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49.何故この状況で変えた、衣装
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「HP多すぎぃ・・・」
月下が不満を漏らしながら、タッキーの火炎弾で焔渦巻く槍斧を、蜘蛛の頭部に叩きつける。
蜘蛛が怯んだところで、マリアの二刀小太刀の12連斬が前部の足を切り刻む。耐久値がなくなり、蜘蛛がバランスを崩し傾く。
好機なんだが、姫の方を見ると、小さい蜘蛛に囲まれてそれどころじゃないようだった。
雑魚の蜘蛛は、攻撃力はそんなに無い。どちらかと言えば、妨害攻撃や状態異常を付与してくるのが鬱陶しい。蜘蛛の糸で、こちらの動きに制限をかけたり、毒状態にしてきたりと。
つまり、連携にうまくもっていけないんだ。それがこの敵の特徴なんだろうな。嫌な作りだ。
「でも、半分は過ぎた。」
「分かってるよぉ。」
不満を言いながらも攻撃の手は休めない。俺はもう一度、姫の方を確認する。
「姫、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。」
「ユアキス、後ろ!」
姫の返事と被るように、タッキーが声を上げる。それを聞いて慌てて振り向くと、起き上がった蜘蛛が前部の足を振り上げ打ち下ろし、それが俺に迫っていた。
(げ、避けれねぇ・・・)
そう思った瞬間、目の前にマリアが現れ、俺を体当たりで弾き飛ばす。
何やってんだ、俺。
マリアは微笑みながら、蜘蛛の足に叩かれ飛ばされ・・・
おい・・・
『マリア!』
俺とタッキーが同時に叫んだ。他のメンバーもその声に振り向くが、マリアの姿はもうそこに無かった。
蜘蛛の足はマリアの身体を引き裂くようにすり抜けた。おそらく、ミカエルの時と同じだ。
くそっ!
あれは一体なんなんだ!
「しっかりしないさいユアキス!今は何も出来ませんわ。」
アヤカの声で、一瞬の放心状態から戻ると、俺は再び蜘蛛への攻撃に戻った。
アヤカの言う通り、何も出来る事はない。今は戦闘に集中・・・いや、携帯で連絡出来るんじゃないか?
ふとそう思ったが、この戦闘を放り出す事になってしまう。ゲームより人体の安否の方が重要なのはわかっているが、他のメンバーの事も考えると放り出せない。
何より、俺が連絡出来る事を知られてしまう方が、マリアにとっても都合が悪いんじゃないかとも思えた。
そう言えば、マリアはCAZH社の依頼でゲームをしているんだったよな。なら、そっちに任せる方が正解か。
-CAZH社 自社データセンター サーバールーム 管理室-
「まりあ!!」
ディスプレイを見ていた禍月は、叫ぶと椅子を蹴倒して勢いよく立ち上がった。直ぐ様管理室のドアに駆け寄り、部屋を出ていく。
「禍月!」
それを見ていた美馬津も立ち上がり、ドアの方へ向かおうとする。
「落ち着け美馬津。」
「主任・・・」
だが八鍬に一喝され、美馬津はその場に立ち尽くした。
「私や美馬津がする事は心配ではあるまい。監視を続ける事だろう。黒咲の事は禍月に任せておけ。」
「はい、すいません。突然の出来事に動揺してしまって。」
美馬津は言いながら席に戻ると、ユアキス達が戦い続ける蜘蛛戦の監視に戻った。
「また同様の事象が発生する可能性もある。今は、監視を怠る方が問題だ。」
「そうですね。それこそ、禍月に怒られそうです。」
「そうだな。」
-同センター内 仮眠室-
「まりあ!」
DEWSをプレイするために、黒咲が横たわる仮眠室へと禍月は飛び込んで声を上げる。だが、黒咲はまだ横たわったままで動かない。
「おいまりあ!」
そう言って禍月は黒咲の傍に駆け寄る。
「うぉ・・・」
禍月が近付いたのと同時に、黒咲はむくりと上半身を起こすと、HMDを頭から取り外した。
