【完結】もう我慢できないので婚約破棄してください!!逃げ出した先の伯爵家に愛されすぎてます

なか

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幸せの真実

生命

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「カイエン……落ち着かないか」

父であるハウルの言葉に
せわしなく動いていたカイエンは動きを止める

「ごめん、父さん……落ち着かなくて」

「無理もないが、あの時…リゼットの時とは違うんだ……医者も安定していると言っている」

「そうだけど……」

「ねぇ?リゼットがどうかしたの?」

カイエンの妹であるリゼットは不思議そうに首をかしげる
オリビアはそんなリゼットを優しく撫でた

「リゼットが産まれた時はね、本当に大変だったの……」

「そうなの?」

「ええ、けどね…アリサちゃんが頑張って、必死で私たちを救ってくれたの」

「じゃあ、リゼットはアリサお姉ちゃんにお礼言わないと!!」

「そうね、だから無事を祈ってあげて」

オリビアに撫でられながらリゼットは嬉しそうにはしゃぐ

カイエンは外を見た
あの時も、こんな冬の日だった

「ごめん父さん、母さん……やっぱりアリサの様子を見てく…」

言いかけた時、廊下を走る音が響き
扉が開いた

そこにはエブリンが息を切らしながら
そして、嬉しそうに

「皆さん…産まれました…アリサの子供が!」

真っ先に走りだしたのはカイエンだった
部屋を抜けて、そのまま彼女のいる部屋に

「アリサ……」

少し疲れたように見えるアリサは赤ん坊を抱きながら
カイエンに笑みを見せた

「カイエン、私達の子供です」

何も言わずにカイエンは抱きしめた

「カ、カイエン…この子が起きちゃう…」

「あ、あぁ…そうだな…ごめん」

カイエンは恐る恐る
赤ん坊のほほを指先で触る
柔らかく、温かな感触

そして、赤ん坊は無意識にカイエンの指先を握った

「あ…」

「ふふ、もうお父さんが大好きみたい」

「嬉しいよ、君と俺の子か……だめだ……泣きそう」

「あら?いっぱい泣いてもいいのよ?」

「だめだ!お父さんとして…」

「アリサお姉ちゃん!!おめでとう!!」

リゼットの元気な声が部屋に響く
傍にはオリビアやハウル、エブリンも

「こら、リゼット!起きちゃ……」

カイエンの言葉も虚しく
赤ん坊は大きな泣き声を上げる

元気な、元気な声で

アリサは赤ん坊をあやしながら思う

(あなたは、こんなにたくさんの人に愛されて生まれてきたんだよ……)

たくさんの笑みの中で元気な声で泣いた
赤ん坊


女の子

名前をソフィアと名付けられた








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「カイエン、こっちに座りましょう」

「あぁ、体は大丈夫か?」

「もう大丈夫、ほらカイエンもソフィアを抱っこしてあげて」

ベルモンド家の庭の綺麗な花畑の中で座り
アリサはソフィアをカイエンに託す

「あぁ、ほら…ソフィア、お父さんだぞー」

恐る恐るとカイエンはソフィアを抱き上げるが
途端に泣き出してしまった

「や、やっぱり…お父さんはまだ早いのか…」

アリサがソフィアを抱くと、安心したように泣き止む

「蒼炎の魔法使い様も、赤ん坊には負けてしまいますね」

「アリサ、それは止めてくれ!というより!ソフィアには言わないでくれ!お願いだ!」

「え?なんでですか?カッコイイじゃないですか」

「なんか、昔の記憶が……あの時の恥ずかしい記憶が蘇るんだよその名前!」

「あら?私はあの時のカイエンも可愛くて好きでしたよ」

「………………」

黙ったカイエンは突然、アリサに顔を近づける

「じゃあ、今はカッコイイって思ってくれているのか?」

「そ、それは……ずるいです、カイエン」

「思ってくれてるんだな」

「も、もちろん………ん」

カイエンはアリサと唇を合わせる
その場に誰もいないために、長い時間
愛を確かめあった

いつしかアリサに抱かれた赤ん坊はスヤスヤと寝息を立てる


「相変わらず、見せつけてくれますね」

口付けしていた、アリサ達の真上から声が聞こえた

「!?し、ししょう!」

カイエンの変わらない呼び方

真上には浮かんだルルが
面白そうに笑っていた


「アリサ、おめでとう…」

「ルル!!」


アリサは立ち上がり
ルルの元へと向かう

ルルも嬉しそうに
アリサの抱いている赤ん坊のほほをつつく

「か、可愛い…アリサによく似てますね」

「本当に?」

「ええ、でも弟子の面影もありますね…可愛い…うぃうぃ」

ほほをつつかれたソフィアは嬉しそうに笑う
その瞬間


ソフィアの体を青い炎が包んだ


「ソフィア!!!」

「な、なにが!!!」

驚いたアリサやカイエンだが
対するソフィアはまるで気にしない様子で笑っている
アリサにも傷などはない

「ルル!?な、なにが!?」

「落ち着いて」

慌てるアリサ達をなだめながら
ルルは記憶の中で何かを探す
この現象の理由を

そしてその答えがあった



「魔力暴走……」

「魔力……暴走?」

ルルは記憶の中の情報を確認しながら話す

「ええ、今までたった一例しか症状は確認されていませんが、高い魔力を持つ魔法使いの子孫は極稀にこの病気にかかると言われているの」

「病気なの!?ルル…」

泣きそうになるアリサを落ち着かせながら、ルルはゆっくりと話す
動揺させないように

「魔力暴走は本人の意図せずに溢れる魔法が発動してしまうの、この赤ん坊にはそれだけの魔力がある」

ルルは言葉を続ける

「発動したのがカイエンから引き継がれた蒼炎で良かった…この魔法は敵意ある者しか燃やさないから……でも、もし他の魔法を発動したら、アリサもこの子も命が危ない」

「ど、どうすれば」

「私には……分からない」

笑いながら蒼炎に包まれるソフィアを除き
しばしの沈黙が流れた

だが、ルルはゆっくりと、言いにくそうに

とある真実を告げた

「でも、たった一人だけ……この事例を発見して、治療した魔法使いがいるの…」

「そ、それは誰が!?」

カイエンが詰めよる
子供を助けるために藁にも縋る想いで

ルルは重い口を開けた











「賢者・グラッジ……彼がこの病気の第一発見者で、唯一、症状を治した人物です」









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