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第7話

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ようやく追いついた俺は、未だ立ち止まろうとしない背中に、勢いまかせに飛びついた。
青野の身体が、驚いたように跳ねた。まあ、そうなるよな。今の俺、「抱きついた」っていうより「追突した」って感じだったし。

「待って……青野、頼むから」

今から言うことを聞いて。
俺の本当の気持ちを受け取って。
息を弾ませながらそう訴えると、ようやく青野はこちらを振り向いた。
なにかに怯えたような、いたいけな目。その揺れる緑色に気づいたとたん、俺のなかの何かが弾けた。
青野の胸ぐらを掴み、力まかせに引き寄せる。
唇と唇がぶつかった。これまた「キス」というよりは「衝突」のような行為。でも、許してくれ。俺、ちゃんとキスしたことがないんだ。

「な……つき、さん?」

青野の口がはくはくと動く。まるで空気を求める魚みたいに。

「唾」
「……え」
「唾、つけてやった」

なんでって?
そんなの決まってる。

「お前を、俺のものにしたかったから」

だから落ち込むな。自分を責めるな。
俺とお前は、同じ気持ちだから。
目を閉じたのは「同意」のつもりだったから。
青野の眉間にしわが寄る。泣くのを堪えるように顔を歪めたかと思うと、けっこうな力で両頬を挟まれた。まるで「逃がさない」と言わんばかりに。
そこからのキス。
噛みつくような激しさ。
ああ、くそ。
こいつ、絶対慣れてやがる。
でも、それでいいのかも。俺、まだまだ下手くそだし。

そのまま何度もキスをした。ここが駅前だってことも忘れて、青野が「今日の塾、サボりたいです」ってボヤくまで。
もちろん、そんなことはさせなかったけど、気持ちはすごくよくわかった。

(同じだよ、青野)

俺も、もっともっとお前とキスをしたい。
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