39 / 53
39.疑われました
しおりを挟む
数日後、夕飯の準備がひと段落して僕はお気に入りなった裏庭の東屋にいた。
「ハルカくーん。」
少し日が陰ってきた頃、なぜかエミリオさんが現れた。
「エミリオさん、どうしたんですか?」
「お土産。」
僕の問いに答えず、持っていた紙袋を渡してくる。お礼を言って受け取ると、中身はクッキーだった。
勧められて1枚食べると、さくっとした食感でとてもおいしい。
「とっても美味しいです。ありがとうござます。」
「でしょー。かわいこちゃんは皆、甘い物とお花と宝石が好きだよね。」
「なんですか、それ。」
思わず笑ってしまう。エミリオさんはなぜかよしよしと頭を撫でてくる。
「エミリオさん、僕のことでカイルさんに悪い噂があるんですか?知っていたら教えてください。」
噂について尋ねても、誰もその内容を気にしなくていいと教えてくれなかったけれど、ずっと気になっていた。
「聞いたよ、タリア嬢に襲撃されたんだって。災難だったねぇ。噂のこと知りたい?」
「はい。皆教えてくれなくて。お願いします。」
「うーん。ま、教えてもいいかな。
実はね、夜市に一緒に2人で行くっていうのは、いい関係ですよってことなんだよねー。カイルは全然浮いた噂なかったから、あの子は誰だって、皆興味津々なわけ。しかも、君たちいつもの如く、いちゃいちゃしてたでしょ。」
いい関係て、付き合ってるとか恋人とかそういうこと?そんな風に見られていたんだ。
「ハルカくんは、カイルが好きなんだよね。」
急に聞かれて言葉に詰まる。
恋愛感情抜きに人として、肯定すればよかったかもしれない。けれど、自分の気持ちを意識したばかりで、反応が遅れた。
「ふぅ~ん、やっぱりね。」
エミリオさんがにやりと笑う。頬が熱い。誤魔化しようがない。
「あの、カイルさんには言わないでください。」
せめて、これ以上カイルさんに迷惑をかけたくない。
「ねえ、それってほんとの気持ちって言える?」
急に聞かれた質問の意味が分からず戸惑う。
「ハルカくんは、ひとりで不安だったから、カイルが保護してくれて、優しくしてくれたから、そう思い込んでるだけじゃないの?そっちの方が都合いいもんね。」
「え……。」
「違う?」
考えてもなかったことを、鋭い目つきで言われて思考が停止する。至近距離で緑の目が冷たく光る。いつものニコニコしているエミリオさんとは違う雰囲気に、圧倒される。
「同じものを提供してくれるなら、他の誰か、でもいいんじゃない?」
「僕…違う……違います。」
声が震える。
「ふぅん?絶対に違うって言える?
最初に出会ったのが俺なら、俺のことを好きになったんじゃない?俺も同じ生活をさせてあげられるよ。」
エミリオさんは何を言っているのだろう。頭が真っ白になる。
言葉を発しない僕の頭をひと撫でして、考えてみて、という言葉を残してエミリオさんは居なくなった。
「ハルカくーん。」
少し日が陰ってきた頃、なぜかエミリオさんが現れた。
「エミリオさん、どうしたんですか?」
「お土産。」
僕の問いに答えず、持っていた紙袋を渡してくる。お礼を言って受け取ると、中身はクッキーだった。
勧められて1枚食べると、さくっとした食感でとてもおいしい。
「とっても美味しいです。ありがとうござます。」
「でしょー。かわいこちゃんは皆、甘い物とお花と宝石が好きだよね。」
「なんですか、それ。」
思わず笑ってしまう。エミリオさんはなぜかよしよしと頭を撫でてくる。
「エミリオさん、僕のことでカイルさんに悪い噂があるんですか?知っていたら教えてください。」
噂について尋ねても、誰もその内容を気にしなくていいと教えてくれなかったけれど、ずっと気になっていた。
「聞いたよ、タリア嬢に襲撃されたんだって。災難だったねぇ。噂のこと知りたい?」
「はい。皆教えてくれなくて。お願いします。」
「うーん。ま、教えてもいいかな。
実はね、夜市に一緒に2人で行くっていうのは、いい関係ですよってことなんだよねー。カイルは全然浮いた噂なかったから、あの子は誰だって、皆興味津々なわけ。しかも、君たちいつもの如く、いちゃいちゃしてたでしょ。」
いい関係て、付き合ってるとか恋人とかそういうこと?そんな風に見られていたんだ。
「ハルカくんは、カイルが好きなんだよね。」
急に聞かれて言葉に詰まる。
恋愛感情抜きに人として、肯定すればよかったかもしれない。けれど、自分の気持ちを意識したばかりで、反応が遅れた。
「ふぅ~ん、やっぱりね。」
エミリオさんがにやりと笑う。頬が熱い。誤魔化しようがない。
「あの、カイルさんには言わないでください。」
せめて、これ以上カイルさんに迷惑をかけたくない。
「ねえ、それってほんとの気持ちって言える?」
急に聞かれた質問の意味が分からず戸惑う。
「ハルカくんは、ひとりで不安だったから、カイルが保護してくれて、優しくしてくれたから、そう思い込んでるだけじゃないの?そっちの方が都合いいもんね。」
「え……。」
「違う?」
考えてもなかったことを、鋭い目つきで言われて思考が停止する。至近距離で緑の目が冷たく光る。いつものニコニコしているエミリオさんとは違う雰囲気に、圧倒される。
「同じものを提供してくれるなら、他の誰か、でもいいんじゃない?」
「僕…違う……違います。」
声が震える。
「ふぅん?絶対に違うって言える?
最初に出会ったのが俺なら、俺のことを好きになったんじゃない?俺も同じ生活をさせてあげられるよ。」
エミリオさんは何を言っているのだろう。頭が真っ白になる。
言葉を発しない僕の頭をひと撫でして、考えてみて、という言葉を残してエミリオさんは居なくなった。
318
あなたにおすすめの小説
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
神子の余分
朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。
おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。
途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる