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少女時代
ヘルブズ山 1
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「おっ、そうかい。ゴブリンに会ったんだねぇい」
「笑い事じゃないですよ、ヴィヴィ」
今日はカモミールだろうか?
師匠であるヴィヴィは黒く艶のある髪をかき上げて、カップのハーブティーの匂いを嗅ぐと頷く。
私が危険の時もこんな風に危険の少ないヘルブズ山でのんびりしていたのだろう。
でも、弟子の初めての出張なんだから、もう少し心配してくれてもいいんじゃないかと、私は少し腹が立った。
「なんで、そんなに落ち着いているんですか、ヴィヴィ。弟子の一大危機だったんですよ」
「ちっ」
「ん?」
私は舌打ちをした方向を見るけれど、妹弟子のイザベラしかいない。長い髪の隙間から片目だけ出しておどおどした妹弟子。
「ねぇ、イザベラ。私とアボットにもお茶を頂戴」
「・・・はい」
返事をしたイザベラはお茶を取りに行ってくれる。
ちょっとどん臭いけれど、お願いをすれば、ある程度のことは何でもしてくれる。
「本当に、なんと感謝を言っていいのやら。ありがとうございました。ヴィヴィ様」
アボットがヴィヴィにお礼を言う。
ちょっとだけ、顔が赤い気がする。
「いてっ」
私はとりあえず、足を踏んでおいた。
これは嫉妬ではない。
アボットのだらしないところをしっかり見せておかないといけない使命感だ。
ヴィヴィがアボットに惚れないように、だ。
(あれっ・・・おかしいな?)
自分の考え方が変な気がするけれど、まぁいいか。
「でも、ゴブリンか・・・。不味いかもしれないが、栄養はかなりあったはずだ。滋養強壮に・・・いや、精力増大か・・・ふふっ、どうだいキミ」
「えっ、俺っすか。いいっす、いいっす」
メチャクチャ嫌そうな顔をするアボット。
「あらあら、アボットは弱虫なのかしら。ふふっ」
私はアボットをからかう。
「んだとっ!?おっ・・・ふふん。あぁ、あったら飲むさ。だけど、残念ながらここには・・・」
「代わりがあるねぇい」
「へっ」
あぁ、師匠がおもちゃを見つけた時に見せる悪戯っ子の笑顔だ。
私の笑顔に悪意があるなんて言われるのもこの笑顔を何度も見せられたからかもしれない。
「意外と胆力がありそうだし、2本いっとくかねぇい?」
「へへっ?」
「ささっと、そして、ぐぐっとぉおっ」
いつもだらだらしているヴィヴィだけれど、こういうところだけは動きが速い。
「うごおっ、ごくっごくっ・・・ん」
怪しいものは吐き出せ、そう教わっている私とイザベラなら絶対に吐き出す。
まぁ、さすがにヴィヴィも変な物は飲ませないと思うが・・・
「うぉおおおおおおっ」
腕に血管が浮き出る。
”男らしい”っていうのはこういうのを言うのかしら?
怖さと、女性とは違った”美しさ”を感じた。
(いやいや、あいつは所詮兵士Aだって、私っ)
職業病だろうか。
薬以外にも新しい物を見ると、ときめいてしまう私。
(そうよ、物珍しいだけ・・・すぐに飽きてしまうに違いない)
でも、いつもよりちょっと違う心の高鳴りだったような気がして、私はその理由を探そうとしていたけれど、もう一人の私がそれを止めた。私は初めて、知らない扉をまだ開けたくないと思ったかもしれない。
「笑い事じゃないですよ、ヴィヴィ」
今日はカモミールだろうか?
師匠であるヴィヴィは黒く艶のある髪をかき上げて、カップのハーブティーの匂いを嗅ぐと頷く。
私が危険の時もこんな風に危険の少ないヘルブズ山でのんびりしていたのだろう。
でも、弟子の初めての出張なんだから、もう少し心配してくれてもいいんじゃないかと、私は少し腹が立った。
「なんで、そんなに落ち着いているんですか、ヴィヴィ。弟子の一大危機だったんですよ」
「ちっ」
「ん?」
私は舌打ちをした方向を見るけれど、妹弟子のイザベラしかいない。長い髪の隙間から片目だけ出しておどおどした妹弟子。
「ねぇ、イザベラ。私とアボットにもお茶を頂戴」
「・・・はい」
返事をしたイザベラはお茶を取りに行ってくれる。
ちょっとどん臭いけれど、お願いをすれば、ある程度のことは何でもしてくれる。
「本当に、なんと感謝を言っていいのやら。ありがとうございました。ヴィヴィ様」
アボットがヴィヴィにお礼を言う。
ちょっとだけ、顔が赤い気がする。
「いてっ」
私はとりあえず、足を踏んでおいた。
これは嫉妬ではない。
アボットのだらしないところをしっかり見せておかないといけない使命感だ。
ヴィヴィがアボットに惚れないように、だ。
(あれっ・・・おかしいな?)
自分の考え方が変な気がするけれど、まぁいいか。
「でも、ゴブリンか・・・。不味いかもしれないが、栄養はかなりあったはずだ。滋養強壮に・・・いや、精力増大か・・・ふふっ、どうだいキミ」
「えっ、俺っすか。いいっす、いいっす」
メチャクチャ嫌そうな顔をするアボット。
「あらあら、アボットは弱虫なのかしら。ふふっ」
私はアボットをからかう。
「んだとっ!?おっ・・・ふふん。あぁ、あったら飲むさ。だけど、残念ながらここには・・・」
「代わりがあるねぇい」
「へっ」
あぁ、師匠がおもちゃを見つけた時に見せる悪戯っ子の笑顔だ。
私の笑顔に悪意があるなんて言われるのもこの笑顔を何度も見せられたからかもしれない。
「意外と胆力がありそうだし、2本いっとくかねぇい?」
「へへっ?」
「ささっと、そして、ぐぐっとぉおっ」
いつもだらだらしているヴィヴィだけれど、こういうところだけは動きが速い。
「うごおっ、ごくっごくっ・・・ん」
怪しいものは吐き出せ、そう教わっている私とイザベラなら絶対に吐き出す。
まぁ、さすがにヴィヴィも変な物は飲ませないと思うが・・・
「うぉおおおおおおっ」
腕に血管が浮き出る。
”男らしい”っていうのはこういうのを言うのかしら?
怖さと、女性とは違った”美しさ”を感じた。
(いやいや、あいつは所詮兵士Aだって、私っ)
職業病だろうか。
薬以外にも新しい物を見ると、ときめいてしまう私。
(そうよ、物珍しいだけ・・・すぐに飽きてしまうに違いない)
でも、いつもよりちょっと違う心の高鳴りだったような気がして、私はその理由を探そうとしていたけれど、もう一人の私がそれを止めた。私は初めて、知らない扉をまだ開けたくないと思ったかもしれない。
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