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三章
105話 新しい人④
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その夜、リーシアに城内を案内してくれたグレインから報告を受けた。
「––という事で、リーシアさんに城内の案内は無事に終えました」
「ありがとう、グレイン」
「いえ……俺も彼女と話せて良かったです」
「ふふ。コッコちゃんのおかげ?」
「はは、確かにそうですね。コッコさんが居てくれたから、話しやすかったです」
快活に笑うグレインに、リーシアに対する緊張は消えているように感じた。
それを現すように、彼は自らある提案を述べる。
「ただ、彼女も帝国城内での暮らしに不便は多いでしょうから。俺が暫く付き添っても良いでしょうか?」
「任せてもいいの?」
「はい。護衛騎士の後任は幾人かおりますし、陛下からの許可も頂いています……彼女も、俺の方が安心だと言ってくれました」
グレインの提案は、正直言って嬉しい。
目の見えない彼女にとって、信頼できる人が一人でも付き添ってくれている方が安心だろう。
だから。
「分かった。グレイン……任せるわね」
「はい。彼女もカーティア様に物語の書き方を教えたいと意欲的でしたので、お暇の際はお越しくださいね」
「ええ、また行くと伝えて」
「承知しました。では」
敬礼して去っていくグレインを見送り、自室へと戻る。
今日、子供達は別室にて就寝中だ。
長女のリルレットと、長男のテアからの要望があったのだ。
末っ子のイヴァと一緒におねんねがしたいからと、三人で寝ている。
そして……
「戻った」
「おかえり、シルウィオ」
部屋に戻ってきたシルウィオは、ソファーへと座る。
さっきまで子供達が寝かせるため……絵本を読んであげていたのだ。
会った頃から考えれば、あり得ない事だと笑ってしまう。
「……」
「子供達、よく寝てましたか」
「あぁ寝てくれた。……カティ」
「どうしました?」
「隣……来て欲しい」
呟きと共に、私の手が引かれる。
ソファーに座ればいいのかと思えば、抱きしめられて膝上に座ってしまった。
「シルウィ……」
「二人、久しぶりだ」
「確かに、最近は旅行に行っていて……基本的にイヴァが一緒だったね」
言われてみれば、ここ半年ほどは二人きりの夜は無かったな。
その事に気付いた途端……シルウィオの視線に気付く。
「二人きりで、嬉しい?」
「……」
「シルウィオ……」
「嬉しいに、決まってる」
抱きしめてくる腕が強くなって。
私と口付けを交わしたシルウィオが、じっと見つめてくる。
「寂しかった」
「ふふ、いつも一緒だったじゃないですか」
「……今とは、少し違う」
「そうですね……っ」
本当に嬉しいのだろうな……
シルウィオはいつもと違い、私を横抱きしてくる。
「今日は、二人きり」
嬉しそうな表情に、私から口付けを返せば……ふっと微笑む。
臣下にも、子供達にも見せない。
私だけに見せる、シルウィオの素直な頬笑みだ。
「そうだ、シルウィオ。私ね……物語を書こうと思ってるの」
「物語?」
「そう、私と貴方が出会ってから……今までの物語を。リーシアに教えて貰って書こうと思ってね」
「カティ……ありがとう」
「出来上がりを楽しみにしていて、凄い物語を書くから!」
「待ってる」
寝台へと下されて、口付けを交わしながら……
衣擦れの音が鳴る。
「だけど……物語を書くなら。会う時間は減るのか?」
「減らないよ。シルウィオが呼べば、私が行くから」
「そうか……嬉しい」
「シルウィオ。今日はずっと一緒だね」
「あぁ……愛してる。カティ」
「私も」
私にだけは、素直に気持ちを言ってくれるシルウィオが、大好きだ。
その気持ちを伝えて口付けを交わし合い。
抱きしめられて、私達は久しぶりに二人きりの夜を過ごした。
◇◇◇
数日後。
私は城内の庭園にて、子供達が遊ぶのを見守る。
リルレットは魔法を使い、多くの人形を動かしていた。
以前にカルセイン王国で見たものを、早速会得しているようだ。
テアは剣の稽古を終えて、イヴァと共にリルレットの魔法で遊ぶ。
そんないつも通りの、平和な日常。
いつもと違うのは、私は子供達を見守りながら一通の手紙をしたためている事だ。
「カーティア様。リーシア様をお連れしました」
「ありがとう、グレイン」
盲目のリーシアの手を、転ばぬように握りながらグレインがやってくる。
