【完結】もう我慢できないので婚約破棄してください！！逃げ出した先の伯爵家に愛されすぎてます

16話ー選択と危険ー

「と、いうわけでリスクも大きいが…嬢ちゃん、それでも記憶を取り戻したいか？」

アリサに問いかけるラバルト

「………………」

アリサを辺りを見渡した
心配そうに見つめる
カイエンやハウル
そしてルルとエブリン
そしてオリビアさえも集まっていた

この場にいる全員が
アリサの答えを待つように


「私は……」


アリサは答えた


「私は記憶を取り戻したいです、きっと嫌な記憶もあったのかもしれません、けど…私を心配してくれている方がこんなにも大勢いる…こんなにも大切にしていただいている…そんな方達を忘れたままなんて、嫌なんです」

「アリサ…」「アリサちゃん」

「だから、お願いします」

アリサはそう言って頭を下げた
ラバルトは頷いて手を伸ばす

「さすがだよ嬢ちゃん、俺もあんたに感謝してるんだ…俺を井の中の蛙だって教えてくれた…お礼もしたいしな早く記憶を取り戻してくれよな」

そう言って、ラバルトはアリサの額に手を当てて魔力を送った

「痛くないさ、暫く眠るだけだ」

その言葉と同時に、アリサは瞳を閉じて眠りについたのであった


「どれぐらい眠ることになるの？」

オリビアの問いかけにラバルトは答えた

「5年追体験で1時間はかかる、嬢ちゃんの年齢なら3時間と少しか」

「そう……アリサちゃん、辛いだろうけど頑張ってね」

オリビアはそう言ってアリサの頭を撫でた

ルルも同じく撫でる

「きっとアリサなら大丈夫、私なんかよりもずっと強いよ…友達だから、わかるの」

エブリンも頷く

「この子は強い子だよ、きっと笑って戻るさ」

カイエンは黙りながら、アリサの手を握った

「手袋作ってくれるんだろ、アリサ…待ってるから…」

そう小さく呟いた







2時間程すぎた時
アリサの表情は目に見えて苦しみだした
汗を流し、うめき声を上げ
涙を流した

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

そう呟く

「一体、何を経験したらこんなに追い込まれるんだい…」

「アリサちゃん…」

「こんなに抱え込んで…友達なんだから、ちょっとは相談してよね」

全員が涙を流し、アリサが戻ってくるのを待っていた











そんな時

「た、大変です！！」

突然慌てた衛兵が駆け込んできた

「どうした？」

ハウルの言葉に衛兵は報告する

「や、屋敷が突然！！賊に囲まれました…数は百は超えています！！」

「なんだと！？」



奇しくも同じタイミングで
犯罪組織・アンフェアの準備が整ってしまったのだった











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「さすが賢者グラッジだな、百人の同時転移魔法なんて」

「うるさいぞ、ガルバリウム！賢者など昔の名前だ、さっさと仕事にかかるぞ」

「はいはい…お前ら！！屋敷を囲め！！誰一人逃がすな！！」

ガルバリウムに命令されて屋敷が囲まれる
武器を手にとった賊達は号令一つで屋敷に襲いかかるだろう

だが、号令を下すのはガルバリウムではない
せっかく一緒にきたのだ
彼に始めてもらおう


「ルクスリア、あんたが始めな…件の少女はここにいる…今なら殺せる！」

そう言われて、ルクスリアは屋敷を見つめる

（すまないなアリサよ、いまのお前は生きているだけで俺の脅威だ、ここでどんな時を過ごしたか知らんが…お前と共に消えてもらうよ）

ルクスリアは大きく息を吸った
そして全員に届く声で叫んだ

「いまこの時より！！屋敷にいる者を全て皆殺しにせよ！！！」


その号令に、賊達が一気に屋敷へと駆け出した

瞬間


「がぁぁぁぁぁ！！！！！！」

獣のような咆哮と共に屋敷から大きな巨体が飛び出した
それはこの組織もよく知る人物

「ア、アジャ！？」

屋敷から飛び出たアジャは地面を叩きながら叫ぶ

「俺！！俺がここを守る！！！」

そう言って大きく微笑んだのだった









「良かったのか？ラバルト、あの組織に抵抗して」

アジャに指示したラバルトにハウルは聞いた

「あぁ、元より金だけの関係だしな…それに」

ラバルトは少しアリサを見た
未だに苦しんでいる彼女を

「この嬢ちゃんを見て思ったんだ、俺が今までしてきたことは嬢ちゃんみたいに苦しむ人間を生み出す最低の行為……アジャもそう思ったみたいでな」

ラバルトは言葉を続けた

「だから、これは贖罪だ、いまはあんたらに協力させてくれ」

「助かる…」

ハウルの返答にラバルトは黙って頷いた