「生きているならもっと早く起きとけー。」
「え、あぁ、ごめんね。ちょっと吃驚しちゃって。」
黒咲はそう言うと苦笑して見せる。
「身体に異常はないか?」
「えぇ、なんとも・・・」
禍月の心配に、黒咲は起き上がるとベッドから降りて身体を動かしてみる。前屈してみたり、捻ってみたりした後、伸びをして禍月の方を見る。
「うん、いつも通り。」
その言葉に禍月は安堵の息を吐く。
「まぁ、なんともないならいい。それより、何故わざわざ受けに行った?そんなもの、ユアキスに受けさせておけばいいだろー。」
禍月がそう言うと、黒咲は禍月の頬に掌をぽんと当てた。その行為に、禍月は若干戸惑う。
「だめだよ、晶社くんを巻き込んじゃ。これは、私たちの仕事でしょう?」
「そりゃ、そうだけど・・・」
禍月はまりあに何かある方が困ると続けようしたが、結局怒られそうだと思いその言葉は飲み込んだ。
「それで、攻撃を食らった時はどんなだった?」
「ちょっと待って、まだ戦闘中でしょ?」
「ん?ああ、そうだなー。」
「私、戻らないと。」
「何を言ってるんだー?こんな事が起きたんだ、一旦様子をみるもんだろー。」
禍月は心配するが、黒咲は微笑むとベッドに座り込んだ。
「解析していて。私が体験した事は後で話せるけど、この戦闘は今しかないよ。」
「そんな事はあっきーでも・・・」
「何れ帰すでしょ、大事なところは自分で確認したがるのが夢那でしょう?」
黒咲は禍月の言葉を遮って問い掛ける。
「まぁ、そうだ。」
「さぁ、戻って。ちゃんと見ててよ。」
「うむ。」
黒咲は禍月の返事を聞くと、HMDを頭にセットして横たわった。
「まぁ、言い出したら聞かないからなー。」
禍月は言いながら苦笑すると、仮眠室を出て管理室へと戻った。心配な事に変わりは無いが、黒咲の言う事が正しいのも承知しているから。
「ごめん、お待たせー。」
蜘蛛戦も終盤に差し掛かった頃、マリアが戻ってきた。ってなんで学生服にコスチューム変えて来てんだよ!
「似合う?」
似合う?じゃねぇよ、アホか!
「ばっちり似合ってます!」
お前も黙れ、むしろ雑魚蜘蛛にやられてしまえ!
出会った頃はチャイナ服だったが、少し前からは夏だって事で浴衣を着ていた。何個持ってるんだ・・・
まぁ、社会人なんだから、そこにお金を使うのは自由だけど。
ただ変えるのはいいとして、何故このタイミングだよ。
「いいなぁ、あたしも欲しい。」
月下が蜘蛛を適当に殴りながら、羨ましそうな眼をマリアに向ける。少ない小遣いで買えばいいだろ。
「ユアキス買ってよ。」
「ふざけんな!」
「ケチ!」
「うおぅ・・・俺を攻撃すんな!」
真面目に蜘蛛を攻撃しろよ。
「戦闘に普段着など、愚の骨頂ですわ。」
あぁ、ブレないってのは、たまにはまともな事を言うもんだなぁ。
「アヤカに賛成。」
マリアが何事もなく戻って来たことで、メンバーが何時もの状態に戻った。それまでは各々が心配していたんだろう、口数も減りもくもくと蜘蛛を倒す作業になっていたから。
「あぁ、疲れた・・・」
スニエフの街に戻るなり、月下が疲れた声で言うと地面に座り込む。
「雑魚がかなり鬱陶しかったね。」
「あぁ、確かにな。」
タッキーの言う通り、雑魚が邪魔で本体を攻撃しずらいのがもどかしい、というかうざかった。
「でも、マリアが無事で良かったです。」
「ほんとだよね。」
姫の言葉に、大いに頷くタッキー。それはどうでもいいとして、今回は本当にそれが一番だ。ミカエルの件を目の当たりにしているから、尚更だ。
「ちょっと吃驚したけど、大丈夫よ。」
「あれ、アヤカは?」
そう言えば見かけないなと思って疑問を口にする。
「もう鍛冶屋に行きましたよ。」
・・・
それは放っておくとして、俺はマリアに個人的な発言をする。
[大丈夫か?]
[あら、心配してくれるの、ありがと。問題ないわよ。]
[俺も似たような事があったからな。それだけだ。]
[そうなのね。良かったら今度、その時の事を教えて欲しいな。]
[別に構わないが。]
とりあえず本人が大丈夫だと言っているので問題ないだろう。俺も腕が吹っ飛んだ瞬間、驚いて強制ログアウトさせられたからな。
きっと今回のマリアも、そんな感じだろうと思った。
「今日はもう解散かな。」
「そだね。」
「クエストを見る限り、次からは普通のクエストみたいです。」
それならいい。流石にゴミ掃除の連続は面倒すぎる。
「きっとまた、ファイナルとか来るよね。」
「言うな。」
月下の発言にすかさず突っ込む。考えないようにしているだけだ。おそらくみんな、それは予想しているだろうが、言わないのは俺と同じ事を考えているからかもしれない。
「それじゃぁ、解散でいいのね。」
「あぁ、そうしよう。」
マリアに答えた俺の言葉を合図に、それぞれゲームを終了した。
-CAZH社 自社データセンター 喫煙室-
「最初に、ダウンしていた筈の蜘蛛が突然動いたのよ。一瞬だけどブレるように。高速で動いたのか、一瞬で位置がずれたわ。」
黒咲は今日の出来事について、禍月に説明を求められたので、煙草を吸いながら話すと言い、喫煙室に来ていた。
「なるほど。」
「おそらくこれかなって思って、敢えて受けてみる事にしたの。」
「危険極まりない行為だなー。」
「でも、受けてみないとなんとも言えないでしょう?」
「そりゃそうだけどさ。」
黒咲がやった事に対して、禍月は理解はしていても納得は未だに出来ないでいた。
「それで、攻撃を受けた後はどんな感じだい?」
一緒に来ていた美馬津が、話しの続きを促す。
「視界に蜘蛛の足が映ったのよ。自分の身体を引き裂いていく。吃驚した直後、視界が真っ赤になって【emergency】の文字が表示され、強制ログアウトさせられたの。」
黒咲は顎に指を当て、思い出すような仕草をしながら、今日の出来事を話す。
「なるほどなー。」
プレッツェルを齧りながら聞いていた禍月は、飲み込むとそれだけ言って考え込む。
「ユアキスも同じ状況だったのか、気になるなー。」
「そう言えば、彼も似たような事があったね。」
「あぁ、あの時はまだ、ユアキスは監視してなかったからな。とはいえ、受けた本人じゃないと分からない事もあるだろー?」
「言われてみれば確かに。」
禍月と美馬津が、当時の事を思い出しながら話す。その内容を聞いていた黒咲は、吸い込んだ紫煙を吐き出して口を出す。
「聞いてみればいいんでしょう?」
黒咲としては、当たり前の事を言っただけなのだが、禍月と美馬津は揃って黒咲の方を見た。
「その手があったなー。」
「うっかりしていたよ。パーティを組んでいるんだから、聞くことも出来るじゃないか。」
その二人の反応に、黒咲は苦笑した。
「あ、そろそろ僕は戻るよ、主任一人だし。ユアキス君はログアウトしているし、アリシア嬢も寝ているから何もないとは思うんだけど。」
「そうだったなー。あたしはもう少し聞いてから戻るなー。」
「分かった。」
美馬津は頷くと、煙草を口に運んで、紫煙を吸って吐き出すと火を消して出て行った。
「で、まりあ。」
「なに?」
禍月は目を細めると、口の端を少し吊り上げてにやりとする。
「おまえ、リアルで聞きに行くつもりだろー?」
「あら、気付いてた?」
黒咲は惚けるように言うと、煙草を吸い込んで紫煙を吐き出す。その顔は何処か楽しそうだった。
「そんな事だろうと思ったけどなー。だが、おそらくその方が正解だ。」
「そうなの?」
「ゲーム内だと色々と証跡が残るからなー。」
「確かに。あんな話しやこんな話しを見られと、恥ずかしいものね。」
「言ってろー。」
禍月は目を細め呆れた顔をすると、プレッツェルを齧りながら黒咲の微笑みを見る。
仕事に行く前の表情、戻ってからの堰を切った思い、禍月はそれを出来ればもう見たくはないと思っていた。だから、今の黒咲が楽しそうにしているのを見られるのは、何処か嬉しかった。
「それとな、もう一つ問題がある。」
「えぇ・・・なんか聞きたくないなぁ。」
「いや、聞け。」
目を細めたままの禍月が、プレッツェルを突き付けて言う。その態度はふざけているが、雰囲気が本気だと黒咲は悟って続きを待った。
「今日ELINEAってキャラに会っただろー?」
「あぁ、居たわね。また面白い事になっていたけど。」
「あれには絶対関わるな。」
「その理由は?」
禍月は手に持ったプレッツェルを銜えると腕を組んで黒咲を正面から見据える。
「ELINEAはCAZH社本社が、次期経営戦略の要にしようとしているAIのプロトタイプだからだ。当然、ELINEAが関わった事象に関してはすべてログに残る。」
聞いていた黒咲は顎に指を当てると、視線を上方へと動かし考える素振りをした。
「それは、良くないわね。私たちの痕跡はなるべく残したくは無いし。」
「そういう事だ。もしユアキスがパーティを組みたいと言い出した場合、何か理由を付けてでも抜けろー。」
「それは、その時に考える。」
黒咲はそういうとお道化るように笑ってみせるが、重要な事なのは承知しているだろう禍月は思い、その態度に関しては突っ込まない事にする。
「それより、蜘蛛の事、何かわかったの?」
「なんにも分からん。」
「何それ。」
即答した禍月の態度に、黒咲は言うとクスっと笑った。
「あたしが知る限り、ユアキスのパーティで都合3回。まりあも含めてな。だが、データはすべて正常、ログも正常ときてる。」
「バグ?」
「バグとは違う。なんだろうな、例えようがないなー。」
「でも、他の人にも起きているとしたら、かなりの数になるんじゃない?」
「まぁなー。今でもカスタマーサービスには、頻繁に問い合わせがあるらしい。一時期サービスを停止してまでメンテナンスを実施したが、何の解決もしていないけどなー。」
「でも、明らかに何かは起きている?」
「・・・」
黒咲の問いに、禍月は無言で頷いた。
「見当は?」
続けて黒咲が問うと、禍月は苦虫を噛み潰したような顔をする。その表情を見て、黒咲も現状を察した。
「現段階で口に出来るほど、ではないなー。」
「そう・・・」
「分からん話しをしていても埒があかん、あたしは戻るぞー。身体に何か異変があったらすぐ言えよー。」」
「分かった、おやすみ。」
黒咲の返事を禍月は背中で受けると、片手だけ上げて喫煙室を後にした。
もうすぐ睡眠に落ちそうな微睡みの中、携帯がメッセージの受信を知らせる。誰だよこんな時間にと思いつつも、半分眠りに入っているため、頭があまり回らない。
とりあえず携帯を手に取り、メッセージを確認した。
『晶社くん
またデートしよ、明日がいいな。
麻璃亜。』
一瞬で目が覚めた。
同時に、携帯を今度こそ投げつけた。
アホか!!
急に何を言い出してんだ。
だいたい、またってなんだよ。
まさかまたメッセージを送ってくるなんて思いもしなかった。
とりあえず、無視でいいか。
俺はそう思うと、枕から投げつけた携帯を取り、横に置くと再び眠りについた。
月下が不満を漏らしながら、タッキーの火炎弾で焔渦巻く槍斧を、蜘蛛の頭部に叩きつける。
蜘蛛が怯んだところで、マリアの二刀小太刀の12連斬が前部の足を切り刻む。耐久値がなくなり、蜘蛛がバランスを崩し傾く。
好機なんだが、姫の方を見ると、小さい蜘蛛に囲まれてそれどころじゃないようだった。
雑魚の蜘蛛は、攻撃力はそんなに無い。どちらかと言えば、妨害攻撃や状態異常を付与してくるのが鬱陶しい。蜘蛛の糸で、こちらの動きに制限をかけたり、毒状態にしてきたりと。
つまり、連携にうまくもっていけないんだ。それがこの敵の特徴なんだろうな。嫌な作りだ。
「でも、半分は過ぎた。」
「分かってるよぉ。」
不満を言いながらも攻撃の手は休めない。俺はもう一度、姫の方を確認する。
「姫、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。」
「ユアキス、後ろ!」
姫の返事と被るように、タッキーが声を上げる。それを聞いて慌てて振り向くと、起き上がった蜘蛛が前部の足を振り上げ打ち下ろし、それが俺に迫っていた。
(げ、避けれねぇ・・・)
そう思った瞬間、目の前にマリアが現れ、俺を体当たりで弾き飛ばす。
何やってんだ、俺。
マリアは微笑みながら、蜘蛛の足に叩かれ飛ばされ・・・
おい・・・
『マリア!』
俺とタッキーが同時に叫んだ。他のメンバーもその声に振り向くが、マリアの姿はもうそこに無かった。
蜘蛛の足はマリアの身体を引き裂くようにすり抜けた。おそらく、ミカエルの時と同じだ。
くそっ!
あれは一体なんなんだ!
「しっかりしないさいユアキス!今は何も出来ませんわ。」
アヤカの声で、一瞬の放心状態から戻ると、俺は再び蜘蛛への攻撃に戻った。
アヤカの言う通り、何も出来る事はない。今は戦闘に集中・・・いや、携帯で連絡出来るんじゃないか?
ふとそう思ったが、この戦闘を放り出す事になってしまう。ゲームより人体の安否の方が重要なのはわかっているが、他のメンバーの事も考えると放り出せない。
何より、俺が連絡出来る事を知られてしまう方が、マリアにとっても都合が悪いんじゃないかとも思えた。
そう言えば、マリアはCAZH社の依頼でゲームをしているんだったよな。なら、そっちに任せる方が正解か。
-CAZH社 自社データセンター サーバールーム 管理室-
「まりあ!!」
ディスプレイを見ていた禍月は、叫ぶと椅子を蹴倒して勢いよく立ち上がった。直ぐ様管理室のドアに駆け寄り、部屋を出ていく。
「禍月!」
それを見ていた美馬津も立ち上がり、ドアの方へ向かおうとする。
「落ち着け美馬津。」
「主任・・・」
だが八鍬に一喝され、美馬津はその場に立ち尽くした。
「私や美馬津がする事は心配ではあるまい。監視を続ける事だろう。黒咲の事は禍月に任せておけ。」
「はい、すいません。突然の出来事に動揺してしまって。」
美馬津は言いながら席に戻ると、ユアキス達が戦い続ける蜘蛛戦の監視に戻った。
「また同様の事象が発生する可能性もある。今は、監視を怠る方が問題だ。」
「そうですね。それこそ、禍月に怒られそうです。」
「そうだな。」
-同センター内 仮眠室-
「まりあ!」
DEWSをプレイするために、黒咲が横たわる仮眠室へと禍月は飛び込んで声を上げる。だが、黒咲はまだ横たわったままで動かない。
「おいまりあ!」
そう言って禍月は黒咲の傍に駆け寄る。
「うぉ・・・」
禍月が近付いたのと同時に、黒咲はむくりと上半身を起こすと、HMDを頭から取り外した。
