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妹を愛した男は、もうじき消えます。<前>

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「すまない、レミー。俺との婚約こんやくの話、無かったことにしてくれ。」

「それは、どうして…?」

「実は…君のいもうとを、好きになってしまった。」

「そうなの…妹を。だったら、仕方しかたないわね。」

「許して、くれるのか…?」

「妹は、可愛かわいいもの。」

 そう、私の妹は可愛い。
 誰が見ても、可愛い顔をしている。

 妹を見て、かれない男はまず居ない。
 私の遠い親戚しんせきも、私の趣味友達しゅみともだちも、私の知り合いも、みんなそうだった。

 今回は、恋人か。

 あなた、あのことは、とうとう…。
 いや、もうそれはいい。

 でも、どの男も馬鹿ばかね。

 妹の秘密ひみつ、何も知らないくせに。

 あの子は…。

※※※

「お帰りなさい、お姉様。」

「ただいま、ミレー。」

 妹のミレー。

 彼女は、私の双子ふたごの妹だ。

「お客様が、来てたのね。」

「そうよ。私のことが好きになったって、会いに来てくれたの。あの人は…そうそう、お姉様の恋人の方。」

「…元よ。」

「そうなの?私、またやっちゃった…。」

かまわないわ。それで、あの人は?」

「えっとね…少し遊んだら、帰ったわ。」

「そう。」

※※※

 あの人、もう来ないわね。
 いや、もう来れないだろう。
 彼は、もうじき姿を消すわ。

 私は、床に散らばる服とはだかの妹を見て、それを確信かくしんした。

 妹は、自分の顔を最大限に利用する。
 そうしておびき寄せた男を、次々に捕食ほしょくしていくのだ。

「…あの人、美味おいしくなかった?」

「分かんない。私を愛してるなら、あなたの身体からだの一部を私にささげて?そう言ったら、真っ青になちゃった。どうか、髪の毛で許してくれっていうのよ?つまんないから、かじり付いてやった。そしたら…もっと真っ青になっちゃって。それで…いろいろ遊んだ後、彼は帰ったわ。」

「…真面目な顔であなたがそう言えば、みんな本気にするわね。こんなこと…あなたも、そろそろお終いにしなさいね。」

「そうね…もうそろそろ、頃合ころあいかな。」

 そう言ってミレーは、ベットの上に散らばる髪のたばをヒョイとつかみ上げ笑った。

「ミレー。あなたに私の一番大事なものは、あげられないわ。…どうしても、ね。」
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