【完結】もう我慢できないので婚約破棄してください!!逃げ出した先の伯爵家に愛されすぎてます

なか

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天才魔法少女はこの気持ちを認めない

ep5ー幸せならー

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「何を……しているの……」

私の問いかけにその場にいた大人達が振り向いた
明らかに異常な目つき
とても正常なんていえない

「これは、これは…紅蓮の魔法使い様ではないですか」

彼らの代表者らしき男が語りかける
大きく肥えた男

「なにをしているの。エウィに何してる!!!」

「そうですね、事情を説明する前に自己紹介を私…はステンドと申します。」

「そんなこと聞いてない!!エウィから離れて!!」

私は大きな火球を作り出すが、ステンドはエウィを盾にするように移動した

「まぁまぁ、落ち着いてください…これはね?エウィのためなんですよ」

「なにいって………」

私の問いかけにステンドは笑みを浮かべる

「彼女は喜んでいるんですよ、魔法が強くなることを望んでいる!なぜか!?それは彼女の両親のためですよ、魔法を使える事を喜んでいてくれていた両親のために魔法をもっと使えるようにと」

「そう、あんた達が吹き込んだのね」

「いえいえ、私達は彼女に教えただけです、手っ取り早く魔法を強くする方法があると」

「……それで恐怖を与えるために傷つけた、あんた達の目的はなんなの!?」

「分かりませんか?魔法は素晴らしい、まさに神のギフトとも言うべき力…利用する方法はいくらでもありますからね」

「くだらない偶像を作るために、私の生徒を利用しないで!!」

怒りでどうにかなりそうだ
私は前に進む
今はエウィを助けないと

「おや、やはり聞いてくれませんか…エウィ?あの先生は貴方の願いを止める気ですよ」

「せ、先生…………」

エウィは傷だらけになりながら振り向いた
とても少女が負う傷じゃない………………
今助けるから…

「エウィ、迎えに来ましたよ」

「ち、違うの…先生…エウィはね、お父さんやお母さんに喜んでもらいたくて…エウィが魔法を使ったら喜んでくれたから」

「エウィ、それは違います……貴方のご両親は」

「エウィ!!!あの先生を止めなさい!!」

ルルの言葉を遮るようにステンドは叫ぶ

「で、でも…」

「はやく、それともまた傷を増やしたいですか?」

ステンドはわざとらしくエウィに自身の拳を見せつけ怯えさせる
その恐怖に、エウィは思わず魔法を放ってしまった

重力魔法、対象に一方向の荷重をかける魔法だ


「ぐ………」

降りかかる荷重に思わず膝をついてしまう
ミシミシと身体が…骨が軋む

「ごめんなさい、先生……ごめんなさい………」

「素晴らしい!!さすがだ!あの紅蓮の魔法使いが膝をついているぞ!!」


エウィ、謝らないでいいんだよ

怖かったよね、一人で抱え込んで

でもね、私はあなたみたいな子を助けるために



「エウィ、教えてあげる」

私は立ち上がる
エウィの魔法は効かない
魔法とは日々勉強だ
重力魔法は賢者・グラッジに吹き飛ばされた時から対応済みだ

「ば、バカな……」

動揺したステンドの声が聞こえるが、無視して前に進む

「言ったでしょ、魔法は素晴らしい力だけど使う人によって意味が大きく変わるの…エウィならわかるよね」

「で、でもお母さんを…お父さんも…エウィが魔法を使えたらきっと喜んで……」

私はエウィの前に立ち
そっと抱きしめる
震える彼女を安心させるように強く強く

「エウィ、違うよ…貴方のご両親はね……魔法を使えなくても、何かになれなくても………………あなたが幸せなら、それだけでいいんだよ……」

ー幸せならそれでいいー
アリサが言っていた言葉をエウィに告げる

「先生……ごめんなさい…ごめんなさい…」

「大丈夫、大丈夫だよ…先生は怒ってないから」

私はエウィの頭を撫でる

「だから、エウィ…帰ろう?」

「うん……」

私はエウィを抱えながら立ち上がった


瞬間

背中に熱い痛みが走った
ジワリと熱い液体が背中に広がっていくのを感じる

「あ………………」

「先生!?」

エウィを抱えながら
膝をつき、倒れてしまう
なにが………………一体なにを…


背中の痛みに手を当てる
真っ赤な液体が私の手のひらに付着していた

(あぁ……油断したなぁ…ここまで人殺しに躊躇がないなんて……)

私の後ろには笑みを浮かべながら血に染まったナイフを手にしたステンドがいた

「行かせる訳がないでしょう、あなたにはここで消えてもらいますよ」

そう言って、ステンドは再度ナイフを構え
ゆっくりと近づく



「エウィ、いい?よく聞いて……」

私はエウィのほほを触りながら呟く
意識は飛びそうだ、けどエウィだけでも……

「先生……血、血が……」

怖いよね、ごめんね

「エウィ、振り返らずに走りなさい、外にはラバルトもいる…だから大丈夫……行って!!」

「でも…先生……血が………………止まらない…先生……」

「大丈夫……先生……私も…後から行くから………………だから行って………………」

「はやく!!!」

私の叫びのような声を聞き
エウィが走りだす

これでいい


「させるか!!逃がすな!!」

「行かせない………」

私は最後の力を使って魔法を放つ
周囲に燃え盛る火炎を発生させて、エウィを傷つけた奴らも
ステンドも焼き尽くす

「私の生徒に…手を出すなぁ!!」

燃え上がる炎の中で、彼らの悲鳴のような声が聞こえる


だめだ…もう意識が………………

息もできない

ぐしゃりと、自分の血溜まりの中に倒れ込む

暖かく、真っ赤な液体が地面に広がっていく




あぁ…死にたくないなぁ



ごめんね、アリサ……アリサの子供も幸せにするっていったのに


私ね…夢だったんだ
私の生徒達と…アリサの子供も…

生徒も
家族も
友達も


みんな幸せにするって……


でももう…



ごめんね



ごめん………










































燃え盛る炎の中央で
ルルはゆっくりと目を閉じた

紅蓮の炎はルル以外を焼き尽くしながら

まるで悲しむかのように大きく揺らめいた




焼き焦げた死体と

後に残ったのは


冷たくなっていく、一人の少女だった


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