの頭には、まだ組み込まれていない予定として、それがある。
「ナザレアさんは、どうしましょうか。」
「今度ばかりは、長期、一年はお側に。ただ、増員は考えていただければと。家を整えて、オユキ様やトモエ様の身の回りまでとなると、流石に手が足りません。」
「それこそ、見覚えのある方が有難くはありますが。」
「タルヤあたりは、喜んで来そうなものだが。そう言えば、カナリアたちとの事は。」
「それはいよいよ公爵様の差配に任せる事になります。と言いますか、ここまで話したうえで言うようなものではないのですが。」
そして、一通りの大仕事が出ただろうというところでオユキがため息とともに話を締めくくる。
「私の予想は、事こういった物は外れるほうが多いのですよね。」
さて、オユキの呟きを笑って見る者と唸り声をあげる者。綺麗に分かれたものだ。
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