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【薔薇のパル】になった件
オブシディアンの煌めき
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暫く空を仰いだまま居ると、声をかけられた。
「考え事?」
気付くと傍にメイさんが立っていた。
「…うん。母さんからさっき電話があってさ、【薔薇のパル】が出来たって伝えたんだ。母さん青薔薇学園のOBだからさ。」
メイさんが俺の横に腰掛ける。
「それで?」
「紹介して欲しいって言われたから了承した。ただ、息子の恋人が男って知ったらどう思うかなって。」
「恋人って紹介してくれるの?」
「え?そりゃ勿論。」
「嬉しいな…ご両親に気に入って貰えるように頑張らなきゃ。」
ベンチに置いた俺の手の甲にメイさんの掌が重ねられる。
「…御形くんのご両親なら、きっと心配ないよ。」
「…うん。そうだな。」
メイさんがさらりと指先で手の甲を撫でる。
メイさんへ視線をやると、膝に小さな紙袋を乗せていた。
「それ、用事のやつ?」
「うん。」
メイさんが紙袋から掌サイズのジュエリーケースを取り出した。
「御形くん目閉じて。」
「え?うん。」
言われた通りに目を綴じると、チャリっと音がして胸元にコツリと何かが当たる感覚がした。
「もう開けていいよ。」
ゆっくりと目を開く、メイさんが満足気に俺の胸元を見ていたのでそちらへ視線をやる。
「ネックレス…?」
「そう、俺と色違いのやつ。」
メイさんが自分の胸元にあるネックレスを摘んで見せる。
俺も胸元へ手をやりペンダントトップを掌に乗せる、黒色のそれはメイさんと一緒のつるりとした表面に陽の光が当たり艶々と光って綺麗だ。
「御形くんのはオブシディアン、俺のはアマゾナイトって言うんだよ。」
「オブシディアンにアマゾナイト…綺麗だな。」
「俺からのプレゼント、受け取ってくれる?」
「…勿論、大事にする。ありがとう。」
「やったっ!こちらこそありがとう~!」
ぎゅうと抱き締められるとペンダントトップ同士が触れ合いカチャリと音を鳴らした。
俺も外だという事は思考の端に追いやり、抱き締め返した。
「さて、じゃあ次行こうか!」
「次はどこ?」
「ふふっ着いてからのお楽しみ!」
そう言って腕を引かれるまま立ち上がった。
またバスに乗り二十分程揺られて着いたのは…
「水族館だ…。」
「せいかーい!ほら、行こ!」
再び腕を引かれながら、イルカやカクレクマノミなどが可愛く描かれたゲートを潜る。
チケットを買い入館すると先ず目に入って来たのは、天井から吊るされたクジラの骨格標本だった。
「うわぁ…デカい…。」
「これ本物なんだよォ~。」
「ホント!?すげぇ…。」
それなりにいる人を避けながら進むと最初のコーナーは淡水魚だった両側にある、川を模した水槽の中をドジョウやアユが泳いでいる。
「あ、鰻だ…久しぶりに食べたいな…。」
「ははっ!鰻は無いかもだけど、レストランが中にあるから後で行こうか。」
「うん。」
淡水魚コーナーを抜けると次は熱帯魚だった、熱帯魚はベタくらいしか知らないがカラフルで綺麗だな。
こりゃ飼う人がいっぱいいる訳だ。
俺は飼うなら犬か猫だけど。
将来独り立ちしたら飼おう、一匹は可哀想だから二匹がいいな。
そんな事を考えながら、チラリとメイさんの横顔を盗み見る。
…いつかメイさんと暮らせる日も来るのかな、俺は夢想する。
毎日同じベッドで眠り、一緒に起きて朝食をとり一緒に出勤する。
休日はこうやって出かけるのもいいが、家でゆっくりするのもいい。
27年間で手に入れられなかったものだ。
「御形くん、どうかした?」
メイさんに声をかけられハッとする。
だいぶんボーッと考え事をしてしまっていた。
「いや…少し考え事してたみたいだ、ごめん。」
「いいよいいよ、気にしないで。次行こうか。」
