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S1-落ちていくルクスリア公爵-

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こちらはルクスリア公爵編です

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「ルクスリア公爵家から出てきた女の子を見た?」

「ええ…酷い傷だったらしいわよ、暴力をふるっていたかもって」

「信じられないわね…まだ少女だったんでしょ?」


街の噂は逃げ出した少女
そして彼女が逃げ出した屋敷の持ち主であるルクスリア公爵の話で一色だった


話の中心であるルクスリア公爵は屋敷にこもり出てこなくなっていた

「くっそ!!!」


ガシャン!!!

投げたグラスが粉々に割れる

「おい!!掃除しておけ………」

いつもの癖で叫ぶがそれに答える者はいない
家事など女がやる仕事、彼はそう決めつけアリサの家事について当たり前だと思っていた
自分ならもっと完璧にできると、アリサはストレス発散として屋敷に軟禁していたのだ
奴隷はこの国では雇えないから 

奴隷の代わりに都合のいい平民と婚約して家に閉じ込めた




だが、現実はどうだ





アリサが屋敷から逃げ出した事により見る見るうちに汚くなっていく
この屋敷は森も近く虫も多く入ってくる、現に先程投げたグラスからこぼれた液体に何匹か群がっている
その虫たちもアリサが対処していたのだろう


汚い、醜い、汚部屋

その中心でルクスリアは頭を抱えた


使用人を雇って部屋を掃除させようにもルクスリアの暴力の噂が既に広まり集まらない
例え雇えたとしてもこの広い屋敷では一人では維持できない、何十人も雇う必要がある
これをアリサが一人で掃除していたのだ


身なりもすっかり汚くなってしまった、髪もぼさぼさだ
何もできない………おれは彼女がいなければなにも………

やっと気づいた…だがもう遅かった
彼女は既にどこかに消えてしまったからだ


グラスの破片を拾いながらルクスリアは考える

このままでは…落ちていく
おれはこの若さで公爵になったんだ…そうだやり直せる

どんな手を使ってでもアリサを…彼女を見つけよう!!
そうだ!!金は惜しまない…裏稼業の者にも声をかけて探させよう

そして見つければ今度こそ逃げだす事も考えられぬように調教してやろう!!
痛めつけて締め付けて、今度こそ…


「そうだ…俺はまだやり直せる…」


ルクスリアの瞳に希望の光が見えてきた時

ドンドン


扉を叩く音が聞こえる

(一体誰が…)


ルクスリアが外に出ると、そこには数十人の騎士がいた


「い…一体なんのようでしょうか?」

「ルクスリア公爵、貴方は家庭内で婚約者に暴力を振るい、監禁していた疑いにより公爵家を剝奪、また財産、領地をフェルト国が全て徴収致します」

「は…は!?一体なんのことだ!!証拠は!証拠はあるのか!?」

「はい、貴方の私兵達から証言はとっています」

「な………な!?」

ルクスリア公爵が騎士達によって身柄を取り押さえられる
その瞳は冷たく、人を見る目ではない

「やめろ!!俺を誰だと思っている!?俺は!俺は!!」

ガシリとルクスリアの髪を騎士が掴み上げる

「お前は幼い少女を私欲のために痛めつけた悪魔だ…騎士である俺たちはあんたを絶対に許さない」

「な!?」

ガン!!!

持ち上げたルクスリアの頭を騎士はそのまま地面に打ち付ける
ルクスリアは鼻血を流し気絶した


「少しは彼女の痛みがわかったか…」

「隊長…やりすぎですよ」

「いいんだ、こいつが勝手に転んだと報告しておけ」

「しかし隊長もなかなかですね…このルクスリアの暴力について、私兵達の証言のみで確実な証拠はないですよね?王命で公爵家は剝奪ですが、拘束はできない」

「あぁ…だが確実な証拠を持っている人物がいるだろう?」

「えぇ…件の少女、アリサさんですね」

「あぁ、このクソ悪魔野郎を牢にぶち込むためにも今は彼女の捜索が優先だ!!」


騎士達の隊長は大きな声で命令を下す

「これより、少女アリサを捜索開始する!!彼女がそう遠くに行くことはあるまい国中を探すんだ!!それと…」

隊長は少しだけ言いよどみ、言葉を続ける

「俺にも、件の少女と同じ年の娘がいる、だから許せない…これは俺の個人的な命令だ!!絶対に彼女を救う!!騎士団の名に懸けて!!」

「「「おおぉ!!!!!」」」



その後、騎士団はルクスリア家に入り財産を徴収、もぬけの殻になった家に気絶したルクスリア本人を残して撤収した






帰りの道中
隊長は屋敷にあったボロボロになった魔法教本を見ていた

(魔法には転移の魔法もあると聞く…もしそれを少女が使えれば…この国内にいるだろうか…)

隊長は首を横に振る

(考えすぎだな…転移魔法など賢者と呼ばれる者しか使えぬ)

こうして騎士団は国中を探すがアリサを探すことは困難を極めた

奇しくも隊長の考えは当たっていたのだ




そしてルクスリアは完全に落ちてしまった
もう希望もないほどに
ボロボロに



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ルクスリアはまだ登場致します
この先どうなるか、是非ともお待ちください



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