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確かに運命の番はお互いのフェロモンに反応してお互いを求める。
でも…それだけではないはずだ。
あさひくんはアルファに番たくない理由が他にもなにかあるんじゃないだろうか?そんなことを考えて医局に戻ると厄介なやつが、こっちを見て睨んでいた。
「まだなのか?」
「そうだね…かなりまだ辛そうだね」
「あいつは…大丈夫なのか?」
「うん。病気じゃないから…あと数日だね」
「終わったら会えるか?」
「うーん…あさひくんは会えないって…」
「そうか…そうだよな」
「幸樹?」
「俺みたいなアルファじゃな…」
「何言ってるの?」
「そりゃそうだろ。怒鳴っちまって…謝ったけど、それから嫌われてるよ」
「でもそれは…」
「とりあえず今日は家に帰るよ。じゃあ」
そう言って幸樹は出てってしまった。運命の番の繋がりってそんなんじゃないだろ?
「幸樹っ」
思わず俺は引き留めてしまった。
「なんだよ」
「あさひくんが言ってた、運命の番なんてお互いの匂いに反応してるだけだって。幸樹はあさひくんを好きじゃなくて、ただ匂いに反応してるだけだって。そんな風に思われてるだけなんて自分が惨めだって。幸樹は匂いだけで反応してるわけじゃないよね?」
「そんなことを…確かにそれだけじゃないけど…」
「何?」
「俺じゃあダメだろ。アイツを幸せになんてすることもする資格もないんだよ。警察官になって人を救いたかったのに。たった1人の妹も救えやしなかった。俺が地元に帰らないせいで…雪乃は番ができちまった。しかも相手は酷いやつで、すぐに捨てられて、俺が気づかないうちにあの親は雪乃を施設に送った。ヒートが酷いからって、アルファの両親じゃ面倒見れないからって…俺はアルファだからって見舞いにも顔を見ることも許されなかった。番の匂いがない中できっとヒートが辛かったんだろう。薬も全然効かなくて、そのうち心も身体も壊れて、雪乃は自死してしまった…俺がちゃんと守ってやれば、俺がちゃんと帰って来てれば、雪乃は…雪乃は死なずに済んだのに…俺が守ってやれなかったんだよ。あんな親からも…アルファだけが絶対なんて、あんな親じゃなければ雪乃は…あんな施設に入れられることもなかった。そんな俺は誰かを幸せになんかできやしない」
「ゆきちゃんは幸樹のせいじゃない。ゆきちゃん、いつも言ってた。お兄ちゃんは凄いって。お前が警察学校に行った時も、お兄ちゃんが警察官になったら、どんな人からも助けてくれるからって…春樹にも言ってくれてて、ゆきちゃんはお前が警察官で戻って来るのを待ってた。でも色んな不運が重なったんだよ。俺だってゆきちゃんに番ができるなんて思ってもみなかったよ。それに…あの酷いっていう噂の施設に行ったのも知らなくて…知ってたら俺だってなんとかしてあげたかったよ。それがあったからお前は調香師になったんだろ。番を亡くした人の心が壊れないように。あさひくんだってお前が作った香りでヒートが来たんだよ。今まで来なかったって言ってたヒートが…しかもお前と運命の番だってわかってよかったじゃないか。運命の番なら、あさひくんを守るためにどうしたらいいか考えるんじゃないか?それともお前はオメガへの番への庇護力はないのか?」
「あるに決まってんだろ。今まで感じたことがないくらい、あいつのこと守ってやりたいって」
「幸樹、あいつじゃなくて、あさひくんね。番にしたい子なら名前で呼んであげないと。これから信頼取り戻せないよ」
「わかってる。会ったらちゃんと名前で呼ぶよ」
「全く、幸樹はちゃんとした恋愛したことないからねぇー」
「うっせぇわ。とりあえず今日は帰る。アイツを…あさひを迎えられるように準備してくる」
「うん。俺も応援するから頑張れよ」
俺は達也と別れ自分の家に戻るために車に乗った。
あさひに会いたい。あさひを守りたい。どうしようもなく抱きしめたい。あさひにどうやって俺のことをわかってもらいたい。
今までろくな恋愛をしてこなかった俺はどうしていいのかわからなかった。アルファなのに事故番になるのが怖くてオメガを避けてきた。妹が亡くなってからは尚更、ベータやアルファばかりと体だけの快楽を求めて付き合ってたように思う。
あさひとはそんな関係になりたくない。お互いのことをわかって、お互いを好きになって…運命の番じゃない2人だけど達也と春樹のようにお互いを思いやって、愛し合って、そんな風に俺もなりたい。
気づいたら俺はあさひの香りのするボトルを握りしめていた。確かに運命の番だから匂いに惹かれてるのかもしれない。でも俺にはわかるそれだけじゃない。あさひを初めて見た時から、守りたい。大切にしたいと思う気持ちは匂いだけじゃないはずだ。絶対に幸せにしたい。あさひにわかってもらえるまで、何度だって…
「お兄ちゃん」雪乃の声が聞こえたような気がした。俺は…絶対にあさひを諦めない。諦めたくない。あさひが少しでもヒートが楽になるように、もう一度、前回作った香水を見直す作業に取り掛かった。少しでも俺の思いを受け止めて欲しい。少しでもヒートが楽になるように。
でも…それだけではないはずだ。
あさひくんはアルファに番たくない理由が他にもなにかあるんじゃないだろうか?そんなことを考えて医局に戻ると厄介なやつが、こっちを見て睨んでいた。
「まだなのか?」
「そうだね…かなりまだ辛そうだね」
「あいつは…大丈夫なのか?」
「うん。病気じゃないから…あと数日だね」
「終わったら会えるか?」
「うーん…あさひくんは会えないって…」
「そうか…そうだよな」
「幸樹?」
「俺みたいなアルファじゃな…」
「何言ってるの?」
「そりゃそうだろ。怒鳴っちまって…謝ったけど、それから嫌われてるよ」
「でもそれは…」
「とりあえず今日は家に帰るよ。じゃあ」
そう言って幸樹は出てってしまった。運命の番の繋がりってそんなんじゃないだろ?
「幸樹っ」
思わず俺は引き留めてしまった。
「なんだよ」
「あさひくんが言ってた、運命の番なんてお互いの匂いに反応してるだけだって。幸樹はあさひくんを好きじゃなくて、ただ匂いに反応してるだけだって。そんな風に思われてるだけなんて自分が惨めだって。幸樹は匂いだけで反応してるわけじゃないよね?」
「そんなことを…確かにそれだけじゃないけど…」
「何?」
「俺じゃあダメだろ。アイツを幸せになんてすることもする資格もないんだよ。警察官になって人を救いたかったのに。たった1人の妹も救えやしなかった。俺が地元に帰らないせいで…雪乃は番ができちまった。しかも相手は酷いやつで、すぐに捨てられて、俺が気づかないうちにあの親は雪乃を施設に送った。ヒートが酷いからって、アルファの両親じゃ面倒見れないからって…俺はアルファだからって見舞いにも顔を見ることも許されなかった。番の匂いがない中できっとヒートが辛かったんだろう。薬も全然効かなくて、そのうち心も身体も壊れて、雪乃は自死してしまった…俺がちゃんと守ってやれば、俺がちゃんと帰って来てれば、雪乃は…雪乃は死なずに済んだのに…俺が守ってやれなかったんだよ。あんな親からも…アルファだけが絶対なんて、あんな親じゃなければ雪乃は…あんな施設に入れられることもなかった。そんな俺は誰かを幸せになんかできやしない」
「ゆきちゃんは幸樹のせいじゃない。ゆきちゃん、いつも言ってた。お兄ちゃんは凄いって。お前が警察学校に行った時も、お兄ちゃんが警察官になったら、どんな人からも助けてくれるからって…春樹にも言ってくれてて、ゆきちゃんはお前が警察官で戻って来るのを待ってた。でも色んな不運が重なったんだよ。俺だってゆきちゃんに番ができるなんて思ってもみなかったよ。それに…あの酷いっていう噂の施設に行ったのも知らなくて…知ってたら俺だってなんとかしてあげたかったよ。それがあったからお前は調香師になったんだろ。番を亡くした人の心が壊れないように。あさひくんだってお前が作った香りでヒートが来たんだよ。今まで来なかったって言ってたヒートが…しかもお前と運命の番だってわかってよかったじゃないか。運命の番なら、あさひくんを守るためにどうしたらいいか考えるんじゃないか?それともお前はオメガへの番への庇護力はないのか?」
「あるに決まってんだろ。今まで感じたことがないくらい、あいつのこと守ってやりたいって」
「幸樹、あいつじゃなくて、あさひくんね。番にしたい子なら名前で呼んであげないと。これから信頼取り戻せないよ」
「わかってる。会ったらちゃんと名前で呼ぶよ」
「全く、幸樹はちゃんとした恋愛したことないからねぇー」
「うっせぇわ。とりあえず今日は帰る。アイツを…あさひを迎えられるように準備してくる」
「うん。俺も応援するから頑張れよ」
俺は達也と別れ自分の家に戻るために車に乗った。
あさひに会いたい。あさひを守りたい。どうしようもなく抱きしめたい。あさひにどうやって俺のことをわかってもらいたい。
今までろくな恋愛をしてこなかった俺はどうしていいのかわからなかった。アルファなのに事故番になるのが怖くてオメガを避けてきた。妹が亡くなってからは尚更、ベータやアルファばかりと体だけの快楽を求めて付き合ってたように思う。
あさひとはそんな関係になりたくない。お互いのことをわかって、お互いを好きになって…運命の番じゃない2人だけど達也と春樹のようにお互いを思いやって、愛し合って、そんな風に俺もなりたい。
気づいたら俺はあさひの香りのするボトルを握りしめていた。確かに運命の番だから匂いに惹かれてるのかもしれない。でも俺にはわかるそれだけじゃない。あさひを初めて見た時から、守りたい。大切にしたいと思う気持ちは匂いだけじゃないはずだ。絶対に幸せにしたい。あさひにわかってもらえるまで、何度だって…
「お兄ちゃん」雪乃の声が聞こえたような気がした。俺は…絶対にあさひを諦めない。諦めたくない。あさひが少しでもヒートが楽になるように、もう一度、前回作った香水を見直す作業に取り掛かった。少しでも俺の思いを受け止めて欲しい。少しでもヒートが楽になるように。
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