37 / 42
幸せの真実
真実①
しおりを挟む
ー父さんはわかっていない!!ー
ーわかっていないのはお前だ、ただ人を救う事が何の役に立つ!金にもならん事などする必要もないー
ーだからって!人を傷つけて金を稼ぐなんて…何になるんだ!ー
ーだからお前はわかっていないのだ!!金があれば…私の妻を救えた!!救った人間が何をしてくれた!?苦しむ妻を憐れむだけだ!!金が無ければ……病気も治せんー
ー母さんはそんな事望んでいるはずないだろ!!目を覚ましてくれよ!!父さん!!父さんの魔法は…多くの人を救えるんだ……僕の娘だって、父さんの孫だって…救ってくれたじゃないか!ー
ー………………気まぐれだ、孫の名前も覚えておらんわ…お前とは話にならん……出ていけ、二度と顔を見せるなー
ー父さん……人を不幸にして残る物なんてない……人を救うことできっと何か繋がるものもあるはずなんだー
ー出ていけ!!!!オリエント!!貴様などもはや息子とも思わん!!ー
ー………………………………さよなら、父さん……ー
(また、あの夢か………………)
冷たく、寒い牢獄の中でグラッジは目を開ける
かつて息子と話した内容だ
なぜか今頃になってよく思い出すようになった
賢者と呼ばれていたころ
私は世のため、人のために
魔法を使ってきた
沢山の、沢山の人々を救った
魔術を広めるために本を作り
無償で提供してきた
全ては人の世のためと
そんな私を愛する妻と
息子と共に貧しくも
幸せな日々を過ごしてきた
だが、妻が病気となった
治すためには多額の金が必要となる
魔法ではどうしようもない、私は必死に走り回り助けを求めた
けど、向けられたのは虚しくも憐れむ視線だけだった
救ってきた人々は貧しく、多額の治療費を集める事は出来なかった
苦しむ妻を見ていられず、私は自らの手で………………
私は沢山の人々を救ってきた、だが
私を救ってくれた人はいなかった
金だ…金さえあればなんでもできた
人を救って何の役に立つ?憐れむ人が増えるだけだ
なら、なら、例え大勢の人が苦しもうと
私は金を手に入れよう…地位も、力も手に入れれば
そうすれば……いつか妻が生き返ってくれるかもしれない
有り得ない夢を追いかけて
私は賢者を捨てて禁忌に手を伸ばした
(その結果が……これか)
暗い牢獄の中で、グラッジは呟いた
もはや魔力も残っていない
彼には何も残っていない
虚しさと悲壮感だけが彼を覆っていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こちらへ」
牢獄の前が騒がしく、何人かの人間の出入りの声が聞こえる
グラッジの牢の前にやってきたのは見知った顔であった
「今更、何の用だ」
グラッジの牢の前にいたのは
あの赤子を抱いた少女アリサと
蒼炎を使っていた男、そして紅蓮の魔法使いであった
「グラッジさん、あなたに私達の子供を…救ってもらいたいんです」
「救う?いきなり来たと思えば……頭がお花畑なのか?貴様らには憎しみしか抱いていないこの私に赤子を救えと!?」
嘲るように笑う、グラッジをアリサは見つめて答えた
「はい、お願いします。」
「ふざけるよ?まだ多少は魔法は使える…その赤子程度なら、今すぐ殺してやろうか?」
「な!きさま!!」「アリサ!やっぱりダメだよ!」
傍にいたカイエンとルルが身構えるが、赤子を抱いたアリサは
さらに牢に近づいた
「この子はソフィアは殺させません…それにあなたにはこの子を救ってもらう」
「ふざけるな…本当に殺してやろうか?」
グラッジは立ち上がり
牢の鉄格子の前まで歩く
目の前にはアリサがおり、手を伸ばせば赤子にさえ届く
「私は、あなたの描いてくださった魔術教本を読みました……」
「それが今更なんだというのだ!!」
「あの本には魔法で多くの人々を救おうとした、そんな想いがありました!!あなたには確かにその想いがあったはずです!!」
「そんなもの!!なんの役にも立たない!!!救うことに意味などない」
グラッジが叫んだ瞬間
アリサはグラッジをまっすぐに見つめて答えた
「それは違います!!人を救うことで!きっと何か変わるはずです!!!」
ー父さん……人を不幸にして残る物なんてない……人を救うことできっと何か繋がるものもあるはずなんだー
なぜだ、なぜだ……この娘を見ていると
息子を、オリエントを思い出す
忌々しい……私を…否定するな
私の答えは…もう
決まっている
私の前から………消えろ!!
