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佐竹さんの家に住まわせてもらうようになって2ヶ月最近ようやく少しは落ち着いた日々を過ごせるようになった。
「あさひくん、人参切ってね」
「これどんな切りかたがいいですか?」
「今日はね、肉じゃがだから乱切りにしてね」
僕は佐竹さんの家で料理を作るようになった。
佐竹さんの家で住むことになったけど、働いてもない僕にはお金がなかった。どこかで働こうと思って聞いたら、それなら掃除と洗濯、料理をしてくれるならお金はいらないと…そういってたのに、いつも手伝ってくれるし、全部を1人ではやってない。
しかも病院代は結局、立花さんが代わりに払ってくれたので、そのお金も返さないといけないから働くと言った僕に立花さんは晩ごはんをここに毎日食べにくるから作ってくれと言われた。
昼過ぎになると立花さんが迎えに来て一緒に買い物する。最初はあまり会話もなかったが、最近はこれが食べたいとリクエストを言ってくれるようになった。でもそのお金は立花さんが払ってくれる。
たまに佐竹さんは働いてる図書館で料理の本を借りてきてくれるので新しい料理にも挑戦している。
僕は1人で外に出たことがない…というか出れなくなってしまった。
それは…佐竹さんの家に来て数日たったころ、スーパーに行こうと1人で歩いている時だった。
「この辺で見かけない子だね」
「こんな、かわいいオメガがいたんだ知らなかった」
「ねぇ…ちょっと遊ぼうよ」
高校生くらいの子、5人から声をかけられて囲まれてしまった。
「僕、忙しいんで…」そのまま逃げようとしたら手首を掴まれた。
「遊ぶだけじゃん。ちょっと来いよ」
「早く歩いてよ」
怖いどうしよう。これからどこに行かされるのか、何かされるのか、また前みたいに殴られたらどうしよう。逃げたくても腕の力が強くて振り払うことができない。腕を引っ張られて歩かされてるうちに恐怖でだんだん震えてきて、自分の呼吸がおかしいのに気づいた。息を吸っても入ってこない。「はぁ…はぁ…」吸ってるのか、吐いてるのかわからなくなり苦しくなった。そう思ったと同時に立花さんの顔が浮かんだ。
「助けて…立花さん」
そのまま僕の記憶は途切れた。気がついたときには病院のベッドに寝かされていた。
「あさひくん大丈夫?」そう声をかけられた。目を真っ赤にして泣いた跡がある春樹さんが僕の顔を見ていた。
たまたま休みだった春樹さんが子供たちと公園に行く途中に腕を引っ張られて歩く僕を見つけた。
僕の顔色もおかしいと思って声をかけようとしたら、僕が急に倒れてしまったので、その子たちは慌てて逃げていなくなったらしい。
春樹さんから連絡をもらった北見先生が病院に連れてきてくれたそうだ。
「今、幸樹さんも来るから、もう心配しなくていいよ」
「ご迷惑おかけしました」
そんなことがあってから、僕は外に出ると不安感や恐怖感が襲ってきて動悸やめまい、過呼吸を起こすようになってしまった。夜も急に怖くなったり、夜中にうなされたりして眠れなくなって、食欲もなく佐竹さんや立花さんに最初に言われた家事もご飯作りもできなくなってしまった。家から出るのが怖くて出れなくなってしまった僕は立花さんに言われて、北見先生の診察を受けに行くことになったのだが、家から怖がる僕の頭の上に立花さんは自分の着ていたパーカーを被せてくれた。
診断は「PTSD」あの男の子達の強引さが、過去に暴力を受けた時と重なってトラウマ体験を思い出して過呼吸になったりするらしい。
とりあえず薬での治療をすることから始まった。
それから、たまには外に出たほうがいいと立花さんが車で迎えにきて一緒にスーパーに行くようになった。最初は車に乗ってスーパーに行くだけで誰かに連れて行かれたらと急に考えてしまって過呼吸になったり、めまいを起こしたりしていた。今では少しずつ改善されてきているが、それでも車から降りたら立花さんと手をつながないと歩けなくなってしまった。
「立花さん、いつもすみません」
「なんだ?急に」
「僕がもっとしっかりしていたら、立花さんに迷惑かけないのに…仕事も忙しのに迎えにきてくれて」
「俺はあさひに会えるからそれだけで嬉しいから気にするな。お互いのこともっと、分かり合えるだろ?あと敬語はいいかげんやめてくれ。なんか距離があるような気がするから」
「わかりま…わかった」
「うん。それでいい」
確かに立花さんの最初に受けた印象よりも今は違う感情がある。会えると嬉しい気持ちになるし、立花さんなら守ってくれると思えるようになった。
佐竹さんにお願いして、運命の番についての本も借りてもらって読んだ。確かに匂いで惹かれるが、それだけではない遺伝子レベルで非常に相性が良くて運命的に惹かれあう。出会った瞬間に本能的にお互いを運命の番と認識する…と僕はわからなかったけど。
この前、病院に行ったときに春樹さんに会って本で読んだ話をしたら、それはもしかしたら、あの飲んでいた薬の影響なのかも知れないと教えてくれた。
でもヒートの時には立花さんの匂いに反応したんだから出会った瞬間ではないけど、わかったんだと思うよ…と。
確かに立花さんと手を繋いでいても嫌悪感は全く感じない。むしろずっと繋いでいたいと思っている自分がいる。このまま心穏やかに
過ごしたい。
「あさひくん、人参切ってね」
「これどんな切りかたがいいですか?」
「今日はね、肉じゃがだから乱切りにしてね」
僕は佐竹さんの家で料理を作るようになった。
佐竹さんの家で住むことになったけど、働いてもない僕にはお金がなかった。どこかで働こうと思って聞いたら、それなら掃除と洗濯、料理をしてくれるならお金はいらないと…そういってたのに、いつも手伝ってくれるし、全部を1人ではやってない。
しかも病院代は結局、立花さんが代わりに払ってくれたので、そのお金も返さないといけないから働くと言った僕に立花さんは晩ごはんをここに毎日食べにくるから作ってくれと言われた。
昼過ぎになると立花さんが迎えに来て一緒に買い物する。最初はあまり会話もなかったが、最近はこれが食べたいとリクエストを言ってくれるようになった。でもそのお金は立花さんが払ってくれる。
たまに佐竹さんは働いてる図書館で料理の本を借りてきてくれるので新しい料理にも挑戦している。
僕は1人で外に出たことがない…というか出れなくなってしまった。
それは…佐竹さんの家に来て数日たったころ、スーパーに行こうと1人で歩いている時だった。
「この辺で見かけない子だね」
「こんな、かわいいオメガがいたんだ知らなかった」
「ねぇ…ちょっと遊ぼうよ」
高校生くらいの子、5人から声をかけられて囲まれてしまった。
「僕、忙しいんで…」そのまま逃げようとしたら手首を掴まれた。
「遊ぶだけじゃん。ちょっと来いよ」
「早く歩いてよ」
怖いどうしよう。これからどこに行かされるのか、何かされるのか、また前みたいに殴られたらどうしよう。逃げたくても腕の力が強くて振り払うことができない。腕を引っ張られて歩かされてるうちに恐怖でだんだん震えてきて、自分の呼吸がおかしいのに気づいた。息を吸っても入ってこない。「はぁ…はぁ…」吸ってるのか、吐いてるのかわからなくなり苦しくなった。そう思ったと同時に立花さんの顔が浮かんだ。
「助けて…立花さん」
そのまま僕の記憶は途切れた。気がついたときには病院のベッドに寝かされていた。
「あさひくん大丈夫?」そう声をかけられた。目を真っ赤にして泣いた跡がある春樹さんが僕の顔を見ていた。
たまたま休みだった春樹さんが子供たちと公園に行く途中に腕を引っ張られて歩く僕を見つけた。
僕の顔色もおかしいと思って声をかけようとしたら、僕が急に倒れてしまったので、その子たちは慌てて逃げていなくなったらしい。
春樹さんから連絡をもらった北見先生が病院に連れてきてくれたそうだ。
「今、幸樹さんも来るから、もう心配しなくていいよ」
「ご迷惑おかけしました」
そんなことがあってから、僕は外に出ると不安感や恐怖感が襲ってきて動悸やめまい、過呼吸を起こすようになってしまった。夜も急に怖くなったり、夜中にうなされたりして眠れなくなって、食欲もなく佐竹さんや立花さんに最初に言われた家事もご飯作りもできなくなってしまった。家から出るのが怖くて出れなくなってしまった僕は立花さんに言われて、北見先生の診察を受けに行くことになったのだが、家から怖がる僕の頭の上に立花さんは自分の着ていたパーカーを被せてくれた。
診断は「PTSD」あの男の子達の強引さが、過去に暴力を受けた時と重なってトラウマ体験を思い出して過呼吸になったりするらしい。
とりあえず薬での治療をすることから始まった。
それから、たまには外に出たほうがいいと立花さんが車で迎えにきて一緒にスーパーに行くようになった。最初は車に乗ってスーパーに行くだけで誰かに連れて行かれたらと急に考えてしまって過呼吸になったり、めまいを起こしたりしていた。今では少しずつ改善されてきているが、それでも車から降りたら立花さんと手をつながないと歩けなくなってしまった。
「立花さん、いつもすみません」
「なんだ?急に」
「僕がもっとしっかりしていたら、立花さんに迷惑かけないのに…仕事も忙しのに迎えにきてくれて」
「俺はあさひに会えるからそれだけで嬉しいから気にするな。お互いのこともっと、分かり合えるだろ?あと敬語はいいかげんやめてくれ。なんか距離があるような気がするから」
「わかりま…わかった」
「うん。それでいい」
確かに立花さんの最初に受けた印象よりも今は違う感情がある。会えると嬉しい気持ちになるし、立花さんなら守ってくれると思えるようになった。
佐竹さんにお願いして、運命の番についての本も借りてもらって読んだ。確かに匂いで惹かれるが、それだけではない遺伝子レベルで非常に相性が良くて運命的に惹かれあう。出会った瞬間に本能的にお互いを運命の番と認識する…と僕はわからなかったけど。
この前、病院に行ったときに春樹さんに会って本で読んだ話をしたら、それはもしかしたら、あの飲んでいた薬の影響なのかも知れないと教えてくれた。
でもヒートの時には立花さんの匂いに反応したんだから出会った瞬間ではないけど、わかったんだと思うよ…と。
確かに立花さんと手を繋いでいても嫌悪感は全く感じない。むしろずっと繋いでいたいと思っている自分がいる。このまま心穏やかに
過ごしたい。
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