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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります

1 祈り

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 どこで見た女神さまよりも、慈愛に溢れ優しい微笑みを浮かべているように見えた。
 天井近くの窓から差し込む陽の光に、女神さまがキラキラ輝いているように見える。
 この場所は、なんて綺麗なんだろう。
 微かに歌うような笑うような囁くような音が聞こえるけど、それが心地良い。騒がしくはなく、静寂。不思議だ。なんだろう、この感覚。

 気がついたら、僕は前に進み出ていた。
 二人の手を離して。

「フィー?」
「ディー、静かに」

 僕は自然とその場に膝をついた。
 今まで何度も何度も繰り返した祈りの姿勢。
 僕が一番落ち着くこと。

 ふわりと、何かに包まれる。
 優しくてあたたかい。
 お母さんの腕の中のような優しさ。
 ディーとエルの腕の中のような安心感。

 女神さま。

 僕の祈りは届いていますか?




『よく来たね。私の愛し子よ』




 ……それは、空耳だったかもしれない。
 甘いようで厳しくて、高いようで低くて、女性のような男性のような、よくわからない声で。

 女神さま、聞いてください。
 僕には大事な人がいます。
 きっと、家族よりも大切です。
 彼らは冒険者になりました。
 僕は彼らのために女神さまのお力を使いたいのです。
 誰にでも優しくはできない僕は、女神さまのお力を使うのにふさわしくはないですか?
 唯一無二の僕のかけがえのない人のためだけに、僕はあり続けたいんです。




 二人が無事でありますように。
 二人が怪我をしませんように。
 二人が幸せでありますように。




 僕が二人のためだけに祈ることを、許してほしいです。
 泣きたくなるくらい好きなんです。
 失いたくないんです。
 彼らのために僕ができることはとても少なくて。
 村でもずっと祈りました。
 彼らのことだけを祈ってました。
 僕にはそれしかできなくて。
 ひたすら女神さまにお願いすることしかできなくて。
 こんな僕じゃ、だめですか?

「……綺麗」

 ふわりふわりとあたたかい光が僕を包んでる気がする。

 春の日の木漏れ日のような。
 夏の朝の澄んだ空気のような。
 秋の燃えるような茜色のような。
 冬の夜の静寂のような。

 ……ああ。
 気持ちがいい。




「随分と熱心に祈っているね。君がラルフィン君かな?」

 突然かけられた声に、僕の意識は一気に現実に引き戻された。
 気持ちの良かったふわふわが消えていく。

「君の祈りは素晴らしいね。それほど純粋なものは久しく見なかったよ」
「……え、と」

 まだ頭がぼうっとしてる。
 僕に声をかけたのは、受付の女性神官さんと似たような白装束を身に着けた、お父さんよりちょっと年上の感じの男の人。雰囲気はとっても優しい。

「ああ、すまないね。私はこの神殿を任されている神殿長のヒューベルト・オリバーだ。ラルフィン君」

 ……ああ、そっか。
 この人が神殿長なんだ……って、なんだかとってもストンと理解した。


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