メイさんから手を伸ばされ、それを取る。
恋人繋ぎのそれに心が擽ったくなる、こうやっていつまでもメイさんと居られたらいいのに。
そう願いながら歩を進めた。
次のコーナーはクラゲだった。
壁に沿った水槽は色々な種類のクラゲが展示されており、中央には丸い大きな水槽がありクラゲがライトアップされている。
「俺クラゲ好きなんだよな、後ジンベイザメ。」
「へェ~いいねェ~。いつかジンベイザメ見に行こっか。」
「えっ!本当に!?」
「うん!長期休みにでも行こう!」
長期休みも一緒にいてくれるんだ…ぐわぁっと幸福感が心に満ちる。
幸福感を噛み締めながら、クラゲの水槽を暫く眺めているとメイさんに手を引かれた。
「そろそろいい時間だし、レストラン行こうか?」
「そうだな、俺もお腹空いてきたとこ。」
メイさんのエスコートで来た道を戻ると、クジラの骨格標本の広場に出た。
最初に入って来た時は骨格標本に目を奪われて気付かなかったが、お土産売り場とレストランが並んでいた。
レストランへ入ると店員さんが来て席へ通される、席へつくとメニューを開き二人で目を通した。
二人共海鮮丼を頼み、水族館で魚を食べるという背徳感を味わった。
会計を終わらせ、来た道を引き返す。
クラゲコーナーを抜けるとそこはアーチ水槽の通路だった。
色とりどりの海水魚が泳ぎ回っている。
「凄い…海の中みたいだ…。」
「凄いっしょ?あ、ほら!あそこにイルカがいる!」
「あ、ホントだ…綺麗だな。」
やや傾斜のある長いアーチ水槽の中を歩いて行く。
長い通路を抜けると次は四方を水槽で囲まれ、中央には円柱の大きな水槽があった。
四方の水槽は先程のアーチ水槽と繋がっている様でイルカが泡を吐いて遊んでいた。
中央の大きな円柱の水槽にはマグロとマイワシが泳いでいた。
この水槽は地上と繋がっているのか、陽の光が差し込みマイワシのサーディンランをキラキラと照らしている。
その後は北極コーナーで丸々としたアザラシを見たり、ラッコの餌やりを見たり、熱帯雨林コーナーやらを見て楽しんだ。
「あ~イルカのショー逃しちゃったね。」
「色々見て回ったから仕方ないね。」
「今度来た時は見ようね!」
「うん、いいね。」
次もあるのだなと期待に胸を踊らせた。
帰りしな、お土産売り場でお揃いのイルカのストラップを買って俺達は水族館を出、大通りを歩いていた。
すっかりと空は橙に染まり、一日の終わりが近いと告げてきていた。
隣を歩いていたメイさんが大きく一歩を踏み出し俺を正面から見つめる。
「晩ご飯の前に映画でも観ようか。」
俺が一つ頷くとメイさんが俺の頭を撫で、手を引き歩き出した。
メイさんは何でもいいと言うので、俺は一つの映画を選んだ。
映画の半券を買い、ポップコーンとジュースも買った。
メイさんはメロンソーダ、俺はミルクティーだ。
選んだ映画は珍しく恋愛モノで、トラックに撥ねられた猫が人間の女の子に生まれ変わり、元飼い主の男の子の元へ戻り紆余曲折ありながら愛を深め合っていく物語だ。
俺は気付けばポロポロと涙を流しており、小さく鼻を啜った。
映画に入ってからも繋がれていた手がきゅっと強く握られ、メイさんに気付かれてしまったと少し恥ずかしくなる。
何となく選んだ映画だったが、少し自分と重ねてしまった。
映画が終わりエンドロールが流れる、俺はサコッシュからハンカチを取り出し涙を拭った。
俺達はエンドロールが終わりホールが明るくなる迄、席を立たなかった。
「いい映画だったね。」
「ん、恋愛モノなんて全然観たことないけどよかった…。」
その後、雑貨屋に寄って貰い写真立てを買いバスで学園前まで乗りAmberで晩ご飯を食べ寮に帰った。
今日もメイさんは部屋まで送ってくれて、ジュエリーケースが入った紙袋を渡されキスをして別れた。
俺は部屋に入りコートを脱ぎクローゼットへしまい、ジュエリーケースと写真立ては本棚の上へ飾り、学習机の前に座り残っていた宿題を片付け始める。
