1 / 30
1
しおりを挟む
僕が今いる世界には、男女の性別とは別にα・β・Ωという三種類の第二の性がある。
3つのうち最も少数であるオメガは男女問わずに妊娠して出産することができる。そのため思春期になる頃から定期的な発情によりフェロモンが出てしまう。フェロモンの香りは人それぞれに違うが甘い匂いや、爽やかな匂いを纏って無自覚にアルファを誘惑して発情させてしまうことから社会的地位も低く弱い立場である。一方のアルファはオメガに次いで少数でオメガに対して急性的に発情を起こすこともあるが、優秀な遺伝子を持つものが多く社会的地位の高い人物が多いと言われている。そして1番人数が多いベータは基本的にフェロモンには左右されずに生活ができる。
アルファとオメガは発情期の性交中にオメガの頸を噛むと「番」という唯一無二の婚姻とは別の特別な関係になることができる。だいたいは同意の元で番になるが、中には突然のヒートが起こった時に居合わせてしまったアルファに頸を噛まれてしまい番契約が成立してしまうヒート事故も存在する。そのためオメガは事故から頸を守るため四六時中、頑丈なチョーカーをしている。僕もその1人だ。
番が成立するとオメガは番だけにしか発情しなくなる。稀に一方的に番に捨てられたり、番破棄をされたオメガは新しい番を持つこともできないため一生、発情時に苦しまないとならない。その精神的苦痛で身も心も壊れて亡くなったり、自殺するオメガも少なくはない。そのため番解消の薬の開発が進められているが、まだできていないのが現状だ。
また出会っただけで本能的に惹かれ合う「運命の番」というのも存在する。でもその確率は低く出会えたら奇跡と言われていて、まるでおとぎ話のように伝えられている。
発情さえなければ人の人生が狂うことも、それに翻弄されて生きることもなかったのに…きっと、いや絶対に僕の人生も違っていただろう。やっぱりオメガになんて生まれなければよかった…母さんも男オメガだったから…だから…
今僕は、乗り換えを3回もして初めてこの駅に降り立った。都会を離れ、ずいぶんと田舎にやってきてしまった。電車の中からの風景は田んぼや畑ばかりで何も変わらなかった。途中の駅から乗客は僕1人だけで、1両しかない電車の中に料金箱があった。バスみたいだなぁーと思ってるうちに目的の駅に着いた。料金を払って電車を降りた。
駅前なのに閑散としていて街灯がチカチカとしていた。いつ消えてしまってもおかしくなさそうだ。駅前には小さいながらも商店街のアーケードが見えた「星空の街、明けの里商店街」昔は人が大勢暮らしていた名残があちこちに見えた。人が住まなくなってからどのくらい経ったのかもわからないほど寂れたシャッター通りには色んな落書きがされていた。
昔、母とTVでこの街の星空を見たことがあった。確か小学生くらいだったと思う。満天の星空を丘の上から撮影していて、手を伸ばせば星が掴めそうなほどの距離に満天の星空が広がっていた。いつかこんな星空を直接、見てみたいね。って笑いながら話していたのを思い出してこの街に行こうと決めた。あれから長い年月がたってしまったが、どうしてこんなに廃れてしまったんだろう?あんなにTVでやっていて話題の街だったのに…結局、誰にも会わなかった商店街を抜けてしばらく歩いていくとそこには川が流れていて赤い橋がかかっていた。橋の欄干に背中を預けて空を見上げた。本当に星が綺麗だなぁー。TVでやっていた丘はどの辺なんだろう?周りは田んぼや畑だらけでかなり遠くの方に灯りがある場所が見えるが遠すぎる。人も全然通らないし、車のタイヤ痕はあるのに車も通らない。これじゃあ、あの丘がどこにあるのか聞けない…あの灯りの所に行くまでに迷子になってしまう。この辺の人はこの駅を使わないのかもしれない。
僕、三浦あさひ19歳、高校を卒業する半年前、母が死んで母の妹夫婦の家に引き取られた僕は、高校を卒業して叔母さんの旦那さんが社長をしている印刷工場で働くことになった。
「あさひくん高校を卒業したらこの工場手伝ってね。叔父さんと叔母さんには子供がいないから」
そう言われて大学に行きたいと言えなかった。母さんの治療費も叔父さん達が払ってくれてるのを知っていたから。
叔母さんも、叔父さんも、とても優しい人で子供がいないせいか、高校中退した子や家出した子など、オメガやベータの子限定だけど働く意欲がある子なら受け入れていた。
元々人付き合いが苦手だった僕は、なかなか周りと馴染めなかった。そのせいか2人の見ていない所で暴力を振るわれていた。見えないところばかりを狙われるため、服で隠れている場所には殴られたりしてできたアザやタバコを押し付けられた火傷の痕があちこちに残ってる。なんとか我慢してきた。居場所がどこにもない僕にはここしかなかったから。でも、もう…タイムリミットが近づいてきてしまった。
3つのうち最も少数であるオメガは男女問わずに妊娠して出産することができる。そのため思春期になる頃から定期的な発情によりフェロモンが出てしまう。フェロモンの香りは人それぞれに違うが甘い匂いや、爽やかな匂いを纏って無自覚にアルファを誘惑して発情させてしまうことから社会的地位も低く弱い立場である。一方のアルファはオメガに次いで少数でオメガに対して急性的に発情を起こすこともあるが、優秀な遺伝子を持つものが多く社会的地位の高い人物が多いと言われている。そして1番人数が多いベータは基本的にフェロモンには左右されずに生活ができる。
