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目の前の光がなくなった気がして薄目を開けた。すると見慣れない古びた天井が見えた。
「えっ?」と声に出したけど、その声はあまりにも小さかった…
「君、大丈夫?わかるか?」
声のする方を向くと、白衣を着た男性が立っていた。
「母…さん…は?」
僕は掠れた声で聞いた。
「母さん?君一人だったと聞いたよ。お母さんも一緒だったの?」
「母さん…は…樹の下で…待ってるって…」
「うん。わかったよ。そうか待っててくれてるんだね。ちょっと混乱してるかな?もう少しだけ眠ろうね」そう言って頭を撫でてくれた。その温かさで僕はまた目を閉じた。また母さんに会いたい。母さんに…でも僕は…母さんには…会えなかった。
「お前オメガなんだろ?それなのにまだ発情期来ないんだって?発情期が来たらもっと可愛がってやるから楽しみにしてろよ」
「駄目だよコイツは、発情期がきたら、アルファに高く売るって社長がこの前言ってたの聞いたぜ。小柄だし、まぁかわいい顔してるからな。だからそれまでは、俺達の玩具なんだよ」
そう言って僕のことを殴ったり蹴ったりした。
「痛い、やめてー、痛いよー」
「大きい声出すな。社長にバレるだろうが…玩具は玩具らしく人形みたいに黙ってけ」
頭を叩かれ、背中を蹴られた。何回も何回も…
「痛い…ううぅ…」
「大丈夫?大丈夫だから、目開けて…」
頬や肩を叩かれた気がして目を開けた。
「ごめんね。うなされてたから起こしたよ」
僕のベッドの脇にはさっき見た男の人が立っていて、その隣には大柄な男性がいた。
「大丈夫?気分悪くない?」
「…はいっ」
「はじめまして。ここは明けの里病院。医師の北見達也です。君の名前聞いてもいいかな?あと年齢も」
「あの…僕…三浦あさひです。20歳になります」
「あさひくん、よろしくね。20歳になるんだ。かわいい顔してるからまだ未成年かと思ったよ。ごめんね。隣にいる人が、あさひくんを助けた立花幸樹。体はかなり大きいけど怖くはないから安心してね」
「大きいは余計だろ。そんなの昔からだろ。それよりお前、何で薬なんか飲んだんだ!そんなに死にたかったのか、でも迷惑なんだよ死なれたら、残された人のこと考えろよ。わかってんのか?おい!」
大きな声で怒鳴られて僕は身体が震えた。怖い怖いよ助けて…
「ダメだよ。幸樹、震えてるじゃないか。あさひくんごめんね。大丈夫だよ」
北見先生が肩をさすってくれた。
わかってる。迷惑かけてしまった。僕は2人の顔を見るのが辛くて布団を被った。
「あさひくん、落ち着いたら話しようね。まだ夜中だからゆっくり休みな。お前は…とりあえずこっち」
ドアの開け閉めの音が聞こえて2人の足音がどんどん遠く離れていった。僕は迷惑をかけてしまった。誰もいないと思ったのに助けられて…あの薬は効かなかったんだ。あんな高いお金で買ったのに…頑張って働いたお金だったのに…僕は被った布団の中で泣いてしまった。どうして…どうして母さんは迎えに来てくれなかったの?母さんに言われたけど、お花を摘みに行こうとしなければよかった。そしたら母さんとずっとあのまま一緒にいられたのに…僕は…また叔母さんの所に返されるの?ここ病院って言ったよね。発情期が来てないってバレちゃうのかも知れない…早く逃げないと…
僕は点滴の針を腕から引き抜いた。血がじわーっと出てきたが仕方がない。ベッドから降りて足を動かしてみた。大丈夫動ける。バックは…ベッドの隣のテーブルの上にあった。念のため中身を確認したけどちゃんとあった。首に手を当てるとチョーカーも付けてる。ここがどこなのかわからないけど、もしかしたら…あの見えた灯りだったのかも…でも早く出て行かなきゃ。じゃないとまた迷惑かけるから…真っ暗だから外に出ても誰にも会わないだろうと病室のドアを開けた。
「うわっー」さっきの大柄な男の人が壁にもたれて立っていて、こっちを睨みつけるように目を細めて僕を見ていた。
身長160㎝の僕の背よりも20センチ以上は高いだろう。見上げないと目を見れない。
「どこへいく」
低く冷たい声色で聞かれて萎縮してしまう。身体がガタガタと震えてバックを落としそうになってしまったので、慌てて力を込めて必死にバックを握った。
僕が何も答えないからか立花さんからはイライラしている雰囲気がしてきた。この人はアルファなんだろう。急に圧迫してきた空気に呼吸が少し苦しくなってきた。アルファ独特の威圧フェロモンを感じた。逃げないと…そう思って1歩を踏み出そうとしたら
「うわっ」
僕は立花さんに荷物みたいに担がれてベッドの上に戻された。バックを手から取られたその時に点滴を無理矢理外した腕から血がポタポタと滴り落ちてきたのに気づいたんだろう。何も言わずタオルで押さえられて布団を被せられた。
「まだ寝ていろ」
