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39.疑われました
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数日後、夕飯の準備がひと段落して僕はお気に入りなった裏庭の東屋にいた。
「ハルカくーん。」
少し日が陰ってきた頃、なぜかエミリオさんが現れた。
「エミリオさん、どうしたんですか?」
「お土産。」
僕の問いに答えず、持っていた紙袋を渡してくる。お礼を言って受け取ると、中身はクッキーだった。
勧められて1枚食べると、さくっとした食感でとてもおいしい。
「とっても美味しいです。ありがとうござます。」
「でしょー。かわいこちゃんは皆、甘い物とお花と宝石が好きだよね。」
「なんですか、それ。」
思わず笑ってしまう。エミリオさんはなぜかよしよしと頭を撫でてくる。
「エミリオさん、僕のことでカイルさんに悪い噂があるんですか?知っていたら教えてください。」
噂について尋ねても、誰もその内容を気にしなくていいと教えてくれなかったけれど、ずっと気になっていた。
「聞いたよ、タリア嬢に襲撃されたんだって。災難だったねぇ。噂のこと知りたい?」
「はい。皆教えてくれなくて。お願いします。」
「うーん。ま、教えてもいいかな。
実はね、夜市に一緒に2人で行くっていうのは、いい関係ですよってことなんだよねー。カイルは全然浮いた噂なかったから、あの子は誰だって、皆興味津々なわけ。しかも、君たちいつもの如く、いちゃいちゃしてたでしょ。」
いい関係て、付き合ってるとか恋人とかそういうこと?そんな風に見られていたんだ。
「ハルカくんは、カイルが好きなんだよね。」
急に聞かれて言葉に詰まる。
恋愛感情抜きに人として、肯定すればよかったかもしれない。けれど、自分の気持ちを意識したばかりで、反応が遅れた。
「ふぅ~ん、やっぱりね。」
エミリオさんがにやりと笑う。頬が熱い。誤魔化しようがない。
「あの、カイルさんには言わないでください。」
せめて、これ以上カイルさんに迷惑をかけたくない。
「ねえ、それってほんとの気持ちって言える?」
急に聞かれた質問の意味が分からず戸惑う。
「ハルカくんは、ひとりで不安だったから、カイルが保護してくれて、優しくしてくれたから、そう思い込んでるだけじゃないの?そっちの方が都合いいもんね。」
「え……。」
「違う?」
考えてもなかったことを、鋭い目つきで言われて思考が停止する。至近距離で緑の目が冷たく光る。いつものニコニコしているエミリオさんとは違う雰囲気に、圧倒される。
「同じものを提供してくれるなら、他の誰か、でもいいんじゃない?」
「僕…違う……違います。」
声が震える。
「ふぅん?絶対に違うって言える?
最初に出会ったのが俺なら、俺のことを好きになったんじゃない?俺も同じ生活をさせてあげられるよ。」
エミリオさんは何を言っているのだろう。頭が真っ白になる。
言葉を発しない僕の頭をひと撫でして、考えてみて、という言葉を残してエミリオさんは居なくなった。
「ハルカくーん。」
少し日が陰ってきた頃、なぜかエミリオさんが現れた。
「エミリオさん、どうしたんですか?」
「お土産。」
僕の問いに答えず、持っていた紙袋を渡してくる。お礼を言って受け取ると、中身はクッキーだった。
勧められて1枚食べると、さくっとした食感でとてもおいしい。
「とっても美味しいです。ありがとうござます。」
「でしょー。かわいこちゃんは皆、甘い物とお花と宝石が好きだよね。」
「なんですか、それ。」
思わず笑ってしまう。エミリオさんはなぜかよしよしと頭を撫でてくる。
「エミリオさん、僕のことでカイルさんに悪い噂があるんですか?知っていたら教えてください。」
噂について尋ねても、誰もその内容を気にしなくていいと教えてくれなかったけれど、ずっと気になっていた。
「聞いたよ、タリア嬢に襲撃されたんだって。災難だったねぇ。噂のこと知りたい?」
「はい。皆教えてくれなくて。お願いします。」
「うーん。ま、教えてもいいかな。
実はね、夜市に一緒に2人で行くっていうのは、いい関係ですよってことなんだよねー。カイルは全然浮いた噂なかったから、あの子は誰だって、皆興味津々なわけ。しかも、君たちいつもの如く、いちゃいちゃしてたでしょ。」
いい関係て、付き合ってるとか恋人とかそういうこと?そんな風に見られていたんだ。
「ハルカくんは、カイルが好きなんだよね。」
急に聞かれて言葉に詰まる。
恋愛感情抜きに人として、肯定すればよかったかもしれない。けれど、自分の気持ちを意識したばかりで、反応が遅れた。
「ふぅ~ん、やっぱりね。」
エミリオさんがにやりと笑う。頬が熱い。誤魔化しようがない。
「あの、カイルさんには言わないでください。」
せめて、これ以上カイルさんに迷惑をかけたくない。
「ねえ、それってほんとの気持ちって言える?」
急に聞かれた質問の意味が分からず戸惑う。
「ハルカくんは、ひとりで不安だったから、カイルが保護してくれて、優しくしてくれたから、そう思い込んでるだけじゃないの?そっちの方が都合いいもんね。」
「え……。」
「違う?」
考えてもなかったことを、鋭い目つきで言われて思考が停止する。至近距離で緑の目が冷たく光る。いつものニコニコしているエミリオさんとは違う雰囲気に、圧倒される。
「同じものを提供してくれるなら、他の誰か、でもいいんじゃない?」
「僕…違う……違います。」
声が震える。
「ふぅん?絶対に違うって言える?
最初に出会ったのが俺なら、俺のことを好きになったんじゃない?俺も同じ生活をさせてあげられるよ。」
エミリオさんは何を言っているのだろう。頭が真っ白になる。
言葉を発しない僕の頭をひと撫でして、考えてみて、という言葉を残してエミリオさんは居なくなった。
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