私は手紙を書く手を止めた。
連れて来てもらったリーシアは、動揺しながらも頭を下げた。
「カーティア様。本日は庭園にご招待くださりありがとうございます」
「いいのよ。今日は物語を書く勉強の前に……貴方へ報告があるの」
「報告?」
「ええ。少し待ってね。ジェラルド様、この手紙の内容でよろしいでしょうか?」
傍に居てくれたジェラルド様が、私の書いていた手紙を読み。
「大丈夫です」と頷いてくれた。
「リーシアさん。貴方の戸籍は現在……貴方を虐げていた姉、エリーと同じローレン伯爵家にあります」
「は、はい」
「なので、このまま帝国内に滞在してしまうと……外交上、アイゼン帝国が貴方を誘拐。幽閉しているともとられてしまうの」
「そ、そんな! 私は皆様に……とても良くしてもらってます。そんな事は」
リーシアがとても焦ってしまう。
少し話す順番を間違えたな……こんな不安を与えたくはなかったのに。
「落ち着いて、リーシア。そういった問題を解消するために……今日は一つの提案があるの」
「提案?」
「貴方は、グレインの専属付き人として職務に就いた事にするわ。就労する事で我が帝国に戸籍を移せるから」
「え……え? グレイン……様の?」
「体裁を整えるため、暫くはグレインと一緒に連れ添ってもらうわ。大丈夫かしら?」
「も、もちろんです! で……でもグレイン様は良いのですか?」
もちろん、グレインにも事前に許可を貰っている。
彼も微笑んで、頷いた。
「もちろん。よろしくお願い。リーシアさん」
「は、はい」
グレインは返事のために、彼女の手をきゅっと握る。
盲目のリーシアはその行為に頬を朱に染めながら「お願いします……」と、小さな声で返事しながら手をキュッと握り返していた。
「では、リーシア。貴方の姉に手紙を送らせてもらうわ」
「お、お姉様に? どのような内容で?」
「先日の我が帝国への非礼に加え、謝罪と称して虐げていた女性を向かわせた所業に……アイゼン帝国は到底謝罪を受け入れる気は無いとね」
リーシアは盲目だから虐げられていた。
加えて、こっちは彼女の姉であるエリーに因縁だらけという状況。
もう、許す理由なんて存在しないわ。
「リーシア。貴方はもう……向こうに戻らなくて済む。これで大丈夫よ」
「……ありがとうございます。皆さん」
リーシアは嬉しそうに頬笑み。
安心したように、安堵の息を吐いた。
「––という事で、リーシアさんに城内の案内は無事に終えました」
「ありがとう、グレイン」
「いえ……俺も彼女と話せて良かったです」
「ふふ。コッコちゃんのおかげ?」
「はは、確かにそうですね。コッコさんが居てくれたから、話しやすかったです」
快活に笑うグレインに、リーシアに対する緊張は消えているように感じた。
それを現すように、彼は自らある提案を述べる。
「ただ、彼女も帝国城内での暮らしに不便は多いでしょうから。俺が暫く付き添っても良いでしょうか?」
「任せてもいいの?」
「はい。護衛騎士の後任は幾人かおりますし、陛下からの許可も頂いています……彼女も、俺の方が安心だと言ってくれました」
グレインの提案は、正直言って嬉しい。
目の見えない彼女にとって、信頼できる人が一人でも付き添ってくれている方が安心だろう。
だから。
「分かった。グレイン……任せるわね」
「はい。彼女もカーティア様に物語の書き方を教えたいと意欲的でしたので、お暇の際はお越しくださいね」
「ええ、また行くと伝えて」
「承知しました。では」
敬礼して去っていくグレインを見送り、自室へと戻る。
今日、子供達は別室にて就寝中だ。
長女のリルレットと、長男のテアからの要望があったのだ。
末っ子のイヴァと一緒におねんねがしたいからと、三人で寝ている。
そして……
「戻った」
「おかえり、シルウィオ」
部屋に戻ってきたシルウィオは、ソファーへと座る。
さっきまで子供達が寝かせるため……絵本を読んであげていたのだ。
会った頃から考えれば、あり得ない事だと笑ってしまう。
「……」
「子供達、よく寝てましたか」
「あぁ寝てくれた。……カティ」
「どうしました?」
「隣……来て欲しい」
呟きと共に、私の手が引かれる。
ソファーに座ればいいのかと思えば、抱きしめられて膝上に座ってしまった。
「シルウィ……」
「二人、久しぶりだ」
「確かに、最近は旅行に行っていて……基本的にイヴァが一緒だったね」
言われてみれば、ここ半年ほどは二人きりの夜は無かったな。
