オメガの僕が運命の番と幸せを掴むまで

なの

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僕は立花さんの腕の中でそのまま眠ってしまいそうになった。この腕の中はなんでこんなに心地いいのだろう?そう思っていたら

「あさひ、眠いだろ?寝ていいよ」
そう言って頭を撫でてもらうと僕はそのまま眠ってしまった。もともと体力のない僕は、身体の疲れだけじゃなく、心の疲れが溜まるとすぐに眠ってしまう。
眠れないよりも眠れたほうがいいんだよ。そのほうが心も身体も元気になるんだから…そう北見先生にも言われたような気がする。

どのくらい寝たんだろう。もう部屋は暗くなっていて、立花さんの姿が見えなかった。なんとなくお腹も空いたような気がして誰かいるかな?と部屋を出ようとドアを開けると「うわぁー」立花さんがトレーを持って部屋の前にいた。

「どこに行くんだ?」

「あの…お腹空いちゃって…」
その言葉を言い終わる前に僕のお腹が鳴った。

「腹減ったか。ちょうどよかった。晩めし持ってきた」
立花さんが持ってるトレーにはお味噌汁とご飯、魚の煮付け、ほうれん草の胡麻和え、大根の煮物が乗っていた。
「あさひ食べれそうか?」

「はい。お腹が空きました」

「じゃあ、いっぱい食べないとな」

「あの…立花さんも帰ってご飯食べてください」 

「いや。あさひと一緒にいたいからここにいるぞ」

「でも寝る場所…」

「あさひを抱っこして寝れればいいだろ?」

「そんな…」

「それとも嫌なのか?俺がいると…」

「そんなことないです。でも…僕がいると立花さんゆっくり寝れないと思うし」

「大丈夫だ。それより早く食べろ。さっきから腹の虫が鳴いてるぞ」
そうだった…お腹が空いて、僕のお腹はグーッとなっていた。恥ずかしくて顔が真っ赤になってると思うのに、立花さんは気にする素振りも見せずに、僕が食べるのを見ていた。

「見られると恥ずかしいんですけど…」

「そうか?悪い。かわいいなって見てしまった。俺もなんか食べてくるから、食べ終わったら、横になってろよ」

「わかりました」
そう言われたものの、昼間に眠ってしまったからか、全然眠たくない。横になっても眠れなくて、誰もいなくてつまらなくて、僕は窓から外を見た。ふと空を見上げると星がキラキラ光っていた。最初に見た星空よりも星の数は少ないけど、やっぱり都会よりも星の数は多くて…綺麗だな~と眺めてた。
ふと思い出した。母さんとの思い出を…ここに来た目的も、あの丘から降り注ぐ星を見たいと思ったんだ…どこにあるんだろう?立花さんなら知ってるかな?

「星、好きなのか?」いつの間にか戻ってきた立花さんに声をかけられた。

「あの…僕が小学生くらいの頃、TVでこの街の星空を見たことがあるんです。満点の星空を丘の上から撮影してる景色で、手を伸ばせば星を掴めそうで、母さんといつか行こうと話してて…それで、この街に来たんです。でも、その丘がどこにあるのか、分からなくて…誰かに聞こうとしても、誰もいなくて…立花さんは、どこだかわかりますか?僕、行ってみたいんです」

「星降る丘公園のことか?一応、この町では観光スポットになっているが、ここからだと車で15分くらいで行ける場所だが」

「行ってみたいです。連れてってくれませんか?」

「今からか?」

「ダメですか?」

「体調のこともあるし、また何かあっても困るけど、眠くないのか?」

「はい。昼間寝てしまったからか、全然、眠くなくて…」

「わかった。ちょっと達也に連絡してみよう。外は少し寒いからな」

「わかりました」
北見先生が来てくれて、診察をしてくれたが、特に異常も見つからず、特別に行ってもいいと言ってくれた」

「あさひ、体調とかいつもと違うと思ったら、すぐに俺に言うこと約束な」

「ありがとう。立花さん」
僕は、やっと、あの丘に行けるんだ。ワクワク、ドキドキが止まらなかった。

母さん…僕、これから、あの丘に行くよ。母さんと一緒には見られなかったけど…あの満点の星空を間近で見ることができるんだ。立花さんに行ってことがあるかと聞いたら、一度だけ見に行ったと返ってきた。そうか…行ったことがあるんだ…誰とかな?と少し落ち込んでいたら、北見先生と春樹さんと妹さんと4人で一緒に行ったんだと教えてくれた。北見先生と立花さんが東京に行く前日だったそうだ。冬の空は空気が澄んでて、寒いけど星が綺麗に見えたよ。と…今日は、どんな星空が見えるんだろう。僕は立花さんの車の中から着くまで、外をずっと眺めていた。

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