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彼女が手に入れたモノ

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彼女は半信半疑ながらも、ネックレスを首にかけた。

「キレイだなぁ」

自分の青白い肌に、ネックレスは映えた。

特にクリスタルの中に入っている、小さな赤い石がとても美しく見える。

「見ているだけでも良いものよね」

見ているだけで、心が熱くなる。

その熱が体に満ちていくようだ。

彼女はネックレスを付けたまま、眠った。

翌朝、予想以上に目覚めが良かった。

そして学校へ行く。

するとまるで疲れを感じず、最後まで授業が受けられた。

先生や友達はびっくりしていたが、彼女自身が一番驚いていた。

家に帰り、両親にそのことを報告すると、涙を浮かべながら喜んでくれた。

「コレのおかげかな?」

照れ笑いを浮かべながら、彼女はネックレスに触れた。

学校に行く時も、制服の下に隠しながら付けていった。

今、部屋で1人いる時も身に付けている。

鏡でネックレスをじっくり見つめる。

「…とと。勉強しなきゃね」

名残惜しくも鏡の前から離れ、机に向かった。

不思議とまだ元気で、勉強も進んだ。

夜、寝る時もずっと身に付けたままだった。 

最初は恐る恐るだったが、今ではネックレスの効果が信じられた。

正直言えば、半信半疑だった。

でも今は疑いようがない。

彼女は毎日、最後まで授業に出れるようになった。

体育にも参加できるようになり、好成績を出したことから、体育部の人達から勧誘を受けるまでになった。

勉強は元々得意だったのだが、今まではテストを受けることができなかった。

いつも体調が悪く、なかなか受けることができなかったのだ。

しかし今はテストもみんなと受けられることができ、結果も良かった。

周りから注目されてきたせいか、性格が明るくなった。

友達に面倒をかけることもなく遊べるようになり、両親は激的な変化に驚きつつも、喜んでくれた。

彼女は世界が明るく、そして色が溢れていることに気付いた。

今まではモノクロのように見えていた世界が、こんなにも楽しいものだと生まれて始めて知ったのだ。

彼女が明るく、活き活きとした生活を送っている中で、1つ変化しているモノがあった。

それはネックレスだ。

最初は小さかった赤いハートの石。

しかし今ではその大きさが倍になっていた。 

「まあ…コレはコレでキレイよね」

彼女は鏡に映ったネックレスを見て、呟いた。

クリスタルが占める面積が狭くなったものの、赤い石は美しさを放っていた。

「うん。わたし、この赤い石の方が好きだし、良いか」

彼女はあまり深く考えず、そのまま眠ることにした。

…だが、平穏な日々も長くは続かなかった。

それまで彼女は自分の体質に負い目を感じ、控え目な性格をしていた。

だが元気になるにつれ、性格も変わってきた。

元々周囲の人間は彼女に気をつかい、彼女を優先にしてきた。

それが元気になった今でも、同じことを彼女は望んだ。

つまり自分の意見を最優先にするということを、さも当たり前のように言うのだ。

最初は周囲の人間も苦笑いで受け入れてきた。

だが彼女が元気になれば、それもうっとおしく思ってくる。

特に両親以外の人間は、不満が強く募っていった。

元気になった当初は近くにいた人々も、だんだんと離れていった。

彼女はそれに気付きながらも、考え方を変えようとはしなかった。

だがある日、とうとう彼女はクラスメートとトラブルを起こした。

トラブルの原因は些細なことだった。

しかし彼女はあくまでも自分が悪くないと言い張るのみ。 

クラスメートは彼女への不満が溜まっており、譲らなくなっていった。

やがては手が出るようになり、二人は取っ組み合いをはじめた。

しかし、彼女は感情を昂らせてしまっていた。

彼女の制服の下から赤い石が光り輝くのを、彼女自身気付いていなかった。

完全に頭に血を上らせてしまっていたのだ。

クラスメートの腕を掴み、そのまま窓の方面に投げた。

彼女にしてみては、ただ窓にぶつかればいいと思っていた。

だがクラスメートの体は勢い良く吹っ飛び、ガラス窓を割って、外へ投げ出された。

ガラスの割れる音と、悲鳴が教室中に響き渡る。

生々しい血が窓際にくっきり残った。

「…ウソ…。なん、で?」

彼女は信じられないという顔で、自分の両手を見た。

その様子をクラスメート達は遠巻きに、怯えた表情で見つめていた。

幸いにも教室は二階にあり、落ちたクラスメートは植えてあった植物がクッションとなって、軽症で済んだ。

だが血の量は半端なく、彼女は先生から呼び出された。

しかし自分がやったこととは信じられず、戸惑うばかり。

彼女は結局、謹慎処分となった。 
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