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第一章
時は来た! 84
しおりを挟む朝クラスでフィリアは四人の令嬢達に取り囲まれていた。
フィリアとしては、久しぶりの登校であり、精霊王との事もグリードの事も解決してとても晴れやかな日であった。
「皆様どうしましたの?」
フィリアが笑顔でそういうと、エマはにっこりと笑顔を返して言った。
「今日は久しぶりに皆でお茶会をしません?」
フィリアはそれにとても喜んだ。
「もちろんです!ぜひ、ぜひ!」
四人は頷き、自分の席に戻っていった。
その時、クラスにいたグリードを見ると、ひどく疲れた顔をしていてどうしたのかと気になったが、まあ良いかと、授業を楽しんでフィリアであった。
授業が終わり、フィリアはいつものカフェに四人と向かった。すると、そこにはハロルドもいて驚いたが、どうやら令嬢方と事前に打つ合わせをしていたようで、疑問に思いながらもフィリアは席についた。
いつもの紅茶を頼み、運ばれてくると、その香りの良さにフィリアはほっと息を吐いた。
久しぶりの心の穏やかな時である。
フィリアは顔を上げると、頭を下げた。
「皆様には、精霊王の事でも、グリードの事でもご心配をおかけしました。やっと終わり、精霊王の事ではご婚約者様にちょっかいをかけてしまい本当に申し訳ありませんでした。」
令嬢方は首を横に振った。
「それは仕方ありませんでしたし、どうでもいいのです。」
フィリアは顔を上げると首を傾げた。
「え?」
「それよりも、気になるのはフィリアです。」
エマを皮切りに、他の三人も口を開いた。
「そうです。フィリアが勇ましいのは分かります。」
「この国では魔法には剣技も必要だという事も分かります。」
「ですが、フィリアが勇者のようにグリード様を助けるのはどうなのでしょうか。」
「フィリアは淑女なのですよ。強さがいけないとは申しません。ですが。」
四人は真剣な表情で声を揃えて言った。
『強すぎる女を男性が好むとは思いません。』
フィリアは雷に打たれるような衝撃を受けた。
「え。」
バッと、五人の視線がハロルドに向かった。
ハロルドは笑顔を浮かべると答えた。
「私は好きだよ。けれど、淑女たるもの、弱さを演じて男性を手玉に取るというのも大事な手法だと私の母は言っていた。」
フィリアは、それを聞いて自分を振り返り、顔を青ざめさせた。
そんなフィリアに、令嬢らははっきりとした口調で言った。
「だからこそ、今、変わるべきですわ。」
「ハロルド殿下も協力して下さるとの事。」
「淑女の心を取り戻し、グリード様にヤキモチを焼かせるのです!」
「そして、その心を今こそ掴み取る時ですわ。」
「タイミングの良いことに明日から社交のレッスンが入るからね。私も手を貸そう。」
フィリアは瞳を輝かせた。
「皆様。」
五人はコクリと頷いた。
「私、私やりますわ!」
いつもは、四人の令嬢らを応援してきた。
だが、今度は自分が頑張るべきなのだ。
時は来た!
フィリアはグリードの心を掴むため立ち上がった。
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