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正月
しおりを挟む結婚してからはじめて迎える正月を前に、マヒナは一生懸命支度をした。夫とともに堂内の掃除に参加したり、義母や檀家のおばさまたちと一緒に正月三が日の精進料理を準備したり、ここ数日は離れにこもる暇もないくらいにばたばたと動き回っていた。
寺院が忙しいのは新年よりもその後に控えている宗教行事や大晦日の除夜の鐘だとキヨミネは言っていたが、田舎の小規模な寺である海峯寺で大晦日の鐘を鳴らすことはせず、近所にあるおおきな寺院がその役割を全うしている。
外はしんしんと雪が降りつづいている。雪は明け方までやまない予報だ。山の麓に位置するこの寺を新年早々訪れる物好きもいないだろう。
だからようやくゆっくりできるねと離れに戻ってふたりきりで年越しそばをすすっていたマヒナは、彼が用意してくれた熱燗片手に、雪見酒を楽しんでいた。
「キヨミネさんも、お疲れさまでした」
「俺はたいしたことしてないですよ」
そう言って、作務衣姿のキヨミネがにこっと笑う。もこもこのフリースを着ているマヒナと比べたらずいぶん薄着だが、平然としている。それでも彼の手は氷のようにひんやりしている。
「冷たっ」
「マヒナの手があたたかいんですよ」
「で、でもこのままじゃ風邪ひいちゃいます。はやくお風呂に」
「お風呂なら、夕方に入ってるよ。マヒナももう入っただろう?」
「あ、じゃあ、お布団!」
その言葉にキヨミネが目をまるくする。
「それって、誘ってる?」
「……い、いえ」
「一緒にお布団はいって、あたためてくれるんだ?」
時計の針はすでに午前零時をまわっている。お蕎麦を食べて、熱燗を呑んでいるうちに年越しを迎えていたらしい。このまま彼と布団にはいったら……マヒナが潤んだ瞳で彼を見やれば、勝ち誇った表情でキヨミネが彼女の身体をぎゅっと抱きしめる。
「三が日の予定はないから、このまま寝正月といこうじゃないか」
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