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竜司と子猫の長い一日

僕が竜司さんにお持ち帰りされた件

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「……お。椅子一つ分詰めた?ほら、のぞみちゃん、カフェオレサービスな。竜司のブラックな」
「ん」
「ありがとうございます!」

 奥から戻ってきたマスターが、僕にもコーヒー(カフェオレだけど)を用意してくれた。
 ミルクたっぷりで、少し甘いやつ。

「まあ、それよりのぞみちゃん、今日はそいつにしときな?」
「……だって、子供扱いするし」
「可愛くて構ってるだけだろ?……竜司が相手なら、俺も心配しなくて済むし」
「マスターは、自分の知り合い同士が……とか、嫌じゃないの?」
「竜司のただれた生活は今まで散々見てきたしな」
「おい」
「俺としてはのぞみちゃんの方が心配なんだよ。いつも変態捕まえてはその後揉めるし」

 マスターは、本当に面倒見のいい、凄く優しい人だ。
 誰からも望まれない僕を、こうやって心配してくれる。
 実の親でさえ、こんなふうに心配なんてしてくれたことないのに。

「……ごめんなさい」
「謝ることはないよ。……まあ、でも、俺に心配させるのが申し訳無いって思うんなら、今日はこいつにしておけ?別に、これからずっとセフレにしろとか、付き合えとか、そういうことじゃなくてな?……いつもすれ違ってたお前らが今日たまたま会ったのも、何かの縁だと思うぞ?」
「……うん。でも、りゅうじさん、僕じゃ勃たないって言ったし」
「あ?」

 マスターがじろりとりゅうじさんを見た。
 りゅうじさんは肩をすくめて、やれやれ、みたいなポーズを取ってる。

「かもな、って言っただけだろ?」
「お前はまたそんなふざけたことぬかしやがって」
「事実だろ?誰とヤったって、勃たないときは勃たないんだよ。それでも俺は申込みはしたんだから、あと決めるのはそいつなんだ」

 ……確かに、『リュージ』からの申込みはキャンセルされてない。僕の承認待ちになってる。

「なあ」

 一度離れていた手が、また僕の頭に置かれた。
 りゅうじさんは、顔を僕に近づけると、耳元に口を寄せてきて。

「俺をその気にさせる自信ないの?」

 ……って、僕を挑発するように囁いてきた。
 鼓膜を震わす低音が凄く心地よくて、僕はそのまま『承認』のボタンを押していた。

「─⁠─⁠─⁠ん、じゃあ行くか。大志ひろゆきこれ飯代。二人分な」
「え」
「はい、毎度。いいか、竜司。くれぐれものぞみちゃんのこと壊すなよ。俺の弟みたいなもんなんだからなっ」
「はいはい。てかさ、弟みたいに大事にしてる子、なんでわざわざ俺みたいなやつに預けるかね」
「仕方ないだろ。それでもお前がまともな奴だって知ってるんだから」
「褒め言葉か?」
「親友として信頼してるってことだよ」
「わかったわかった。……ほら、行くぞ」
「え、あの、ご飯代……っ」
「俺が出したから」
「いや、だから、僕もちゃんと……」
「いいから」

 りゅうじさんは僕の手を掴んで立たせると、マスターが手を振ってる間に、僕を引っ張って店を出た。
 大きな手に握られたまま、少し歩いて駐車場に着く。

「はい乗って」

 ……って、躊躇いなく助手席のドアを開けられて、頭の中いっぱいになったまま、僕はその車に乗り込んでた。
 車の種類とか名前とか全然知らないけど、助手席のシートは凄く座り心地がいい。

「シートベルト付けてな」
「あ、はい」

 運転席に乗り込んできたりゅうじさんに指摘されて、あたふたとシートベルトをする。
 そんな僕をじっと見て、カチャンって音がしたら車はゆったりと走り始めた。
 ……車、緊張する。
 ドライブに行こうって連れ出されて、下半身丸出しにされて、ずっとペニスをいじられたこともあったっけ……。

「ぷ」

 僕がカチコチになってるのを見たりゅうじさんが、吹き出して笑い始めた。

「なにそんなに緊張してるんだよ」
「……車、あまり乗りなれなくて」
「家族とドライブとかするだろ?」
「しません。……小学生の時はあったかもしれないけど、中学入ってからそんな旅行みたいなのしたことないし…。それに……、……車乗ったら、色々、されるし……」
「ふぅん……色々、ねぇ」

 そんな相槌を打ったりゅうじさんの左手が、いきなり僕の股間に伸びてきて、服の上から無反応の僕のペニスを撫でてきた。

「…っ」
「車に乗りながらこんなことされたことあるんだ?」
「……あるっ」
「どんなふうにされたの?」
「……ズボンとか、全部脱げ、って、言われてっ。足、広げて、アナルにディルドいれて、左手でずっとペニスいじられて……っ」
「夜?」
「……ううん……、ひる、ま」
「ムリヤリされたの?」
「違う…。そのとき付き合ってた人…。好きだから、何されても許せて……」
「…………なるほどねぇ」

 りゅうじさんは何かに納得して、僕から手を離した。

「あ……」

 手で少しこすられて、僕のそこは微かに反応し始めていたけど、手を離されたことにホッとしたのも事実。

「従わないと嫌われる、って思ってたんだろ?……怖かったな。昼間っからやらされることじゃねぇよな」
「………っ」

 たった今、同じようなことしてたじゃんっ、ていう抗議はでてこなかった。
 りゅうじさんの左手が僕の肩を引き寄せて、運転中だというのに寄りかからせてくれて。
 ……不覚にも、ほんの少し、泣きそうになってしまった。



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