明日からまた学校だ、ネックレスに手をやり今日の余韻に浸りながらも机へ向き直った。
「考え事?」
気付くと傍にメイさんが立っていた。
「…うん。母さんからさっき電話があってさ、【薔薇のパル】が出来たって伝えたんだ。母さん青薔薇学園のOBだからさ。」
メイさんが俺の横に腰掛ける。
「それで?」
「紹介して欲しいって言われたから了承した。ただ、息子の恋人が男って知ったらどう思うかなって。」
「恋人って紹介してくれるの?」
「え?そりゃ勿論。」
「嬉しいな…ご両親に気に入って貰えるように頑張らなきゃ。」
ベンチに置いた俺の手の甲にメイさんの掌が重ねられる。
「…御形くんのご両親なら、きっと心配ないよ。」
「…うん。そうだな。」
メイさんがさらりと指先で手の甲を撫でる。
メイさんへ視線をやると、膝に小さな紙袋を乗せていた。
「それ、用事のやつ?」
「うん。」
メイさんが紙袋から掌サイズのジュエリーケースを取り出した。
「御形くん目閉じて。」
「え?うん。」
言われた通りに目を綴じると、チャリっと音がして胸元にコツリと何かが当たる感覚がした。
「もう開けていいよ。」
ゆっくりと目を開く、メイさんが満足気に俺の胸元を見ていたのでそちらへ視線をやる。
「ネックレス…?」
「そう、俺と色違いのやつ。」
メイさんが自分の胸元にあるネックレスを摘んで見せる。
俺も胸元へ手をやりペンダントトップを掌に乗せる、黒色のそれはメイさんと一緒のつるりとした表面に陽の光が当たり艶々と光って綺麗だ。
「御形くんのはオブシディアン、俺のはアマゾナイトって言うんだよ。」
「オブシディアンにアマゾナイト…綺麗だな。」
「俺からのプレゼント、受け取ってくれる?」
「…勿論、大事にする。ありがとう。」
「やったっ!こちらこそありがとう~!」
ぎゅうと抱き締められるとペンダントトップ同士が触れ合いカチャリと音を鳴らした。
俺も外だという事は思考の端に追いやり、抱き締め返した。
「さて、じゃあ次行こうか!」
「次はどこ?」
「ふふっ着いてからのお楽しみ!」
そう言って腕を引かれるまま立ち上がった。
またバスに乗り二十分程揺られて着いたのは…
「水族館だ…。」
「せいかーい!ほら、行こ!」
再び腕を引かれながら、イルカやカクレクマノミなどが可愛く描かれたゲートを潜る。
チケットを買い入館すると先ず目に入って来たのは、天井から吊るされたクジラの骨格標本だった。
「うわぁ…デカい…。」
「これ本物なんだよォ~。」
「ホント!?すげぇ…。」
それなりにいる人を避けながら進むと最初のコーナーは淡水魚だった両側にある、川を模した水槽の中をドジョウやアユが泳いでいる。
「あ、鰻だ…久しぶりに食べたいな…。」
「ははっ!鰻は無いかもだけど、レストランが中にあるから後で行こうか。」
「うん。」
淡水魚コーナーを抜けると次は熱帯魚だった、熱帯魚はベタくらいしか知らないがカラフルで綺麗だな。
こりゃ飼う人がいっぱいいる訳だ。
俺は飼うなら犬か猫だけど。
将来独り立ちしたら飼おう、一匹は可哀想だから二匹がいいな。
そんな事を考えながら、チラリとメイさんの横顔を盗み見る。
…いつかメイさんと暮らせる日も来るのかな、俺は夢想する。
毎日同じベッドで眠り、一緒に起きて朝食をとり一緒に出勤する。
休日はこうやって出かけるのもいいが、家でゆっくりするのもいい。
27年間で手に入れられなかったものだ。
「御形くん、どうかした?」
メイさんに声をかけられハッとする。
だいぶんボーッと考え事をしてしまっていた。
「いや…少し考え事してたみたいだ、ごめん。」
「いいよいいよ、気にしないで。次行こうか。」
メイさんから手を伸ばされ、それを取る。
恋人繋ぎのそれに心が擽ったくなる、こうやっていつまでもメイさんと居られたらいいのに。
そう願いながら歩を進めた。
次のコーナーはクラゲだった。
壁に沿った水槽は色々な種類のクラゲが展示されており、中央には丸い大きな水槽がありクラゲがライトアップされている。
「俺クラゲ好きなんだよな、後ジンベイザメ。」
「へェ~いいねェ~。いつかジンベイザメ見に行こっか。」
「えっ!本当に!?」
「うん!長期休みにでも行こう!」
長期休みも一緒にいてくれるんだ…ぐわぁっと幸福感が心に満ちる。
幸福感を噛み締めながら、クラゲの水槽を暫く眺めているとメイさんに手を引かれた。
「そろそろいい時間だし、レストラン行こうか?」
「そうだな、俺もお腹空いてきたとこ。」
メイさんのエスコートで来た道を戻ると、クジラの骨格標本の広場に出た。
最初に入って来た時は骨格標本に目を奪われて気付かなかったが、お土産売り場とレストランが並んでいた。
レストランへ入ると店員さんが来て席へ通される、席へつくとメニューを開き二人で目を通した。
二人共海鮮丼を頼み、水族館で魚を食べるという背徳感を味わった。
会計を終わらせ、来た道を引き返す。
クラゲコーナーを抜けるとそこはアーチ水槽の通路だった。
色とりどりの海水魚が泳ぎ回っている。
「凄い…海の中みたいだ…。」
「凄いっしょ?あ、ほら!あそこにイルカがいる!」
「あ、ホントだ…綺麗だな。」
やや傾斜のある長いアーチ水槽の中を歩いて行く。
長い通路を抜けると次は四方を水槽で囲まれ、中央には円柱の大きな水槽があった。
四方の水槽は先程のアーチ水槽と繋がっている様でイルカが泡を吐いて遊んでいた。
中央の大きな円柱の水槽にはマグロとマイワシが泳いでいた。
この水槽は地上と繋がっているのか、陽の光が差し込みマイワシのサーディンランをキラキラと照らしている。
その後は北極コーナーで丸々としたアザラシを見たり、ラッコの餌やりを見たり、熱帯雨林コーナーやらを見て楽しんだ。
「あ~イルカのショー逃しちゃったね。」
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「うん、いいね。」
次もあるのだなと期待に胸を踊らせた。
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隣を歩いていたメイさんが大きく一歩を踏み出し俺を正面から見つめる。
「晩ご飯の前に映画でも観ようか。」
俺が一つ頷くとメイさんが俺の頭を撫で、手を引き歩き出した。
メイさんは何でもいいと言うので、俺は一つの映画を選んだ。
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メイさんはメロンソーダ、俺はミルクティーだ。
選んだ映画は珍しく恋愛モノで、トラックに撥ねられた猫が人間の女の子に生まれ変わり、元飼い主の男の子の元へ戻り紆余曲折ありながら愛を深め合っていく物語だ。
俺は気付けばポロポロと涙を流しており、小さく鼻を啜った。
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何となく選んだ映画だったが、少し自分と重ねてしまった。
映画が終わりエンドロールが流れる、俺はサコッシュからハンカチを取り出し涙を拭った。
俺達はエンドロールが終わりホールが明るくなる迄、席を立たなかった。
「いい映画だったね。」
「ん、恋愛モノなんて全然観たことないけどよかった…。」
その後、雑貨屋に寄って貰い写真立てを買いバスで学園前まで乗りAmberで晩ご飯を食べ寮に帰った。
今日もメイさんは部屋まで送ってくれて、ジュエリーケースが入った紙袋を渡されキスをして別れた。
俺は部屋に入りコートを脱ぎクローゼットへしまい、ジュエリーケースと写真立ては本棚の上へ飾り、学習机の前に座り残っていた宿題を片付け始める。
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