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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
15 ディーとの不適切な関係/L
しおりを挟む「…フィーの夢見た」
「…俺も」
目の前に出されたソーセージにフォークを刺しながら、なんだかぼーっとしてた。
隣りに座ったディーも、いつものハキハキした感じがなくて、どこかぼーっとしてる。
フィーのいない朝。
村を出てから、朝の目覚めはフィーにキスをするところからだった。
時間が許せば結構長い時間、フィーの寝顔を見ていた。もちろん、ディーと一緒に。
「はぁ……」
頬杖をついて、ため息を付きながら、手元のフォークをくるくる回しながらただただ眺めていた。
「…お前ら」
頭上からかかる声に顔を上げると、呆れた店主と目が合った。
「なに……」
「レヴィ殿?」
「お前ら…自分たちが注目されてるってわかってるか?」
「……ああ。まあ」
ディーが曖昧に答えた。
気づかないわけないけど、私にしても気にしてるような気力はないんだから。
「昨日から聞いてくる輩が多いんだよ。お前らは恋人同士なのか、ってな」
「恋人…?」
「え?私とフィー?うん、きっと恋人だよ」
「…エルだけじゃないだろ」
「ああ、ごめんごめん。私達の、ね?」
「そ。俺達の、だ」
正確に言えばまだ恋人じゃないけど。恋人になる前にプロポーズしてるけど。
「いやいや」
私達がフィーのことを想ってため息をついていたら、また、店主の呆れた声。
「あの坊主のことじゃなくて、お前ら二人のことだよ」
「「は?」」
「ディーとエルが、恋人同士なのか、ってな」
「「え、なんで?気持ち悪い」」
「……息合いすぎ。同じピアスしてるだろ?それも、片側ずつに。それに、ほら、今のエルの気だるそうな様子がな?……ディーと散々ヤったんだろう、ってな?」
私の手からフォークが落ちた。
カウンターから後ろを振り向いたら、何人もわざとらしく顔を背けた。
「………なんで、どうして、よりにもよってディーなんかと……。私はフィーに突っ込みたいのに…。フィーになら突っ込まれてもいいとは思うけど、ディーとなんて死んでも嫌……」
「おま……、色々だだ漏れだから……っ」
「ううう……」
「…まあ、いいんじゃねぇの。勘違いされてたほうが変な輩が近づいてこないだろうし」
「事実無根でも勘違いされてるのはなんか嫌…。ディーと浮気してるみたいでいたたまれない……」
フィー、フィー。
お願いだから誤解しないで。
私とディーはそんな関係じゃないよ?
「フィーに会いたい…。神殿に行こうかな…」
「昨日の今日だろ。それに、神殿に行ったって簡単には会えないぞ。それよりさっさと食べろ。手合わせしたら、依頼受けるから」
うなだれたままの私の額を、ディーが容赦なく指で弾いてきた。
結構痛いのだが。
「わかった」
気分の切り替えはできた。
額はひりひりしてるけど。
「とりあえず、店主」
「なんだ」
「うしろの人たち、しめてもいい?」
途端、背後からガタガタと椅子の音がする。
「宿内での乱闘騒ぎはご法度だ。やるなら、俺に迷惑のかからない外でな?」
ニヤリと笑う店主。
ヤっちゃっていいんだ。冒険者同士はだめとか言われるかと思った。
「手合わせの前に食後の運動でもしようかなぁ?なんか、めちゃくちゃ動きたい気分なんだよねぇ」
わざとらしく声を上げたら、背後からは更にバタバタと気配がする。
再び振り向いたら、何人か目が合った。だらだらと汗をかきながら、そいつらは宿の中に居座る。うん。正しい判断だよね。
「ディー、後でね」
「やりすぎるなよ。実害はないんだから」
「手加減するよ。…ほら、私達って、駆け出しの冒険者だし?先輩方の力量も見ておきたいからね?」
ふふふ…と笑った私を見て、店主が肩をすくめた。
さーてと。
お仕置きしないとね?
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