16 / 58
十五話
しおりを挟む
「キャロットケーキとニンジンの蜂蜜漬けです」
これは態となのか⁉︎ いやギーの事だ、絶対にそうに違いない。分かっていてやっている。
げんなりしながら部屋に戻ると、ギーがお茶と茶請けを準備して待っていた。
「……」
つい今し方、食してきたばかりだ。
最近マンフレットは、ニンジンを克服しつつあると認めたくないが感じていた。だがまだ早かった……。蜂蜜漬けは自分には難易度が高過ぎる。
「本日はエーファ様特製ニンジンの蜂蜜漬け付きです」
「見れば分かる」
何故二回言った⁉︎ 苛つきギーを睨むが、彼は相変わらずの澄まし顔で全く意に介さない。
正直腹も膨れており、最早ニンジン云々ではなく何も口にしたくない。だが出されたものは仕方がないとマンフレットは長椅子に座るり溜息を吐くとケーキに手を付ける。
「マンフレット様」
「今度は何だ」
「リューク様から手紙が届いております」
送り主の名に今度は違う溜息を吐いた。
噂をすれば何とやら。別にマンフレットが噂をしていた訳ではないが、先程レクスが余計な事をエーファに吹き込んでいた。
「……捨てておいてくれ」
「宜しいのですか?」
「構わない」
「承知致しました」
弟とはもう関わらないと決めている。両親の手前縁までは切らないでいるが、それもマンフレットが家督を継いだ後は正直分からない。
それにしても最近レクスの訪問が度を超している。幾ら何でも頻度が多過ぎるだろう。しかも自分に会いに来るならまだしも、人の妻に会う事を目的としている事は歴然だ。不躾も甚だしい。故に先程まだお茶の途中だったであろうレクスを強引に引き摺って行きそのまま馬車に押し込め帰らせた。ついでに暫く来るなと釘を刺しておく事も忘れない。
『お口に、合いましたか?』
その後、中庭で待たせていたエーファの元へと戻ると残っていたキャロットケーキとニンジンの蜂蜜漬けを無心で完食した。すると彼女が恐る恐る訊ねてくる。無論口に合うどころの騒ぎではない。ケーキは兎も角、蜂蜜漬けは死ぬかと思った。
『問題ない』
だが流石にそんな情けない返答は出来ない。マンフレットの威信に関わるので、何となしに淡々と一言だけ返す。するとエーファが、笑った。ぎこちなさは感じるが、確かにマンフレットに対して笑ったのだ。
「何か良い事でもございましたか?」
ギーの声に我に返る。どうやらフォークを手にしたまま意識を飛ばしていたらしい。
「別段変わった事はない」
「左様ですか。マンフレット様の顔がダラシなく見えましたが、きっと私の勘違いですね」
「っ……」
思わず手からフォークを落としそうになった。
その日マンフレットは、食べ過ぎで腹を下した事は言うまでもない。
これは態となのか⁉︎ いやギーの事だ、絶対にそうに違いない。分かっていてやっている。
げんなりしながら部屋に戻ると、ギーがお茶と茶請けを準備して待っていた。
「……」
つい今し方、食してきたばかりだ。
最近マンフレットは、ニンジンを克服しつつあると認めたくないが感じていた。だがまだ早かった……。蜂蜜漬けは自分には難易度が高過ぎる。
「本日はエーファ様特製ニンジンの蜂蜜漬け付きです」
「見れば分かる」
何故二回言った⁉︎ 苛つきギーを睨むが、彼は相変わらずの澄まし顔で全く意に介さない。
正直腹も膨れており、最早ニンジン云々ではなく何も口にしたくない。だが出されたものは仕方がないとマンフレットは長椅子に座るり溜息を吐くとケーキに手を付ける。
「マンフレット様」
「今度は何だ」
「リューク様から手紙が届いております」
送り主の名に今度は違う溜息を吐いた。
噂をすれば何とやら。別にマンフレットが噂をしていた訳ではないが、先程レクスが余計な事をエーファに吹き込んでいた。
「……捨てておいてくれ」
「宜しいのですか?」
「構わない」
「承知致しました」
弟とはもう関わらないと決めている。両親の手前縁までは切らないでいるが、それもマンフレットが家督を継いだ後は正直分からない。
それにしても最近レクスの訪問が度を超している。幾ら何でも頻度が多過ぎるだろう。しかも自分に会いに来るならまだしも、人の妻に会う事を目的としている事は歴然だ。不躾も甚だしい。故に先程まだお茶の途中だったであろうレクスを強引に引き摺って行きそのまま馬車に押し込め帰らせた。ついでに暫く来るなと釘を刺しておく事も忘れない。
『お口に、合いましたか?』
その後、中庭で待たせていたエーファの元へと戻ると残っていたキャロットケーキとニンジンの蜂蜜漬けを無心で完食した。すると彼女が恐る恐る訊ねてくる。無論口に合うどころの騒ぎではない。ケーキは兎も角、蜂蜜漬けは死ぬかと思った。
『問題ない』
だが流石にそんな情けない返答は出来ない。マンフレットの威信に関わるので、何となしに淡々と一言だけ返す。するとエーファが、笑った。ぎこちなさは感じるが、確かにマンフレットに対して笑ったのだ。
「何か良い事でもございましたか?」
ギーの声に我に返る。どうやらフォークを手にしたまま意識を飛ばしていたらしい。
「別段変わった事はない」
「左様ですか。マンフレット様の顔がダラシなく見えましたが、きっと私の勘違いですね」
「っ……」
思わず手からフォークを落としそうになった。
その日マンフレットは、食べ過ぎで腹を下した事は言うまでもない。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
2,980
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる