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2話ーようこそベルモンド伯爵家へー
しおりを挟む「旦那様、奥様、こちらが本日から働くことになった使用人のアリサです」
早速雇っていただいた日の夜に私の雇い主様となる貴族の方々にエブリン様が紹介してくれた
壮年の旦那様が会釈する
「そうか、君がエブリンに認められた子だねよろしく頼むよ、僕はこの家の当主ハウル・ベルモンドだ」
「は、はい!!よろしくお願いいたします!ハウル様!」
旦那様の後ろからじろりと奥様は見つめる
着飾った服装で綺麗な方だ
「おい、お前も自己紹介しないか」
「わ、分かっていますわ」
ハウル様に促され、奥様も前に出る
「私はオリビア・ベルモンドよ…まぁよろしくね」
「はい、オリビア様!」
私は笑顔で答えたが
「………!!ふん!」
オリビア様はそっぽを向いてくつろぎに行ってしまった
「すまいないね、オリビアは…その、複雑なんだ、今はお腹の中に子供も身ごもっていて…」
「旦那様、私の愛想が悪かったのかもしれません…」
「いや、君は悪くはないんだよ、息子もいるんだが反抗期なのか最近は帰ってこなくてね…オリビアもストレスが貯まっているんだろう………コーヒーが好きでよく飲んでいたのだがお腹の子供のためにも我慢しているみたいで」
そう言ってやれやれといった様子でハウル様も椅子に座ってくつろぐ
エブリン様がそっと私を小突く
「アリサ、こんな時に魔法かなにかで解決できないのかい?」
「す、すいません…私にはそこまでは………いえ、もしかすると…」
私は思いついたように屋敷から外に出る
辺りを見回すと庭には探していた物が
「ごめんね…」
私は呟きながらそれを引き抜いた
「あ、あの!オリビア様……」
「ん?なにかしら…別に呼んでないわよ…」
すこし不機嫌そうなオリビア様の前に私はそっと、飲み物を置いた
ふわりとコーヒーの香りが漂う
「ちょっと…私は妊娠していてコーヒーは控えているの…嫌がらせ?」
「ち、違います、そちらはこれで作りました」
私は誰もが見たことのあるそれを見せる
「………これってタンポポ?」
黄色の花弁が広がるタンポポをみてオリビア様は驚いていた
「はい、タンポポの根っこを使用しました」
昔、父が道のタンポポを使って作っていたのでよく知っていた
実際のコーヒーのような眠気覚ましの効果などもなく
妊娠していても安心して飲めるコーヒー風味の飲み物だ
根っこを水で洗い
火の魔法で乾燥させてから
それを再度魔法によって粉砕
後は焙煎し、ドリップするとコーヒーの香りが際立つ飲み物の完成だ
「タンポポコーヒーは妊娠していても安心して飲めますので…オリビア様はコーヒーがお好きと聞いていたので是非…」
「………ならいただこうかしら…」
オリビア様はゆっくりと飲む
コーヒーの香りは私にまで届いた
「おいしいわね…本当にコーヒーのようだわ」
「!!そ、そうですか?よ、良かったです!」
安心した
お父さんが言っていたのを覚えていて良かった
ほっと笑顔の私をオリビア様はじろりと見つめる
「な…なにか…?」
何か気に入らないことをしてしまった?
けど身に覚えがない…
オリビア様はタンポポコーヒーを机に置くと立ち上がる
「もう我慢できないわ…アリサ、あんたが悪いのよ」
オリビア様はそう言って手を広げた
な、殴られる?
反射的に目を瞑ったが、予想外の感触が伝わる
オリビア様は私を強く抱きしめていたのだ
そして頭を撫でる
「もう我慢できない!あなた可愛すぎ!!」
「オ…オリビア様?」
「ねぇあなた」
オリビア様は私を撫でながら笑う
「あたしの娘にならない?」
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