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恋人
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「これが『面倒だから子供は要らない』なんて言ったのと同じ人なのかしらね」
「えっ…俺そんなこと言ったかな。は~い、乃笑留ちゃんミルクでちゅよ~」
洋介は乃笑留を抱いている小百合に、ミルクをそう言って渡した。
乃笑留を産んだ後、初乳だけは飲ませたものの小百合は投薬を再開しなければならなかったため、それ以降母乳を乃笑留に与えることができなかった。まるでセンサーでも付いているのかと思うほど乃笑留が泣くたびに小百合の乳は張る。その度小百合の胸は痛んだ。
「俺は却って良かったと思ってるよ」
それに対して洋介はそう答えた。
「どうして?」
「ミルクなら俺にでもできる。おっぱいは俺には逆立ちしたって無理だからな。その間完全に大事な恋人を独り占めされるしな」
「恋人って……私より乃笑留の方が大事なの。『俺を一人にしないでくれ』って言ったのは一体誰?」
それを聞いた小百合は、そういって洋介を睨む。だが、
「バカだな、俺はお前にも乃笑留にもどっちもヤキモチ焼いてるんだよ。俺が入る隙なんてないのが悔しくてな」
返ってきた答えに思わず脱力する。普段はシャイな洋介なのだが、こと乃笑留のことになると、聞いている小百合が恥ずかしくて赤くなるようなクサイセリフを平気で言うようになった。
小百合は本当に乃笑留を産んで良かったと思った。そして、こんなとろけるような顔で娘を見る夫の姿を自分の目で見ることができたことを感謝せずにはおれなかった。
何も特別なことなんてなくて良い。今の幸せをいつまでも……と小百合は思った。
「えっ…俺そんなこと言ったかな。は~い、乃笑留ちゃんミルクでちゅよ~」
洋介は乃笑留を抱いている小百合に、ミルクをそう言って渡した。
乃笑留を産んだ後、初乳だけは飲ませたものの小百合は投薬を再開しなければならなかったため、それ以降母乳を乃笑留に与えることができなかった。まるでセンサーでも付いているのかと思うほど乃笑留が泣くたびに小百合の乳は張る。その度小百合の胸は痛んだ。
「俺は却って良かったと思ってるよ」
それに対して洋介はそう答えた。
「どうして?」
「ミルクなら俺にでもできる。おっぱいは俺には逆立ちしたって無理だからな。その間完全に大事な恋人を独り占めされるしな」
「恋人って……私より乃笑留の方が大事なの。『俺を一人にしないでくれ』って言ったのは一体誰?」
それを聞いた小百合は、そういって洋介を睨む。だが、
「バカだな、俺はお前にも乃笑留にもどっちもヤキモチ焼いてるんだよ。俺が入る隙なんてないのが悔しくてな」
返ってきた答えに思わず脱力する。普段はシャイな洋介なのだが、こと乃笑留のことになると、聞いている小百合が恥ずかしくて赤くなるようなクサイセリフを平気で言うようになった。
小百合は本当に乃笑留を産んで良かったと思った。そして、こんなとろけるような顔で娘を見る夫の姿を自分の目で見ることができたことを感謝せずにはおれなかった。
何も特別なことなんてなくて良い。今の幸せをいつまでも……と小百合は思った。
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