オメガの僕が運命の番と幸せを掴むまで

なの

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「おはよう」

「おぉ…早いな。どうした?」

「これ、あさひに…渡してくれないか?」

「これなんだ?」

「この前渡したあの香水、少し改良したんだ。少しでもヒートが楽になるといいんだけどな」

「わかった。春樹に行って渡してもらうよ。ところで…あさひくん退院したらどうするか悩んでてな」

「あぁ、本当は一緒にいてあげたいけどダメだろ?」

「そうだね…一応、話してみるけど、でも前の家には帰れないと思うよ。向こうが探してるのかは別だけど…」

「でも、他に行く場所ないだろ?」

「そうだな、どうしたらいいんだか…番がいたわけじゃないから施設ってもな…」

「施設はダメだろ。そうだいいところがある」

「いいところ?」

「あぁ…俺のお得意様の佐竹さんの所、佐竹さん手伝いの人がほしいって前に言ってたんだ。それに1人は寂しいって」

「佐竹さんなら安心だけどいいのか?」

「佐竹さんに聞いてみるよ。ちょっと連絡してくる」
そう言って幸樹は出ていった。

佐竹さんは、この街では有名な資産家の男性オメガだ。
彼は結婚したものの番に捨てられてしまい地元に帰ってきた。
薬ではヒートが抑えられなく辛くて大変で幸樹を紹介した。元番の香水を作ってもらってからは、薬を飲めばヒートも少しずつ落ち着き、普通の生活ができるようになってきた。今では図書館で働けるようになるまでに回復した。
そういえば…あさひくん、図書館で働きたかったみたいって春樹が言ってたもんな。

帰って来た当初は佐竹さんの財産目当てで言い寄る人がいたが番に捨てられたオメガは他の男性に触れられると嫌悪感が出てしまう。佐竹さんはもう2度と結婚はできないし、たとえ好きな人ができても触れ合うことはできない。嫌悪感が出ない番解消の薬は開発が進められてるが、まだ世には出ていない。早く出ればいいのだけど…そしたら番に捨てられたオメガもまた…新しい恋愛ができるようになるのに…



「佐竹さん大丈夫だって」

「そうか…よかったな」

「とりあえず、あさひのヒートが落ち着いたら連絡くれ、俺が佐竹さんのところに送ってくから」

「そろそろ落ち着くと思うから連絡する」


それから数日たってあさひくんのヒートは落ち着いた。幸樹が渡した香水にプラスして幸樹が着ていたパーカーも渡したからだ。
「あさひくん、大丈夫そうだね。検査結果もフェロモンの数値も下がってたし、ご飯も普通に食べれるようになったから大丈夫だね」

「じゃあ…退院ですか?」

「そうだね。そこであさひくんに提案です」

「提案?」

「そう。幸樹のお得意さんで佐竹さんてオメガなんだけど図書館で働いてる人のお家に明日から行ってみない?」

「いいんですか?」

「うん。幸樹が話してくれたみたい。明日からそこで住めるから行っておいでね。不安なことがあったら病院来てくれてもいいから」

「ありがとうごさいます」

じゃあ病室移ろうか。荷物は…ってそれ気に入ったの?と先生に言われた。
僕は立花さんの大きいパーカーを着ていた。なぜだかこれを着ていると寂しさが紛れて落ち着くからだ。
先生と前にいた病室に戻ると立花さんが待っていた。

「おかえり」
そう言われて胸がトクンと跳ねた。

「ただいま…です」

「達也から聞いた?明日、昼前に迎えに来るから。じゃあ帰るから、達也また明日な」

「おい。もう帰るのか?」

「これ以上いたらマジでヤバイから…明日は打ってから来る」

「大丈夫か?」

「あぁ…」

なんだかあっという間にいなくなってしまって前まで感じなかった寂しさを感じていた。
すると北見先生が教えてくれた。運命の番の匂いは特に反応してしまうみたいだと、でも特効薬は効き目が強いぶん身体への負担も大きいから、立花さんは今日じゃなく明日のために打ってないから身体が反応する前に帰ったんじゃないかと…

「あさひくんが嫌いなわけじゃないから安心してね」

「別にそんなこと…」

「今日はゆっくりしてね。また明日」
北見先生も帰ってしまったら僕は不安になった。明日から知らないお家で暮らすんだ…僕は大丈夫なんだろうか?それよりもこれ…何も言われなかったけど返した方がいいよね?パーカーを脱いで畳んで枕元に置いた。

それでも初めてのヒートで疲れていた僕は眠気に勝てず、そのまま眠ってしまった。
朝もなんとか起きてご飯を食べたけど、まだなんとなく身体のだるさがあって迎えに来るまで少し時間がありそうなので横になっていた。
 


誰かが髪を撫でてくれている。愛おしそうに優しく…
でも僕は知っている。その手が立花さんだってことを…
僕の運命の番…その運命に委ねてもいいのだろうか?
運命の番は、僕のことをどんなことがあっても捨てたりしないのだろうか…もし、もしも匂いが突然変わったら?運命の番は本当に僕を愛してくれるの?

「どうした?大丈夫か」
知らずに眉間に皺を寄せていたようで、おでこを撫でながら問いかけられた。 

「大丈夫です」

「おはよう。支度ができたら行こうな」

「わざわざすみません」

「いや大丈夫だ」

「あの…これ返します。ありがとうございました」
そう言ってパーカーを渡すと、あぁ…と言って着ていた別のトレーナーを脱いでパーカーを着てしまった。
あーあ着ちゃった。それ欲しかった…とは言えない。すると脱いだトレーナーを僕に渡してきた。

「持ってくか?」

「え…でも…」

いいから。そう言って僕にトレーナーを着せてくれた。大きくて…温かくて、僕の大好きな香りがする。あんなに拒絶していた人なのに、どうしてか前ほどの拒絶感がなくなっているのがわかる。
立花さんの香りがするからだろうか…やはり運命の番だからなのかもしれない。

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