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9話ー母の力ー

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その日
私はカイエン様と街に出かけていた

だが、カイエン様の顔色はどこか楽しくなさそうだ

「どうかしたのですか?カイエン様?」

「はぁ…まさか俺の闇の誘いに眷属を連れてくるとは…」

そう言ってカイエン様がちらりと後ろを見るとそこにはルルとオリビア様が一緒に来ている


「あら?カイエン?二人で来たかったのかしら?」

「おませさんだね~」

からかうような2人にカイエン様は口を尖らせる

「まぁいい…こうすればいいしね」

「へ?きゃ!」

カイエン様は私の手を握り、走りだした
街の人混みをぬけていく


「こら!!待ちなさい!カイエン!!」

オリビア様の声が聞こえたがもう遠くだ、人混みをぬけて路地裏へと入る


「カ…カイエン様…一体どうして…」

「ふっふっふ…闇の者がおってきていたからな、逃げたまでだ」

またおかしな口調で話すカイエン様のほほを私は手で抑える

「カイエン様、一体どうしたのですか?最近おかしいですよ、2人だけで逃げるなんて」

カイエン様の顔が真っ赤になり
目が泳いでいる
そんなに戸惑う事があったのだろうか

「カイエン様、悩みがあるなら言ってください…アリサは聞きますよ」

「な…なやみ…」

カイエン様と目が合う
真っ赤な顔でこちらをじっと見つめる

「お、おれは…あなたのことが一目見た時から…す…す」

「す?」


カイエン様が口を開いた瞬間

「あぁ!!いたいた!!」

「師匠!?」「ルル」


ルルが魔法によって上空から飛んできた
カイエン様はぽつりと「あと少しだったのに」とつぶやく

「もう、オリビア様に言われて探したんだから!!さぁ戻ろ…………!?」

ルルは上空より
突然魔力が切れたように落ちてしまう
初めて出会った時のようだ
幸い高さはそこまででない

「ルル、また飛行魔法に失敗したの?出会ったときみたいね」

思わず笑ってしまいそうになったが、ルルの冷や汗に満ちた顔で止まる

「ち…ちがう…なにこれ、魔法が、魔力が抜けて…」

「ルル!?一体どうしたの!?」

「師匠!?」

目に見えてルルは衰弱し、息を荒くしてうずくまる

そして路地裏を塞ぐように二人の男が現れた
無精ひげをはやした男と大きな男

「いやぁ…街中で飛んでくれたおかげで探す手間がはぶけたよ」

私はカイエン様とルルの前に立つ

「誰ですか、貴方たちは!ルルに一体何を!」

「紹介するよ、俺はラバルト、んでこっちのでっかいのがアジャだ」

ラバルトと名乗った男はそう言ってルルを指さす

「俺たちが用があるのはそこにいる天才魔法使いだけだ、お前たちは生きて返してやってもいいぞ?」

「ふざけないで!!ルルは私の友達、何をする気か知らないけど…絶対に渡さない!」

「ほぉ…じゃあ仲良く死んでもらうか」

ラバルトがアジャに殺せと指示しようとした瞬間
私とラバルトの間にカイエン様が割って入る、意味深なポーズと共に

「はははは!!!現れたな闇の使者どもよ!!この紅の炎帝の前にな!」

「は?何言ってるんだ?こいつ」

ラバルトが戸惑っている瞬間、カイエン様は小声で私にしゃべりかける

「アリサ、僕が奴の気を引いた瞬間、上空に魔法を放って…母さんが助けてくれるはず」

「そんな、オリビア様が危険に…」

「いいから、僕と母さんを信じて」

カイエン様はそう言って再び向き直るとまた意味深なポーズを取る

「お前たち!闇の使者はアビスへと祓う必要がある!!この煉獄の炎!!ヘルフレアでな!!」

カイエン様の指先に魔力が集中していく

「な!!おいおい!!こいつも魔法を使えるのか!!」

慌ててカイエン様にラバルトがキャンセル魔法を使おうとするが

「もう遅い!!!!」

「くそ!!」

カイエン様の指先から魔力があふれ、飛び出した!!










ポッ





















指先から小さな炎がゆらゆらと動く


「ぷっ!!!ぎゃはははは!!驚かせやがって!!なんだそのまほ…」

「いまだ!!アリサ!!!」

「な!?」




カイエン様の合図と共に私は魔法を打ち出した
上空に放たれた炎の魔法は空で大きく弾け
大きな音が街中に響き渡った

「ちっ…騒がれたか、アジャ!!ここは引くぞ!!」

「おれ!ころしたい!!殺したい!!」

「いいからこい!!!」

ラバルトとアジャが逃げようとした時
目の前に女性が立ちはだかった


眼光が鋭く
にらみつけるように状況を観察する女性
それはほかでもない
オリビア様だった

「な、なんだお前!!そこをどけ!!おい!!アジャ!!潰せ!!」

「がは!!!潰せる!!!!殺せる!!」

アジャと呼ばれた大男が拳を振り上げ、力を込める
血管が浮き出し、その力はかなりのものに見える


「オリビア様!!逃げてください!!」

私は叫ぶがオリビア様はニコリと微笑む

「大丈夫よアリサちゃん、そこにいてね」

「え?」

あまりの答えに思わずおかしな声がでてしまった
カイエン様が呟く

「アリサにはまだ教えてなかったね、母さん…昔は凄い暴れん坊だったみたいで」


「しねぇぇぇぇ!!!!!」

アジャが振り下ろした拳は風をきり、轟音を鳴らしてオリビア様へと向かう



だが、オリビア様はそれを紙一重で避けると同時にアジャを蹴り上げた
痛烈な回し蹴りによってアジャは宙に浮き、そのまま地面に落ちる
意識が飛んで、起き上がらない


横にいるカイエン様が再度呟く


「ラディウス王国の暴力令嬢なんて呼ばれていたみたいだ」



オリビア様は息を吐き、拳を握る

「さぁ、私の愛する子供達を怖がらせたこと、死ぬほど後悔させてあげる!!」

そう言ってニヤリと笑うのだった












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