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第一章

 秋の季節37

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  静かな図書館の中で、フィリアは壁ドンをされていた。



 そう、一時期流行った、壁ドン。



 壁ドーン。



 いや、図書館の本棚だから棚ドンか。



 そう、フィリアの頭の中で混乱するほどの出来事である。



 フィリアの顎をすくわれ、上を向かされる。



 これは!?



 顎クイまでされてしまった!?



「いつまで呆けているんだ。」



 そう言ったのは、ロイであり、無表情のままフィリアに言った。



「あの、ロイ様。この状況は一体、、、。」



「聞きたことがいくつかあるから、逃げないようにな。まず、一つ目だ。グリードさんと共に鍛錬をするという話はどうなった?あれから婚約者とダンスの練習をしろだの、プレゼントの選び方だの、訳のわからない事ばかりだ。」



「えっと、それは、紳士たるものそうした事ができなければという、、。」



「毎週手紙のやり取りに加え、月に一度は顔を合わせプレゼントもしている。また、綺麗に咲いている花があれば、それも送っているが?」



 なんと!ロイはしっかりされている。だが、どこか義務的な言いようが気になる。

 思わずムッとした口調で言ってしまった。



「そこに愛はありますの?」



「愛?君は昔もそんな事を言っていたな。私もあれから考えたのだが、政略結婚だ。愛よりも関係を長く円滑に続けていく努力の方が必要ではないか?愛は不確実。また、永遠の愛など、幻だ。」



 その言葉にフィリアは悲しくなった。

 違う。

 フィリアがロイとマリアに築いてほしい関係はそんな義務や業務的なものではない。



 だが、フィリアは知っている。



 このロイというキャラは、好感度が上がり、相手を好きになった途端手のひら返しのように愛を囁き始めると。



 だからこそ言える。



「ふふ。そう言いながらも貴方は愛を知れば愛を囁かずにはいられなくなるわ。」



 その言葉にロイは言った。



「それは私の二つ目の質問にも繋がるのか?二つ目だ。何故、私、ユーリ、カイン、シオンとそれぞれの婚約者を引っ付けようとしている?まさか、入学式のときの事がバレていないとでも思っているのか?」



 フィリアは驚いた。

 今まで何も言わなかったからバレていないとばかり思っていた。だが、たしかにあの時、ロイはこちらを見た。



 フィリアが何も言わないでいると、ため息をついてロイは手を離した。



 次の瞬間、瓶底眼鏡を取られた。



 フィリアの顔を除き込み、静かに言った。



「こんな綺麗な顔を隠して、何を企んでいる?」



 顔の近さと、凄む言葉に、フィリアは息を呑んだ。



 頬を撫でるようにゆっくりと指で触れられる。



「俺のフィリアにそれ以上触れるなよ。」



 本棚の後ろで控えていたグリードは、ロイに殺気を飛ばしながらそう言った。



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