アルファとオメガは発情期の性交中にオメガの頸を噛むと「番」という唯一無二の婚姻とは別の特別な関係になることができる。だいたいは同意の元で番になるが、中には突然のヒートが起こった時に居合わせてしまったアルファに頸を噛まれてしまい番契約が成立してしまうヒート事故も存在する。そのためオメガは事故から頸を守るため四六時中、頑丈なチョーカーをしている。僕もその1人だ。
番が成立するとオメガは番だけにしか発情しなくなる。稀に一方的に番に捨てられたり、番破棄をされたオメガは新しい番を持つこともできないため一生、発情時に苦しまないとならない。その精神的苦痛で身も心も壊れて亡くなったり、自殺するオメガも少なくはない。そのため番解消の薬の開発が進められているが、まだできていないのが現状だ。
また出会っただけで本能的に惹かれ合う「運命の番」というのも存在する。でもその確率は低く出会えたら奇跡と言われていて、まるでおとぎ話のように伝えられている。
発情さえなければ人の人生が狂うことも、それに翻弄されて生きることもなかったのに…きっと、いや絶対に僕の人生も違っていただろう。やっぱりオメガになんて生まれなければよかった…母さんも男オメガだったから…だから…
今僕は、乗り換えを3回もして初めてこの駅に降り立った。都会を離れ、ずいぶんと田舎にやってきてしまった。電車の中からの風景は田んぼや畑ばかりで何も変わらなかった。途中の駅から乗客は僕1人だけで、1両しかない電車の中に料金箱があった。バスみたいだなぁーと思ってるうちに目的の駅に着いた。料金を払って電車を降りた。
駅前なのに閑散としていて街灯がチカチカとしていた。いつ消えてしまってもおかしくなさそうだ。駅前には小さいながらも商店街のアーケードが見えた「星空の街、明けの里商店街」昔は人が大勢暮らしていた名残があちこちに見えた。人が住まなくなってからどのくらい経ったのかもわからないほど寂れたシャッター通りには色んな落書きがされていた。
昔、母とTVでこの街の星空を見たことがあった。確か小学生くらいだったと思う。満天の星空を丘の上から撮影していて、手を伸ばせば星が掴めそうなほどの距離に満天の星空が広がっていた。いつかこんな星空を直接、見てみたいね。って笑いながら話していたのを思い出してこの街に行こうと決めた。あれから長い年月がたってしまったが、どうしてこんなに廃れてしまったんだろう?あんなにTVでやっていて話題の街だったのに…結局、誰にも会わなかった商店街を抜けてしばらく歩いていくとそこには川が流れていて赤い橋がかかっていた。橋の欄干に背中を預けて空を見上げた。本当に星が綺麗だなぁー。TVでやっていた丘はどの辺なんだろう?周りは田んぼや畑だらけでかなり遠くの方に灯りがある場所が見えるが遠すぎる。人も全然通らないし、車のタイヤ痕はあるのに車も通らない。これじゃあ、あの丘がどこにあるのか聞けない…あの灯りの所に行くまでに迷子になってしまう。この辺の人はこの駅を使わないのかもしれない。
僕、三浦あさひ19歳、高校を卒業する半年前、母が死んで母の妹夫婦の家に引き取られた僕は、高校を卒業して叔母さんの旦那さんが社長をしている印刷工場で働くことになった。
「あさひくん高校を卒業したらこの工場手伝ってね。叔父さんと叔母さんには子供がいないから」
そう言われて大学に行きたいと言えなかった。母さんの治療費も叔父さん達が払ってくれてるのを知っていたから。
叔母さんも、叔父さんも、とても優しい人で子供がいないせいか、高校中退した子や家出した子など、オメガやベータの子限定だけど働く意欲がある子なら受け入れていた。
元々人付き合いが苦手だった僕は、なかなか周りと馴染めなかった。そのせいか2人の見ていない所で暴力を振るわれていた。見えないところばかりを狙われるため、服で隠れている場所には殴られたりしてできたアザやタバコを押し付けられた火傷の痕があちこちに残ってる。なんとか我慢してきた。居場所がどこにもない僕にはここしかなかったから。でも、もう…タイムリミットが近づいてきてしまった。
184
あなたにおすすめの小説
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます
こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
僕たちの世界は、こんなにも眩しかったんだね
舞々
BL
「お前以外にも番がいるんだ」
Ωである花村蒼汰(はなむらそうた)は、よりにもよって二十歳の誕生日に恋人からそう告げられる。一人になることに強い不安を感じたものの、「αのたった一人の番」になりたいと願う蒼汰は、恋人との別れを決意した。
恋人を失った悲しみから、蒼汰はカーテンを閉め切り、自分の殻へと引き籠ってしまう。そんな彼の前に、ある日突然イケメンのαが押しかけてきた。彼の名前は神木怜音(かみきれお)。
蒼汰と怜音は幼い頃に「お互いが二十歳の誕生日を迎えたら番になろう」と約束をしていたのだった。
そんな怜音に溺愛され、少しずつ失恋から立ち直っていく蒼汰。いつからか、優しくて頼りになる怜音に惹かれていくが、引きこもり生活からはなかなか抜け出せないでいて…。
恋が始まる日
一ノ瀬麻紀
BL
幼い頃から決められていた結婚だから仕方がないけど、夫は僕のことを好きなのだろうか……。
だから僕は夫に「僕のどんな所が好き?」って聞いてみたくなったんだ。
オメガバースです。
アルファ×オメガの歳の差夫夫のお話。
ツイノベで書いたお話を少し直して載せました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる