婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン

待ち人来たる

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 日数だけが悪戯に過ぎていく。
 もう三月も終わり、気づけば四月に突入していた。

 ユーグレンは毎日、何通も鮭の人宛てにリンク経由で手紙を出していた。
 が、やはり時間が経つと戻って来てしまうことが続いている。

 最近では少しでも空いた時間があれば書いては送っていた。

(仮に届いたとしても、今ヨシュアのいる場所によってはこちらに来られぬかもしれぬし)

 では、親戚のカズンはどうか。そう考えるも、まだ冒険者ランクBだという彼が来て何か事態が変わるかといえば、難しいはずだ。
 Aランクで一国の王太子であるユーグレンすらお手上げなのだ。
 故郷で受けていた王族教育や王太子教育のお陰で平静をできるだけ保っているが、内面では混乱に次ぐ混乱で泣き出したい気分だった。



 ダンジョン深奥でラスボス化したルシウスはいよいよ危険だった。

 自分の意識を保てなくなってきている。このまま意識が完全にダンジョンに乗っ取られたら、本当に魔物化して、無差別に探索者たちを攻撃して惨殺しかねない。
 まさに恐怖の大魔王が完成してしまう。

「か、かくなる上は……」

 今度は脚を斬り落とそうとするルシウスを、アイシャたちは必死に押し留めていた。
 特にユキノだ。真っ白ふわふわ、もふもふの前脚や全身でルシウスを胸に抱え込んで聖剣を振るえないよう拘束しては振り払われ、を繰り返している。

「ユキノ君、頑張って!」
「ピュイッ!(が、がんばってるけど……そ、そろそろむりかもー!)」
「ユキノ君ーっ!」

 そのユキノも限界が近い。ルシウスラスボスからは本人の随獣のため攻撃こそされないが、ルシウスがダンジョンに囚われた最初の日からずっと側にいて、まったく休憩していない。
 竜種だけあって耐久度は高かったが、限度がある。

「ピゥ?(あれ? 誰か来る?)」

 ルシウスをもふもふの胸元に抱え込んだまま、ユキノが鼻をひくひくと震わせた。

「また侵入者かユキノ君!?」

 慌ててユーグレンが入口方向を見る。
 まだ誰の、何の気配もない。

 しばらく、そのまま入口方面を注意しつつ、ルシウスの自傷を止めてを繰り返していると。

 深奥の間に続く道の遠くから、足音が聞こえてきた。

「誰だ……まさかまだノーダ男爵の残党とか!?」
「いいえ。この気配は」
「……ようやくか。待ちくたびれたぞ。やっと手紙が届いたか」

 魔力値が高い分、他者の魔力に敏感なアイシャとユーグレンの顔に安堵の色が広がる。
 え、誰だ、とトオンが聞き返そうとしたとき、ついに待ち人が現れた。



「ルシウス様、ご無事ですか!?」
「叔父様!」

 黄金の装飾付きの、黒い軍服姿の青年はアイシャたちの親友。
 以前には無かった黒縁の眼鏡をかけた黒髪黒目で、ユーグレンとよく似た端正な顔立ちだ。

 隣に連れ添う、ミスラル銀の装飾にネイビーのライン入りの白い軍装の青年は。

 青銀の髪に湖面の水色の瞳。虹彩の中にはジューアと同じ銀の花が咲いている。
 ルシウスやユキレラとほとんど同じ顔の、リースト一族の血筋特有の麗しの彼は。

「カズン!」
「それに……」

「「鮭の人!」」

 ついに彼はカズンに辿り着いたのだ。



「よ、ヨシュアあああ……っ」

 まさかここでその姿を見ることになるとは思わなかった。
 その隣には心配げにこちらを窺うカズンが。
 もうルシウスは本気で泣いた。マジ泣きだ。年も外聞も忘れて、麗しの顔を皺くちゃにしている。

 対する甥のヨシュアは、感動どころか満身創痍の叔父に呆れ顔だ。むしろドン引きしている様子でちょっと顔を背けていた。

「うわ。叔父様が怪我してるとこ初めて見た。何これ世界の終わりでも来るんですか」
「ばか、ヨシュア! ここは心配するところだぞ!」

 と隣のカズンにたしなめるように脇腹を突っつかれて、渋々ルシウスに向き直った。

「ルシウス叔父様。あなた、いったい何をやってるんですか?」
「ヨシュア……はは、みっともないところを見せて済まない」
「ヨシュアさん! まずは話を聞いて!」

 叔父と甥の感動(?)の再会は後回しだ。アイシャはすかさずカズンと鮭の人に駆け寄って、状況を説明した。

 事情を一通り聞き終わったヨシュアは「うん、わかった」と軽く頷いた。

「確かに叔父様は強い。世界最強と言われても驚きません。でもねここだけの話、オレは幼い頃からずっと、この人こいつを倒すにはどうしたらいいかって。……シミュレーションしてたんですよね」

 ついに好機到来、とばかりに獲物を見つけた捕食者のような顔でヨシュアは笑っている。

「我が最愛の甥に倒されるなら、このルシウス、人生に悔いはない……」

 覚悟を決めてキリッと、やつれていた顔を引き締めるルシウスだったけれども。

「なに良い話に持っていこうとしてるんですか、叔父様。残念ですけど今回はあなたを倒す必要はありません」

 え? と皆が困惑する中、ヨシュアはルシウスに聖剣をこちら側へ放るよう指示する。
 躊躇いながら、ルシウスが甥に魔法剣を投げつけた。

 ラスボス化しているため莫大な魔力をまとった攻撃になってしまっていたが、ヨシュアは難なく片手で受け止めて、一度床に刺してその場に固定した。

「どうするんだ、ヨシュア」
「今、この世界に叔父様と同等の等価品など存在しません。聖剣を本人の分身扱いにするのが手っ取り早い」





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