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「……ミア・ピュアリー様。貴女を本日を以て、王宮から『永久追放』いたします。あ、退職金はありません。むしろ、これまでの食費と修繕費の未払い分を考えると、貴女は一生かけて我が社の関連施設で働く義務がありますわ」
王宮の正門前。私は、荷物(といっても、彼女が隠し持っていた宝石をすべて没収した後の空のカバン一つ)を持つミア様に、冷酷な宣告を下しました。
「ひ、ひどいわ! 私を追い出すなんて! カイル様、助けて! 助けてくださいませ!」
ミア様が、背後で必死に書類仕事(強制労働)をさせられているカイル王子に向かって叫びました。
「……ミア、すまない。今の私は、ヒーナに許可をもらわないとトイレにも行けない身なんだ……。頑張って、元気に雑巾を掛けてくれ……」
カイル王子は、虚空を見つめながら力なくペンを動かし続けています。
「絶望しましたわ! こうなったら、タダでは出て行きませんからね! 貴女たちが一番大切にしている、この国の『金印』……これさえなければ、どんな書類も無効ですわよね!?」
ミア様が、懐から王国の最高権威の象徴である『金印』を取り出しました。
「あら、ミア様。それを持ち出すのは立派な窃盗罪ですわよ? 今すぐ返しなさいな」
「返しませんわ! こうしてやるんですから!」
ミア様は目を剥くと、なんとその巨大な金印を、口の中に押し込みました。
「……ゴクンッ」
……沈黙。
「……え、飲み込んだの?」
「……飲み込みましたね。ヒーナ様、あの金印、純金製でかなりの重量があるはずですが。彼女の食道、鋼鉄製なのでしょうか」
ゼクスが、信じられないものを見る目でミア様を観察しました。
「お、おほほほ! やりましたわ! これで金印は私の体の中! 取り出したければ、私を殺すか、それとも……出てくるまで、私を豪華なお部屋で手厚く看護するしかありませんわね!」
ミア様は、勝利を確信したような歪な笑顔を浮かべました。
私は、算盤を取り出し、高速でパチパチと弾き始めました。
「……ふむ。金印の資産価値、金貨千枚。対して、ミア様を『出てくるまで』拘束し、食費と医療費を負担するコスト……。さらに、金印が機能しないことによる事務停滞の損失……」
「ヒーナ様、いかがなさいますか? 解剖して取り出しますか? それなら執刀医の手配が必要ですが」
「いいえゼクス。もっと安上がりで、効率的な方法があるわ。……衛兵! 彼女を今すぐ『超高濃度・魔導下剤室』へ連れて行きなさい!」
「げ、げざい……!?」
ミア様の顔が、一瞬にして青ざめました。
「ええ。最新の魔導薬学を駆使した、排出効率一五〇〇パーセントを誇る魔法薬よ。これを使えば、三十分以内にその金印は物理的に『出力』されるはずだわ。あ、ついでに腸内洗浄もできて、お肌もツルツルになるわよ? 副作用として、丸一日トイレから出られなくなるけれど」
「いやあああ! そんなの乙女のプライドが許しませんわぁぁぁ!」
「プライドなんて、金印の資産価値の前にはゴミ同然ですわ。……さあ、連れて行きなさい! 一分一秒でも早く、私の……いえ、国の資産を回収するのよ!」
三十分後。
王宮の裏手にある特別室から、凄まじい絶叫と轟音が響き渡りました。
「……回収完了しました、ヒーナ様。金印は洗浄と消毒を三回繰り返し、現在、元の輝きを取り戻しております」
ゼクスが、白い手袋をはめてピカピカに磨かれた金印を持ってきました。
「お疲れ様、ゼクス。……さて、ミア様は?」
「魂が抜けたような顔で、便器に抱きついていらっしゃいます。『もう、ヒロインなんて辞める……』と呟いておられました」
「そう。なら、予定通り『最果ての炭鉱・清掃部門』へ強制送還してちょうだい。あ、片道切符代は彼女の今後の給料から前借り形式で差し引いておいてね」
こうして、王宮を騒がせた「自称ヒロイン」は、一粒の金印と共に、その輝かしい未来(?)を物理的に放出し、消えていきました。
「……ふう。一件落着ね。ゼクス、金印の紛失リスクに備えて、次からは『GPS魔法』を付与しておいてちょうだい」
「承知しました。……ところでヒーナ様。カイル王子が、今の騒動のショックで『数字を見るだけでお腹が痛い』と泣いておりますが」
「放置なさい。それは彼の『甘え』という名のコストよ。……さあ、仕事に戻るわよ。金印が戻ったんだから、溜まっていた契約書に一万枚くらい判を捺さなきゃいけないんだから!」
私は、取り戻したばかりの重厚な金印を握りしめ、不敵に笑いました。
愛や魔法では国は救えませんが、徹底した「排出管理」と「資産回収」があれば、王国は永遠に不滅なのです。
王宮の正門前。私は、荷物(といっても、彼女が隠し持っていた宝石をすべて没収した後の空のカバン一つ)を持つミア様に、冷酷な宣告を下しました。
「ひ、ひどいわ! 私を追い出すなんて! カイル様、助けて! 助けてくださいませ!」
ミア様が、背後で必死に書類仕事(強制労働)をさせられているカイル王子に向かって叫びました。
「……ミア、すまない。今の私は、ヒーナに許可をもらわないとトイレにも行けない身なんだ……。頑張って、元気に雑巾を掛けてくれ……」
カイル王子は、虚空を見つめながら力なくペンを動かし続けています。
「絶望しましたわ! こうなったら、タダでは出て行きませんからね! 貴女たちが一番大切にしている、この国の『金印』……これさえなければ、どんな書類も無効ですわよね!?」
ミア様が、懐から王国の最高権威の象徴である『金印』を取り出しました。
「あら、ミア様。それを持ち出すのは立派な窃盗罪ですわよ? 今すぐ返しなさいな」
「返しませんわ! こうしてやるんですから!」
ミア様は目を剥くと、なんとその巨大な金印を、口の中に押し込みました。
「……ゴクンッ」
……沈黙。
「……え、飲み込んだの?」
「……飲み込みましたね。ヒーナ様、あの金印、純金製でかなりの重量があるはずですが。彼女の食道、鋼鉄製なのでしょうか」
ゼクスが、信じられないものを見る目でミア様を観察しました。
「お、おほほほ! やりましたわ! これで金印は私の体の中! 取り出したければ、私を殺すか、それとも……出てくるまで、私を豪華なお部屋で手厚く看護するしかありませんわね!」
ミア様は、勝利を確信したような歪な笑顔を浮かべました。
私は、算盤を取り出し、高速でパチパチと弾き始めました。
「……ふむ。金印の資産価値、金貨千枚。対して、ミア様を『出てくるまで』拘束し、食費と医療費を負担するコスト……。さらに、金印が機能しないことによる事務停滞の損失……」
「ヒーナ様、いかがなさいますか? 解剖して取り出しますか? それなら執刀医の手配が必要ですが」
「いいえゼクス。もっと安上がりで、効率的な方法があるわ。……衛兵! 彼女を今すぐ『超高濃度・魔導下剤室』へ連れて行きなさい!」
「げ、げざい……!?」
ミア様の顔が、一瞬にして青ざめました。
「ええ。最新の魔導薬学を駆使した、排出効率一五〇〇パーセントを誇る魔法薬よ。これを使えば、三十分以内にその金印は物理的に『出力』されるはずだわ。あ、ついでに腸内洗浄もできて、お肌もツルツルになるわよ? 副作用として、丸一日トイレから出られなくなるけれど」
「いやあああ! そんなの乙女のプライドが許しませんわぁぁぁ!」
「プライドなんて、金印の資産価値の前にはゴミ同然ですわ。……さあ、連れて行きなさい! 一分一秒でも早く、私の……いえ、国の資産を回収するのよ!」
三十分後。
王宮の裏手にある特別室から、凄まじい絶叫と轟音が響き渡りました。
「……回収完了しました、ヒーナ様。金印は洗浄と消毒を三回繰り返し、現在、元の輝きを取り戻しております」
ゼクスが、白い手袋をはめてピカピカに磨かれた金印を持ってきました。
「お疲れ様、ゼクス。……さて、ミア様は?」
「魂が抜けたような顔で、便器に抱きついていらっしゃいます。『もう、ヒロインなんて辞める……』と呟いておられました」
「そう。なら、予定通り『最果ての炭鉱・清掃部門』へ強制送還してちょうだい。あ、片道切符代は彼女の今後の給料から前借り形式で差し引いておいてね」
こうして、王宮を騒がせた「自称ヒロイン」は、一粒の金印と共に、その輝かしい未来(?)を物理的に放出し、消えていきました。
「……ふう。一件落着ね。ゼクス、金印の紛失リスクに備えて、次からは『GPS魔法』を付与しておいてちょうだい」
「承知しました。……ところでヒーナ様。カイル王子が、今の騒動のショックで『数字を見るだけでお腹が痛い』と泣いておりますが」
「放置なさい。それは彼の『甘え』という名のコストよ。……さあ、仕事に戻るわよ。金印が戻ったんだから、溜まっていた契約書に一万枚くらい判を捺さなきゃいけないんだから!」
私は、取り戻したばかりの重厚な金印を握りしめ、不敵に笑いました。
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