その事に気付いた途端……シルウィオの視線に気付く。
「二人きりで、嬉しい?」
「……」
「シルウィオ……」
「嬉しいに、決まってる」
抱きしめてくる腕が強くなって。
私と口付けを交わしたシルウィオが、じっと見つめてくる。
「寂しかった」
「ふふ、いつも一緒だったじゃないですか」
「……今とは、少し違う」
「そうですね……っ」
本当に嬉しいのだろうな……
シルウィオはいつもと違い、私を横抱きしてくる。
「今日は、二人きり」
嬉しそうな表情に、私から口付けを返せば……ふっと微笑む。
臣下にも、子供達にも見せない。
私だけに見せる、シルウィオの素直な頬笑みだ。
「そうだ、シルウィオ。私ね……物語を書こうと思ってるの」
「物語?」
「そう、私と貴方が出会ってから……今までの物語を。リーシアに教えて貰って書こうと思ってね」
「カティ……ありがとう」
「出来上がりを楽しみにしていて、凄い物語を書くから!」
「待ってる」
寝台へと下されて、口付けを交わしながら……
衣擦れの音が鳴る。
「だけど……物語を書くなら。会う時間は減るのか?」
「減らないよ。シルウィオが呼べば、私が行くから」
「そうか……嬉しい」
「シルウィオ。今日はずっと一緒だね」
「あぁ……愛してる。カティ」
「私も」
私にだけは、素直に気持ちを言ってくれるシルウィオが、大好きだ。
その気持ちを伝えて口付けを交わし合い。
抱きしめられて、私達は久しぶりに二人きりの夜を過ごした。
◇◇◇
数日後。
私は城内の庭園にて、子供達が遊ぶのを見守る。
リルレットは魔法を使い、多くの人形を動かしていた。
以前にカルセイン王国で見たものを、早速会得しているようだ。
テアは剣の稽古を終えて、イヴァと共にリルレットの魔法で遊ぶ。
そんないつも通りの、平和な日常。
いつもと違うのは、私は子供達を見守りながら一通の手紙をしたためている事だ。
「カーティア様。リーシア様をお連れしました」
「ありがとう、グレイン」
盲目のリーシアの手を、転ばぬように握りながらグレインがやってくる。
私は手紙を書く手を止めた。
連れて来てもらったリーシアは、動揺しながらも頭を下げた。
「カーティア様。本日は庭園にご招待くださりありがとうございます」
「いいのよ。今日は物語を書く勉強の前に……貴方へ報告があるの」
「報告?」
「ええ。少し待ってね。ジェラルド様、この手紙の内容でよろしいでしょうか?」
傍に居てくれたジェラルド様が、私の書いていた手紙を読み。
「大丈夫です」と頷いてくれた。
「リーシアさん。貴方の戸籍は現在……貴方を虐げていた姉、エリーと同じローレン伯爵家にあります」
「は、はい」
「なので、このまま帝国内に滞在してしまうと……外交上、アイゼン帝国が貴方を誘拐。幽閉しているともとられてしまうの」
「そ、そんな! 私は皆様に……とても良くしてもらってます。そんな事は」
リーシアがとても焦ってしまう。
少し話す順番を間違えたな……こんな不安を与えたくはなかったのに。
「落ち着いて、リーシア。そういった問題を解消するために……今日は一つの提案があるの」
「提案?」
「貴方は、グレインの専属付き人として職務に就いた事にするわ。就労する事で我が帝国に戸籍を移せるから」
「え……え? グレイン……様の?」
「体裁を整えるため、暫くはグレインと一緒に連れ添ってもらうわ。大丈夫かしら?」
「も、もちろんです! で……でもグレイン様は良いのですか?」
もちろん、グレインにも事前に許可を貰っている。
彼も微笑んで、頷いた。
「もちろん。よろしくお願い。リーシアさん」
「は、はい」
グレインは返事のために、彼女の手をきゅっと握る。
盲目のリーシアはその行為に頬を朱に染めながら「お願いします……」と、小さな声で返事しながら手をキュッと握り返していた。
「では、リーシア。貴方の姉に手紙を送らせてもらうわ」
「お、お姉様に? どのような内容で?」
「先日の我が帝国への非礼に加え、謝罪と称して虐げていた女性を向かわせた所業に……アイゼン帝国は到底謝罪を受け入れる気は無いとね」
リーシアは盲目だから虐げられていた。
加えて、こっちは彼女の姉であるエリーに因縁だらけという状況。
もう、許す理由なんて存在しないわ。
「リーシア。貴方はもう……向こうに戻らなくて済む。これで大丈夫よ」
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