グラッジが牢から手を伸ばし赤子の元へ
「アリサ!!」「まずい!」
カイエンとルルの叫びが聞こえたが
アリサは落ち着いて
ソフィアを抱いていた
「やっぱり、分かっていたんですよね……」
「うるさい、私はただ目の前にいられると目障りなだけだ…それに殺す気などない、金にもならんしな」
グラッジはソフィアの胸に手を当てて魔力を安定させていく
「ルルと言ったか?お前はよく見ておけ、魔力暴走の治療は難しくない、見て覚えろ…これが私の最後の教本だ」
「……分かったわ」
(難しくないって、かなり高度な魔法をソフィアにかけてる…これは真剣に覚えないと)
ルルは食い入るように見つめておた
グラッジはカイエンにも目を向ける
「お前も、まさかタダで私を動かす訳じゃないだろうな」
「……可能な限りであればこちらも、提供できる」
カイエンの答えにグラッジはニヤリと笑う
「なら、毛布をよこせ……ここは寒くてかなわん」
「!?…………それでいいのか?」
「あぁ、元より死に場所はここでいい…私にはもう何も残っていないのだからな」
そして、最後にアリサを見つめる
「貴様を見ていると、息子を思い出す……」
「息子が……いたんですか?」
「ああ孫もいた、名前は忘れたがな……喧嘩別れして、今は居場所も知らん……変わった奴だ、タンポポの根っこを飲み物にするような奴でな」
「オリエント」
アリサの呟きに
グラッジは驚いたように目を見開いた
「オリエント…私の父です」
かつて賢者・グラッジは魔力暴走を持つ孫を治療した
これは世界で唯一の症状で
今までたった一例しか確認されていない
その孫は女の子で
名前は
アリサと呼ばれていた
ーわかっていないのはお前だ、ただ人を救う事が何の役に立つ!金にもならん事などする必要もないー
ーだからって!人を傷つけて金を稼ぐなんて…何になるんだ!ー
ーだからお前はわかっていないのだ!!金があれば…私の妻を救えた!!救った人間が何をしてくれた!?苦しむ妻を憐れむだけだ!!金が無ければ……病気も治せんー
ー母さんはそんな事望んでいるはずないだろ!!目を覚ましてくれよ!!父さん!!父さんの魔法は…多くの人を救えるんだ……僕の娘だって、父さんの孫だって…救ってくれたじゃないか!ー
ー………………気まぐれだ、孫の名前も覚えておらんわ…お前とは話にならん……出ていけ、二度と顔を見せるなー
ー父さん……人を不幸にして残る物なんてない……人を救うことできっと何か繋がるものもあるはずなんだー
ー出ていけ!!!!オリエント!!貴様などもはや息子とも思わん!!ー
ー………………………………さよなら、父さん……ー
(また、あの夢か………………)
冷たく、寒い牢獄の中でグラッジは目を開ける
かつて息子と話した内容だ
なぜか今頃になってよく思い出すようになった
賢者と呼ばれていたころ
私は世のため、人のために
魔法を使ってきた
沢山の、沢山の人々を救った
魔術を広めるために本を作り
無償で提供してきた
全ては人の世のためと
そんな私を愛する妻と
息子と共に貧しくも
幸せな日々を過ごしてきた
だが、妻が病気となった
治すためには多額の金が必要となる
魔法ではどうしようもない、私は必死に走り回り助けを求めた
けど、向けられたのは虚しくも憐れむ視線だけだった
救ってきた人々は貧しく、多額の治療費を集める事は出来なかった
苦しむ妻を見ていられず、私は自らの手で………………
私は沢山の人々を救ってきた、だが
私を救ってくれた人はいなかった
金だ…金さえあればなんでもできた
人を救って何の役に立つ?憐れむ人が増えるだけだ
なら、なら、例え大勢の人が苦しもうと
私は金を手に入れよう…地位も、力も手に入れれば
そうすれば……いつか妻が生き返ってくれるかもしれない
有り得ない夢を追いかけて
私は賢者を捨てて禁忌に手を伸ばした
(その結果が……これか)
暗い牢獄の中で、グラッジは呟いた
もはや魔力も残っていない
彼には何も残っていない
虚しさと悲壮感だけが彼を覆っていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こちらへ」
牢獄の前が騒がしく、何人かの人間の出入りの声が聞こえる
グラッジの牢の前にやってきたのは見知った顔であった
「今更、何の用だ」
グラッジの牢の前にいたのは
あの赤子を抱いた少女アリサと
蒼炎を使っていた男、そして紅蓮の魔法使いであった
「グラッジさん、あなたに私達の子供を…救ってもらいたいんです」
「救う?いきなり来たと思えば……頭がお花畑なのか?貴様らには憎しみしか抱いていないこの私に赤子を救えと!?」
嘲るように笑う、グラッジをアリサは見つめて答えた
「はい、お願いします。」
「ふざけるよ?まだ多少は魔法は使える…その赤子程度なら、今すぐ殺してやろうか?」
「な!きさま!!」「アリサ!やっぱりダメだよ!」
傍にいたカイエンとルルが身構えるが、赤子を抱いたアリサは
さらに牢に近づいた
「この子はソフィアは殺させません…それにあなたにはこの子を救ってもらう」
「ふざけるな…本当に殺してやろうか?」
グラッジは立ち上がり
牢の鉄格子の前まで歩く
目の前にはアリサがおり、手を伸ばせば赤子にさえ届く
「私は、あなたの描いてくださった魔術教本を読みました……」
「それが今更なんだというのだ!!」
「あの本には魔法で多くの人々を救おうとした、そんな想いがありました!!あなたには確かにその想いがあったはずです!!」
「そんなもの!!なんの役にも立たない!!!救うことに意味などない」
グラッジが叫んだ瞬間
アリサはグラッジをまっすぐに見つめて答えた
「それは違います!!人を救うことで!きっと何か変わるはずです!!!」
ー父さん……人を不幸にして残る物なんてない……人を救うことできっと何か繋がるものもあるはずなんだー
なぜだ、なぜだ……この娘を見ていると
息子を、オリエントを思い出す
忌々しい……私を…否定するな
私の答えは…もう
決まっている
私の前から………消えろ!!
グラッジが牢から手を伸ばし赤子の元へ
「アリサ!!」「まずい!」
カイエンとルルの叫びが聞こえたが
アリサは落ち着いて
ソフィアを抱いていた
「やっぱり、分かっていたんですよね……」
「うるさい、私はただ目の前にいられると目障りなだけだ…それに殺す気などない、金にもならんしな」
グラッジはソフィアの胸に手を当てて魔力を安定させていく
「ルルと言ったか?お前はよく見ておけ、魔力暴走の治療は難しくない、見て覚えろ…これが私の最後の教本だ」
「……分かったわ」
(難しくないって、かなり高度な魔法をソフィアにかけてる…これは真剣に覚えないと)
ルルは食い入るように見つめておた
グラッジはカイエンにも目を向ける
「お前も、まさかタダで私を動かす訳じゃないだろうな」
「……可能な限りであればこちらも、提供できる」
カイエンの答えにグラッジはニヤリと笑う
「なら、毛布をよこせ……ここは寒くてかなわん」
「!?…………それでいいのか?」
「あぁ、元より死に場所はここでいい…私にはもう何も残っていないのだからな」
そして、最後にアリサを見つめる
「貴様を見ていると、息子を思い出す……」
「息子が……いたんですか?」
「ああ孫もいた、名前は忘れたがな……喧嘩別れして、今は居場所も知らん……変わった奴だ、タンポポの根っこを飲み物にするような奴でな」
「オリエント」
アリサの呟きに
グラッジは驚いたように目を見開いた
「オリエント…私の父です」
かつて賢者・グラッジは魔力暴走を持つ孫を治療した
これは世界で唯一の症状で
今までたった一例しか確認されていない
その孫は女の子で
名前は
アリサと呼ばれていた
200
あなたにおすすめの小説
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる