冷徹弁護士は甘い罠を張る

邉 紗

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告白?どちらかというと自白です 

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文の甘い声は、何度も七生の心に火をつけた。

初心な体に一から教え込んでゆく喜び。
肌を重ねる心地よさ。そんなものを知ってしまったら、一度で終われる筈がない。

七生は手加減を忘れ、朝まで文を抱いた。
朝方の空気は冷えるというのに、布団の中は情事の熱が籠もる。

文はまだ、隣で熟睡している。七生はあくびをひとつすると、起こさないようにその場を離れた。
リビングに行きエアコンをつけておく。

家事は分担だ。
仕事の関係で文に配分が偏ることが多いが、七生が先に起きた時は朝食を作ることにしている。

昨夜の運動のせいか、やけにお腹が空いていた。和食の気分だったので味噌汁とお浸しを作り、あとは残り物のおかずを温めた。

仕度が終わると、リビングのテーブルに置きっぱなしだった電話が鳴る。
発信者に眉を顰め、面倒くさいと思いながらも通話ボタンを押した。

「何? 文との時間をぶち壊されて最高に機嫌が悪いから手短にしてくれる?」

『第一声がそれ?』

電話の主は吾妻はだった。
あちらの声も少し苛立っている。

不快なのは七生も同じだった。謝りもせずに言いたい事を言う。

「まさか休日の朝のプライベート携帯に、仕事の話じゃないだろうね」

『そのまさかだよ。一応言い訳しておくとね、昨夕から仕事用の番号には何度もかけてるわけ。メールは両方の携帯に入れてある。今まで電話をかけなかったことを褒めて欲しいくらいだね』

夕方ならすでに勤務を終えているのだから、仕事用の電話に出ないのは責められる事ではない。

仕事用のスマートフォンを操作すると、一時間おきに着信が入っていた。その件数から面倒な案件が舞い込んだのだと想像できた。

吾妻も通常なら今日は休みだ。
動かなくてはならないトラブルのようで、七生は諦めて大きな溜め息をついた。

余韻にひたるくらいの時間は欲しい。

なにせ昨夜は、やっと文との距離を縮められたのだから。

『大山商事の息子が暴走してる。資材の輸入で嫌がらせしてきやがった』

「あいつが?」

刑事告訴をしないという条件を武器に、商談を有利にさせた。
しかし無理は言っていない。
文が商談材料になるなんて到底許せるものではなかったが、大山の真摯な謝罪を袖にするわけにはいかない。
私怨を堪え、ビジネスとして恩を売るべき場面であった。

賢の過去の悪行もすべて掘り起こしレポートのようにまとめ書類を突きつけた。

二度と悪さをしない。文に近づかない。FUYOUとの取引には関わらないとの条件が記され、七生自信も、大山商事からの依頼は二度と受けないと告げてある。

破ったら即刑事告訴という念書も書かせ、金庫に保管をした。
それがどうしたことか。
大山がプライドを捨てて床に頭を擦り付けたことを、早々と不意にしてしまったわけだ。

「具体的には?」

『二重契約だな。FUYOUの仕入れ分を他会社に売りつけてる。このままのペースだと原料不足で工場をストップさせなくちゃだ』

「……それはどこの・・・会社だ?」

嫌な予感がした。
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