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光と闇 (ラヨネ視点)
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何故、この人はこんなにも力強くて美しいのだろう。
何時だって一切ブレる事のない意志の宿ったその夜空色の瞳を見て、そう思った。
「お前に何があったのかは知らないが、お前が色んな大切なもんを失った事は分かってる。沢山辛い経験をしてお前はそれでも必死に足掻いて、生きてきたんだろ? 」
これがただの同情からくる言葉なら僕はただ泣いて「辛かったんだ。」とコタに甘えていた。しかし、その顔には一切の同情はなく、対等な立場で真っ直ぐに『僕』を見ていた。
「その強さは力や優れた身体能力なんざより誇れる強さだと俺は思うけどな。」
夜空色の瞳が細まり、視界に笑顔が咲き誇る。
それはとても力強く輝いていて、僕を認めないこの世界で唯一僕を照らしてくれる。
ー なんて綺麗なんだろう。
欲しくて欲しくてしょうがないその愛おしい光。その光の前ではどんなにこびりつくように暗い感情でも一瞬で吹き飛んでしまう。
胸が高鳴り、頰が熱くなり、その光を見ていたいのに目が潤む。
今すぐに手を伸ばして腕の中に完全に閉じ込めてしまいたい。しかし、閉じ込めるにはこの手は小さ過ぎる。独り占めしたいけど、それをするには僕にはその力が足りない。あのムカつくエルフにすら一泡吹かす事ができないのだから。
ー それでも……。
この想いだけは捨てられない。
半獣人だから、リスだからと諦めたくない。
地位も、プライドも全て奪われてもその理由だけでしょうがないんだと諦められたのに。
これだけは、この愛だけは捨てられない。
絶対に手に入れる。
絶対にアイツから奪ってやる。
ー・ー なら、気張らにゃーね ー・ー
ふと、声が耳元で聞こえ、振り返った。
振り向き様に一瞬、白と黒の縞々の尻尾のようなものが見えた気がしたが、そこには誰も居なく、パチリと静電気が青い光を散らしていた。
ー また、静電気。
最近、冬でもないのに常に静電気が僕の身体に帯びている気がする。感情が高まるとパチパチと音を立てて光を散らす。
しかし、この青い光は何時もの静電気とは何か違う気がする。
それが何か知りたくて、その青い光に手を伸ばそうとしたが…、
「コタの旦那ば、言う通りっ!! 背も手も心配ばせんでもその内、たーんとデカくなるとよっ。」
モモの声で視線が逸れ、青い光は何処かへ消えてしまった。そしてモモは考えなしにそのプニプニで無駄に大きくてコタに羨望の眼差しを受けていた忌々しいその手で僕の背に一発入れようとした。
なんでこの阿呆は気軽に僕のパーソナルスペースに入ろうとしてくるのか?
…ああ、気さくだから? 僕からしたら気さく通り越して図々しいけどね。
折角、コタで幸せ一杯なのにこの阿呆はッ。
嫌で嫌でコタにギュッと抱きつくと空を引き裂くような激しい雷鳴のような音が響いた。
どれだけ、全力でこの阿呆は人の背中を叩いたのかとキッと睨むがモモの手は振り上げたままでその顔は明後日の方向を向いていた。
轟々と燃え盛る先程、コタ達が喧嘩していたコボルトの集落。
空を走る白い稲妻。稲妻から逃げ惑うコボルト達は次々と炎の中から現れた黒い影達に襲われ、倒れていく。
目を凝らし、その黒い影の一つを見やるとその見覚えのある姿に身体を強張らせた。
『安心しろ。俺は優しいからな。ギロチンにかけられてお前の首が身体からお別れするまできちんと見守っててやるよ。』
頭の中で檻の隙間から見えたニヤッと悪意に染まる笑みが再生される。あの冷たいアイスブルーの瞳は赫く染まり、灰色の毛は赤黒くなっているが、嫌でも一目見ただけで理解した。
ガブリッとコボルトに噛み付いたソイツの赫い瞳が不意にこちらを映し、ニンマリと邪悪な笑みを浮かべた。
「見つけた。」
大きな口が視界一杯に広がる。
そして目の前は赤一色に染まった。
何時だって一切ブレる事のない意志の宿ったその夜空色の瞳を見て、そう思った。
「お前に何があったのかは知らないが、お前が色んな大切なもんを失った事は分かってる。沢山辛い経験をしてお前はそれでも必死に足掻いて、生きてきたんだろ? 」
これがただの同情からくる言葉なら僕はただ泣いて「辛かったんだ。」とコタに甘えていた。しかし、その顔には一切の同情はなく、対等な立場で真っ直ぐに『僕』を見ていた。
「その強さは力や優れた身体能力なんざより誇れる強さだと俺は思うけどな。」
夜空色の瞳が細まり、視界に笑顔が咲き誇る。
それはとても力強く輝いていて、僕を認めないこの世界で唯一僕を照らしてくれる。
ー なんて綺麗なんだろう。
欲しくて欲しくてしょうがないその愛おしい光。その光の前ではどんなにこびりつくように暗い感情でも一瞬で吹き飛んでしまう。
胸が高鳴り、頰が熱くなり、その光を見ていたいのに目が潤む。
今すぐに手を伸ばして腕の中に完全に閉じ込めてしまいたい。しかし、閉じ込めるにはこの手は小さ過ぎる。独り占めしたいけど、それをするには僕にはその力が足りない。あのムカつくエルフにすら一泡吹かす事ができないのだから。
ー それでも……。
この想いだけは捨てられない。
半獣人だから、リスだからと諦めたくない。
地位も、プライドも全て奪われてもその理由だけでしょうがないんだと諦められたのに。
これだけは、この愛だけは捨てられない。
絶対に手に入れる。
絶対にアイツから奪ってやる。
ー・ー なら、気張らにゃーね ー・ー
ふと、声が耳元で聞こえ、振り返った。
振り向き様に一瞬、白と黒の縞々の尻尾のようなものが見えた気がしたが、そこには誰も居なく、パチリと静電気が青い光を散らしていた。
ー また、静電気。
最近、冬でもないのに常に静電気が僕の身体に帯びている気がする。感情が高まるとパチパチと音を立てて光を散らす。
しかし、この青い光は何時もの静電気とは何か違う気がする。
それが何か知りたくて、その青い光に手を伸ばそうとしたが…、
「コタの旦那ば、言う通りっ!! 背も手も心配ばせんでもその内、たーんとデカくなるとよっ。」
モモの声で視線が逸れ、青い光は何処かへ消えてしまった。そしてモモは考えなしにそのプニプニで無駄に大きくてコタに羨望の眼差しを受けていた忌々しいその手で僕の背に一発入れようとした。
なんでこの阿呆は気軽に僕のパーソナルスペースに入ろうとしてくるのか?
…ああ、気さくだから? 僕からしたら気さく通り越して図々しいけどね。
折角、コタで幸せ一杯なのにこの阿呆はッ。
嫌で嫌でコタにギュッと抱きつくと空を引き裂くような激しい雷鳴のような音が響いた。
どれだけ、全力でこの阿呆は人の背中を叩いたのかとキッと睨むがモモの手は振り上げたままでその顔は明後日の方向を向いていた。
轟々と燃え盛る先程、コタ達が喧嘩していたコボルトの集落。
空を走る白い稲妻。稲妻から逃げ惑うコボルト達は次々と炎の中から現れた黒い影達に襲われ、倒れていく。
目を凝らし、その黒い影の一つを見やるとその見覚えのある姿に身体を強張らせた。
『安心しろ。俺は優しいからな。ギロチンにかけられてお前の首が身体からお別れするまできちんと見守っててやるよ。』
頭の中で檻の隙間から見えたニヤッと悪意に染まる笑みが再生される。あの冷たいアイスブルーの瞳は赫く染まり、灰色の毛は赤黒くなっているが、嫌でも一目見ただけで理解した。
ガブリッとコボルトに噛み付いたソイツの赫い瞳が不意にこちらを映し、ニンマリと邪悪な笑みを浮かべた。
「見つけた。」
大きな口が視界一杯に広がる。
そして目の前は赤一色に染まった。
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