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第3話

12・久しぶりの青野

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「あ、え、ええと……久しぶり?」

 慌てて取り繕うような笑顔を浮かべた俺に、青野は「はぁ」と気怠げな声を洩らした。

「言われてみればそうっすね」
「だろ? 1週間ぶりくらい?」
「そうでしたっけ」

 いかにも「そんなのどうでもいい」って態度に、ちょっとだけ胸がきしむ。
 そりゃ、たしかに俺ら別れたけどさ。声かけてきたのそっちだろ? だったら、もうちょっとにこやかに接してくれよ。あっちの世界の青野なんて、一度も付き合ったことないのにめちゃくちゃ丁寧だぞ。──まあ、俺が「カノジョのお兄さん」だからなんだろうけれど。

「何やってたんっすか」

 そのままいなくなるかと思いきや、青野は仏頂面のまま階段をのぼってきた。

「ああ、ええと──スマホを、見てた?」
「なんで疑問形なんっすか」

 青野の眼差しが、少しやわらかくなる。その瞳の美しさに、思わず息をのんだ。
 なんだ、これ……窓から差し込む夕日のせいか? 緑とオレンジなんて一見ミスマッチっぽそうなのに、今、俺が見ている青野の瞳はハチミツを固めた飴玉のようだ。

(きれい……それに、うまそう……)

 つい、まじまじと見つめてしまったせいか、青野はいったん立ち止まると「なんっすか」と眉をひそめた。

「いや、あの……きれいだなって」
「なにがですか」
「お前の──目?」

 しまった、また疑問形になっちまった。なのに青野はもう笑わない。それどころか「からかってるんですか」と不快そうに目を細めてしまう。
 ああ、もったいない。せっかくのきれいな瞳、もうちょっと見ていたいのに。

「からかってねーよ、本気だって!」
「だとしてもどうでもいいです。あんたに『きれい』とか言われても、嬉しくもなんともないですし」

 青野は素っ気なく言い放つと、俺の手元に目を向けた。

「何見てたんっすか」
「だから、スマホ……」
「それは聞きました。動画? 写真?」
「ああ、写真──」

 そこまで言いかけて、ハッとした。
 ヤバい、さっきまで俺が見てたの、お前とのキス写真だった。

「あ、その……ええと……メッセージアプリとか?」
「嘘ですね」
「嘘じゃねーって」
「じゃあ、なんで『写真』って言いかけたんっすか」
「ただの勘違い! 見てねーよ、写真なんて!」
「だったらスマホを貸してください」
「はぁっ?」
「『写真を見てなかった』ってことを確認しますんで」
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