そう言って布団の上からトントンと胸の辺りを叩いてくる。まるで幼子を寝かしつけるように。優しく、優しく…さっきの威圧オーラなんか感じさせずに…
「えっ?」と声に出したけど、その声はあまりにも小さかった…
「君、大丈夫?わかるか?」
声のする方を向くと、白衣を着た男性が立っていた。
「母…さん…は?」
僕は掠れた声で聞いた。
「母さん?君一人だったと聞いたよ。お母さんも一緒だったの?」
「母さん…は…樹の下で…待ってるって…」
「うん。わかったよ。そうか待っててくれてるんだね。ちょっと混乱してるかな?もう少しだけ眠ろうね」そう言って頭を撫でてくれた。その温かさで僕はまた目を閉じた。また母さんに会いたい。母さんに…でも僕は…母さんには…会えなかった。
「お前オメガなんだろ?それなのにまだ発情期来ないんだって?発情期が来たらもっと可愛がってやるから楽しみにしてろよ」
「駄目だよコイツは、発情期がきたら、アルファに高く売るって社長がこの前言ってたの聞いたぜ。小柄だし、まぁかわいい顔してるからな。だからそれまでは、俺達の玩具なんだよ」
そう言って僕のことを殴ったり蹴ったりした。
「痛い、やめてー、痛いよー」
「大きい声出すな。社長にバレるだろうが…玩具は玩具らしく人形みたいに黙ってけ」
頭を叩かれ、背中を蹴られた。何回も何回も…
「痛い…ううぅ…」
「大丈夫?大丈夫だから、目開けて…」
頬や肩を叩かれた気がして目を開けた。
「ごめんね。うなされてたから起こしたよ」
僕のベッドの脇にはさっき見た男の人が立っていて、その隣には大柄な男性がいた。
「大丈夫?気分悪くない?」
「…はいっ」
「はじめまして。ここは明けの里病院。医師の北見達也です。君の名前聞いてもいいかな?あと年齢も」
「あの…僕…三浦あさひです。20歳になります」
「あさひくん、よろしくね。20歳になるんだ。かわいい顔してるからまだ未成年かと思ったよ。ごめんね。隣にいる人が、あさひくんを助けた立花幸樹。体はかなり大きいけど怖くはないから安心してね」
「大きいは余計だろ。そんなの昔からだろ。それよりお前、何で薬なんか飲んだんだ!そんなに死にたかったのか、でも迷惑なんだよ死なれたら、残された人のこと考えろよ。わかってんのか?おい!」
大きな声で怒鳴られて僕は身体が震えた。怖い怖いよ助けて…
「ダメだよ。幸樹、震えてるじゃないか。あさひくんごめんね。大丈夫だよ」
北見先生が肩をさすってくれた。
わかってる。迷惑かけてしまった。僕は2人の顔を見るのが辛くて布団を被った。
「あさひくん、落ち着いたら話しようね。まだ夜中だからゆっくり休みな。お前は…とりあえずこっち」
ドアの開け閉めの音が聞こえて2人の足音がどんどん遠く離れていった。僕は迷惑をかけてしまった。誰もいないと思ったのに助けられて…あの薬は効かなかったんだ。あんな高いお金で買ったのに…頑張って働いたお金だったのに…僕は被った布団の中で泣いてしまった。どうして…どうして母さんは迎えに来てくれなかったの?母さんに言われたけど、お花を摘みに行こうとしなければよかった。そしたら母さんとずっとあのまま一緒にいられたのに…僕は…また叔母さんの所に返されるの?ここ病院って言ったよね。発情期が来てないってバレちゃうのかも知れない…早く逃げないと…
僕は点滴の針を腕から引き抜いた。血がじわーっと出てきたが仕方がない。ベッドから降りて足を動かしてみた。大丈夫動ける。バックは…ベッドの隣のテーブルの上にあった。念のため中身を確認したけどちゃんとあった。首に手を当てるとチョーカーも付けてる。ここがどこなのかわからないけど、もしかしたら…あの見えた灯りだったのかも…でも早く出て行かなきゃ。じゃないとまた迷惑かけるから…真っ暗だから外に出ても誰にも会わないだろうと病室のドアを開けた。
「うわっー」さっきの大柄な男の人が壁にもたれて立っていて、こっちを睨みつけるように目を細めて僕を見ていた。
身長160㎝の僕の背よりも20センチ以上は高いだろう。見上げないと目を見れない。
「どこへいく」
低く冷たい声色で聞かれて萎縮してしまう。身体がガタガタと震えてバックを落としそうになってしまったので、慌てて力を込めて必死にバックを握った。
僕が何も答えないからか立花さんからはイライラしている雰囲気がしてきた。この人はアルファなんだろう。急に圧迫してきた空気に呼吸が少し苦しくなってきた。アルファ独特の威圧フェロモンを感じた。逃げないと…そう思って1歩を踏み出そうとしたら
「うわっ」
僕は立花さんに荷物みたいに担がれてベッドの上に戻された。バックを手から取られたその時に点滴を無理矢理外した腕から血がポタポタと滴り落ちてきたのに気づいたんだろう。何も言わずタオルで押さえられて布団を被せられた。
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