「生きているならもっと早く起きとけー。」
「え、あぁ、ごめんね。ちょっと吃驚しちゃって。」
黒咲はそう言うと苦笑して見せる。
「身体に異常はないか?」
「えぇ、なんとも・・・」
禍月の心配に、黒咲は起き上がるとベッドから降りて身体を動かしてみる。前屈してみたり、捻ってみたりした後、伸びをして禍月の方を見る。
「うん、いつも通り。」
その言葉に禍月は安堵の息を吐く。
「まぁ、なんともないならいい。それより、何故わざわざ受けに行った?そんなもの、ユアキスに受けさせておけばいいだろー。」
禍月がそう言うと、黒咲は禍月の頬に掌をぽんと当てた。その行為に、禍月は若干戸惑う。
「だめだよ、晶社くんを巻き込んじゃ。これは、私たちの仕事でしょう?」
「そりゃ、そうだけど・・・」
禍月はまりあに何かある方が困ると続けようしたが、結局怒られそうだと思いその言葉は飲み込んだ。
「それで、攻撃を食らった時はどんなだった?」
「ちょっと待って、まだ戦闘中でしょ?」
「ん?ああ、そうだなー。」
「私、戻らないと。」
「何を言ってるんだー?こんな事が起きたんだ、一旦様子をみるもんだろー。」
禍月は心配するが、黒咲は微笑むとベッドに座り込んだ。
「解析していて。私が体験した事は後で話せるけど、この戦闘は今しかないよ。」
「そんな事はあっきーでも・・・」
「何れ帰すでしょ、大事なところは自分で確認したがるのが夢那でしょう?」
黒咲は禍月の言葉を遮って問い掛ける。
「まぁ、そうだ。」
「さぁ、戻って。ちゃんと見ててよ。」
「うむ。」
黒咲は禍月の返事を聞くと、HMDを頭にセットして横たわった。
「まぁ、言い出したら聞かないからなー。」
禍月は言いながら苦笑すると、仮眠室を出て管理室へと戻った。心配な事に変わりは無いが、黒咲の言う事が正しいのも承知しているから。
「ごめん、お待たせー。」
蜘蛛戦も終盤に差し掛かった頃、マリアが戻ってきた。ってなんで学生服にコスチューム変えて来てんだよ!
「似合う?」
似合う?じゃねぇよ、アホか!
「ばっちり似合ってます!」
お前も黙れ、むしろ雑魚蜘蛛にやられてしまえ!
出会った頃はチャイナ服だったが、少し前からは夏だって事で浴衣を着ていた。何個持ってるんだ・・・
まぁ、社会人なんだから、そこにお金を使うのは自由だけど。
ただ変えるのはいいとして、何故このタイミングだよ。
「いいなぁ、あたしも欲しい。」
月下が蜘蛛を適当に殴りながら、羨ましそうな眼をマリアに向ける。少ない小遣いで買えばいいだろ。
「ユアキス買ってよ。」
「ふざけんな!」
「ケチ!」
「うおぅ・・・俺を攻撃すんな!」
真面目に蜘蛛を攻撃しろよ。
「戦闘に普段着など、愚の骨頂ですわ。」
あぁ、ブレないってのは、たまにはまともな事を言うもんだなぁ。
「アヤカに賛成。」
マリアが何事もなく戻って来たことで、メンバーが何時もの状態に戻った。それまでは各々が心配していたんだろう、口数も減りもくもくと蜘蛛を倒す作業になっていたから。
「あぁ、疲れた・・・」
スニエフの街に戻るなり、月下が疲れた声で言うと地面に座り込む。
「雑魚がかなり鬱陶しかったね。」
「あぁ、確かにな。」
タッキーの言う通り、雑魚が邪魔で本体を攻撃しずらいのがもどかしい、というかうざかった。
「でも、マリアが無事で良かったです。」
「ほんとだよね。」
姫の言葉に、大いに頷くタッキー。それはどうでもいいとして、今回は本当にそれが一番だ。ミカエルの件を目の当たりにしているから、尚更だ。
「ちょっと吃驚したけど、大丈夫よ。」
「あれ、アヤカは?」
そう言えば見かけないなと思って疑問を口にする。
「もう鍛冶屋に行きましたよ。」
・・・
それは放っておくとして、俺はマリアに個人的な発言をする。
[大丈夫か?]
[あら、心配してくれるの、ありがと。問題ないわよ。]
[俺も似たような事があったからな。それだけだ。]
[そうなのね。良かったら今度、その時の事を教えて欲しいな。]
[別に構わないが。]
とりあえず本人が大丈夫だと言っているので問題ないだろう。俺も腕が吹っ飛んだ瞬間、驚いて強制ログアウトさせられたからな。
きっと今回のマリアも、そんな感じだろうと思った。
「今日はもう解散かな。」
「そだね。」
「クエストを見る限り、次からは普通のクエストみたいです。」
それならいい。流石にゴミ掃除の連続は面倒すぎる。
「きっとまた、ファイナルとか来るよね。」
「言うな。」
月下の発言にすかさず突っ込む。考えないようにしているだけだ。おそらくみんな、それは予想しているだろうが、言わないのは俺と同じ事を考えているからかもしれない。
「それじゃぁ、解散でいいのね。」
「あぁ、そうしよう。」
マリアに答えた俺の言葉を合図に、それぞれゲームを終了した。
-CAZH社 自社データセンター 喫煙室-
「最初に、ダウンしていた筈の蜘蛛が突然動いたのよ。一瞬だけどブレるように。高速で動いたのか、一瞬で位置がずれたわ。」
黒咲は今日の出来事について、禍月に説明を求められたので、煙草を吸いながら話すと言い、喫煙室に来ていた。
「なるほど。」
「おそらくこれかなって思って、敢えて受けてみる事にしたの。」
「危険極まりない行為だなー。」
「でも、受けてみないとなんとも言えないでしょう?」
「そりゃそうだけどさ。」
黒咲がやった事に対して、禍月は理解はしていても納得は未だに出来ないでいた。
「それで、攻撃を受けた後はどんな感じだい?」
一緒に来ていた美馬津が、話しの続きを促す。
「視界に蜘蛛の足が映ったのよ。自分の身体を引き裂いていく。吃驚した直後、視界が真っ赤になって【emergency】の文字が表示され、強制ログアウトさせられたの。」
黒咲は顎に指を当て、思い出すような仕草をしながら、今日の出来事を話す。
「なるほどなー。」
プレッツェルを齧りながら聞いていた禍月は、飲み込むとそれだけ言って考え込む。
「ユアキスも同じ状況だったのか、気になるなー。」
「そう言えば、彼も似たような事があったね。」
「あぁ、あの時はまだ、ユアキスは監視してなかったからな。とはいえ、受けた本人じゃないと分からない事もあるだろー?」
「言われてみれば確かに。」
禍月と美馬津が、当時の事を思い出しながら話す。その内容を聞いていた黒咲は、吸い込んだ紫煙を吐き出して口を出す。
「聞いてみればいいんでしょう?」
黒咲としては、当たり前の事を言っただけなのだが、禍月と美馬津は揃って黒咲の方を見た。
「その手があったなー。」
「うっかりしていたよ。パーティを組んでいるんだから、聞くことも出来るじゃないか。」
その二人の反応に、黒咲は苦笑した。
「あ、そろそろ僕は戻るよ、主任一人だし。ユアキス君はログアウトしているし、アリシア嬢も寝ているから何もないとは思うんだけど。」
「そうだったなー。あたしはもう少し聞いてから戻るなー。」
「分かった。」
美馬津は頷くと、煙草を口に運んで、紫煙を吸って吐き出すと火を消して出て行った。
「で、まりあ。」
「なに?」
禍月は目を細めると、口の端を少し吊り上げてにやりとする。
「おまえ、リアルで聞きに行くつもりだろー?」
「あら、気付いてた?」
黒咲は惚けるように言うと、煙草を吸い込んで紫煙を吐き出す。その顔は何処か楽しそうだった。
「そんな事だろうと思ったけどなー。だが、おそらくその方が正解だ。」
「そうなの?」
「ゲーム内だと色々と証跡が残るからなー。」
「確かに。あんな話しやこんな話しを見られと、恥ずかしいものね。」
「言ってろー。」
禍月は目を細め呆れた顔をすると、プレッツェルを齧りながら黒咲の微笑みを見る。
仕事に行く前の表情、戻ってからの堰を切った思い、禍月はそれを出来ればもう見たくはないと思っていた。だから、今の黒咲が楽しそうにしているのを見られるのは、何処か嬉しかった。
「それとな、もう一つ問題がある。」
「えぇ・・・なんか聞きたくないなぁ。」
「いや、聞け。」
目を細めたままの禍月が、プレッツェルを突き付けて言う。その態度はふざけているが、雰囲気が本気だと黒咲は悟って続きを待った。
「今日ELINEAってキャラに会っただろー?」
「あぁ、居たわね。また面白い事になっていたけど。」
「あれには絶対関わるな。」
「その理由は?」
禍月は手に持ったプレッツェルを銜えると腕を組んで黒咲を正面から見据える。
「ELINEAはCAZH社本社が、次期経営戦略の要にしようとしているAIのプロトタイプだからだ。当然、ELINEAが関わった事象に関してはすべてログに残る。」
聞いていた黒咲は顎に指を当てると、視線を上方へと動かし考える素振りをした。
「それは、良くないわね。私たちの痕跡はなるべく残したくは無いし。」
「そういう事だ。もしユアキスがパーティを組みたいと言い出した場合、何か理由を付けてでも抜けろー。」
「それは、その時に考える。」
黒咲はそういうとお道化るように笑ってみせるが、重要な事なのは承知しているだろう禍月は思い、その態度に関しては突っ込まない事にする。
「それより、蜘蛛の事、何かわかったの?」
「なんにも分からん。」
「何それ。」
即答した禍月の態度に、黒咲は言うとクスっと笑った。
「あたしが知る限り、ユアキスのパーティで都合3回。まりあも含めてな。だが、データはすべて正常、ログも正常ときてる。」
「バグ?」
「バグとは違う。なんだろうな、例えようがないなー。」
「でも、他の人にも起きているとしたら、かなりの数になるんじゃない?」
「まぁなー。今でもカスタマーサービスには、頻繁に問い合わせがあるらしい。一時期サービスを停止してまでメンテナンスを実施したが、何の解決もしていないけどなー。」
「でも、明らかに何かは起きている?」
「・・・」
黒咲の問いに、禍月は無言で頷いた。
「見当は?」
続けて黒咲が問うと、禍月は苦虫を噛み潰したような顔をする。その表情を見て、黒咲も現状を察した。
「現段階で口に出来るほど、ではないなー。」
「そう・・・」
「分からん話しをしていても埒があかん、あたしは戻るぞー。身体に何か異変があったらすぐ言えよー。」」
「分かった、おやすみ。」
黒咲の返事を禍月は背中で受けると、片手だけ上げて喫煙室を後にした。
もうすぐ睡眠に落ちそうな微睡みの中、携帯がメッセージの受信を知らせる。誰だよこんな時間にと思いつつも、半分眠りに入っているため、頭があまり回らない。
とりあえず携帯を手に取り、メッセージを確認した。
『晶社くん
またデートしよ、明日がいいな。
麻璃亜。』
一瞬で目が覚めた。
同時に、携帯を今度こそ投げつけた。
アホか!!
急に何を言い出してんだ。
だいたい、またってなんだよ。
まさかまたメッセージを送ってくるなんて思いもしなかった。
とりあえず、無視でいいか。
俺はそう思うと、枕から投げつけた携帯を取り、横に置くと再び眠りについた。
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後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
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